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1:桎梏の闇魔導士ギルケヴォール

こっちに来てから、自問自答が、癖なんだ。

最初はあれだ、ほかの転生者に会ったときに、自己紹介をスムーズにしたいっていう。

いきなりゼロからしゃべるのって、テンパるんだよ、俺の場合。


――何者だ?

俺の名はギルケヴォール。

もちろん、本当の名前じゃねえ。

真名は、語れねえぜ。

いや、マジで。

この世界で本当の名前を知られると、相当ヤバいことになる。

自分自身、闇魔術系を究めていくにつれ、その危機感は相当なものよ。

つっても、俺の真名を知ってる人間なんて、ここには一人もいないんだけどな。


――その不死の身体は。

宿ってるのは、人間の魂だよ。

つーか、ニッポンのアラサーリーマンだった。

ま、ここに来る一年前には失職してリーマンじゃなくなってたな。

その一年は……ソシャゲ廃人か。

自称するもんでもないけど。


――ソシャゲ

Puzzling&Dazzling、パズリング&ダズリングって昔からあるゲームなんだよ。

精霊召喚してパーティ組んで、パズル解いてスキルを発動する。

インフレしたりしょっちゅうバランスおかしくなったりしてたけど、やっぱり飽きなくてね。

ひたすらに、周回して、周回して。

周回してれば、なんだかんだ強くなっていくんだよ、あのゲーム。

その日、どれだけ回ったか忘れたけど、ぶっ倒れるくらい長いことやってたんだろうな。

気が付いたらこの世界に来てて。

ひょっとしたら、死んだのかもな。


――この世界

最初は意味が分からんかった、ホント。

パズ&ダズみたいな精霊が見えてからは、戦えるようになったんだ。

それからは、負けてないね。

かなわない相手のことは、分かってるし。

精霊の育成とかスキルの発動とか、こっちの連中は全然理解できてないし。


――強かった?

戦って、勝って、戦って、勝って、そうこうしてたらまわりじゅう敵だらけになった。

なんでだよ!って、そんときは思ってたけど、今は何となくわかる。

街でも国でも、ルールってのは最後は力なんだ。

ルールの外に力があっちゃ、都合が悪いんだろ。

周りで人だのなんだの死に過ぎて、嫌になったさ。


――今は?

不死の身体になってからは、だいぶん落ち着いたかな。

正直、人間が欲しがるようなものは何も要らなくなったからね。

山奥で暮らしてても、特に不便じゃないし。

人間と関わる必要もなくなったし。

あー、そこはちょっと言い過ぎたかな。

バーミィがいるから、意識がまだ人間っぽくいられてる。

いなかったら、とっくに別のものになってるだろね。


――バーミィ。

こいつ、おかしな奴でさ。

傷だらけで山ン中に捨てられてたのを拾ったんだけど。

俺も面倒だから、お前は俺に作られた肉人形だって言ってたら、記憶もなくって受け容れちまって。

んでも、普通の人間じゃないのは間違いないぜ。

精霊と会話できるんだもの。

ゲームのルールも完全に超えてる。

チートだよ、マジで。

プレイヤーみたいに動き回るNPCなんて、パズ&ダズにはいなかったんだよ。


――隷属?

してないって、別に。

あいつの真名だって知らないし。

どっか行きたきゃ、いつでも行ける。


――魂?

要らねーw

何に使うんだよ。

使い方っつうか取り出し方も知らんし。

バーミィの奴がいっつも言ってるんだけどな、何するつもりなんだろうな。


――旅路とは。

バーミィには言うなよ?

イベだよ。期間限定イベント。

こっちでも、あるんだよ。

イベントクエストに参加すると、さらに違う世界に行く。

敵も味方も、こっちでうろついてる奴らとは、別次元のエグイ連中がゴロゴロしてる。

報酬も、こっちじゃ手に入らないものが色々あってだな。


――奈落?

言っとくが、楽なイベなんて無いぞ。

敵をぶっ倒すなんてな、入り口も入り口。

レアドロップなんて期待する方がおかしい。

その場で得た精霊は、その世界でしか育成できないことも多い。

どうするかって?

周回するんだよ。

周回。

周回。

周回。


まだ、誰にも使えたことないFAQだな。




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