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俺たちは落ちこぼれ、でも二人でなら最高の魔法使い  作者: 広河恵/ぴろめぐ
第一章第二節:クラスメイトとパートナー。
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お嬢様と親睦会。

こちらはハルネ視点でお話が進んでいきます。


颯が呼ばれていたころ、その他のクラスメイトたちはこんな会をしていました。

「ん〜、美味しい〜!」


各学年のA組の学生寮。そこにある食堂で、クラス全員による昼食を兼ねて親睦会が開かれた。


ほとんどの面々が昼食を終えて、メニューの中にあったふわふわなスポンジ生地と甘さ控えめな生クリームが絶品のケーキを食す。


「ハルネさんも甘いものがお好きなんですね」


「えぇ、エルと二人で別々にケーキを購入して、食べ比べたりすることもあるの」


「そうなんですね!」


「ハルネさんはお嬢様なので、そういうことはあまりなさらないと思っていました」


「そうかしら? そんなことはないわ、普段から色々な場所に行くもの。……エルにはいつも迷惑をかけてしまっているけれど」


「なにかおっしゃいました?」


「ううん、なんでもないわ。それと、“さん”付けだったり敬語はいらないわ。気軽に“ハルネ”って呼んで頂戴!」


同じ学校、同じ学年、同じクラスなのだからそんな遠慮は不要。


「そ、そんな……」

「お、恐れ多いです……」

「む、無理です!」


しかし、それはみんなに断られてしまう。別に遠慮しなくてもいいのにと思う。ただ日本人は距離の詰め方がかなりゆっくりだと聞いたこともある。それならばこちらから強要するわけにはいかない。


「そういえば、ハルネさんってお嬢様なんですよね? どんな感じの家に住んでたんですか?」


それでも興味を持って話しかけてくれるのはとても嬉しいことであった。特に魔法・魔術について知らなかった人たちは私のことを知っているわけがないので、その分積極的に質問してくれている。


「そうね……、なんて説明すればいいかしら……?」


少し頭を悩ませる。日本について勉強した時、私たちの家のような敷地の広い家は少ないと学んだ。だからこそ、彼らには比較対象がないために、どう答えるのが一番全員に想像してもらえるか、答えが難しい。


「お付きの騎士さんがいるのには驚いたけど、あの人とはいつぐらいから一緒にいるんですか?」


「エル? 本当に子供の頃からずっと一緒にいたわ。私にとってはかけがえのない親友よ。でも、エルはこれをいうと『私が親友だなんて恐れ多いです』っていつも言うのだけど……」


「先ほどもそうでしたが、本当に仲がよろしいんですね」


「そうね、小さい頃からずっと一緒にいるから。ずっと仲良しよ」


「でもエルさんって、ハルネさんの専属騎士なんですよね。一体どういうご関係なんですか?」


お目付役がいる人なんてそうそう見ることはない。だからこそ、クラスメイトたちの興味は尽きないのだと思う。


「私としてはお友達のつもりだけど、ちゃんとしたことを話すと、エルの家は先祖代々私の家に仕えてくれているの。今もそれは変わらないわ。だからエルの言っていた通り、公にはエルは私の家に使える一家の、今は私専属の近衛騎士なの」


「「「「へぇ〜〜〜〜」」」」


その回答で全員が納得する。


「でもエルさん、間違いなくそれ以上にハルネさんのこと考えてるよね……」

「あれは本気の目をしてたね」

「むしろああいう方がいいって思うけど」

「いや、それはどうかと思う……」


「???」


男子が塊になって小声で話している。少し距離が離れた私にはその声が聞こえることはなく、首を傾げるのみ。


「男子って身もふたもないわね……」

「ほんとよね……」

「私はむしろ、他の変な男がつくよりかはいいって思うけどね」


女子も男子たちの言葉に納得している。この場で唯一私だけが今の話題から取り残されていた。


「そういえばエルさん、先生に話があるって行っちゃいましたね。良かったんですか?」


話がエルのことになって、彼女の行動のことについてが話題が上がる。


「いつも一緒にいなければいけないって訳ではないもの。エルにもやりたいことがあるのなら、もちろんそれを尊重するわ。たまに私から頼んで出かけてもらうこともあるの」


「へぇ〜。でも話ってなんだろう?」


「もしかしたらパートナーの件じゃないかな。教室に入ってきた時、もの凄く残念がっていたから……」


「「「「あぁ〜……」」」」


みんなはその言葉に納得していた。


「そうかしら? 確かに残念がっていたけれど、学校が決めたことに異議を唱えるなんてこと、エルがするとは思えないわ」


「いやいやハルネさん。絶対にそうだって……」

「エルさんの残念がり様は異常でしたから……」

「うん、間違いなくそのことで話しに行ったと思う……」


「そ、そうかしら???」


私以外のみんなが一致団結している。唯一置いてきぼりの私は、一応エルに後で話を聞かないといけないなと考える。


「パートナーと言えば、ハルネさんのパートナーも呼び出されてたよな」


「そういえば。なんかプライベートな話って言ってたけど、何なんだろうな」


流れで話が颯のことに変わる。


「洗馬だっけ。なんか印象悪いって感じだったな」

「見た目はかっこいいし、クールって感じで素敵なんだけど、ちょっと近寄り難いよね……」

「目がすごく冷たいっていうか、凍てついてるよね……」

「というよりも、俺たちに一切興味ないって感じだよな」

「“幸せになりたいなら話しかけるな”か。なかなかな大見得を切ったもんだよな。むしろ何が起こるのか見てみたくもあるけど、何だろうな」

「でも仲良くなるなんて絶対に無理そうだし、まず話しけるのも難しそう」


みんな口々に颯の第一印象を口にする。一致しているのは、颯は怖い人だという感情。


「そうかしら?」


私の印象は違っていた。その言葉に驚いて、全員が注目する。


「確かに言葉遣いもあまりいいものではないけれど。私はむしろ彼はみんなのことを思っているように見えたわ。きっと彼は、本当はすごく優しい人だと思うの」


颯の目は確かに冷たい。でもそれは表面であって、その奥には温かな光が確かに灯っていた。だからこそ、私は彼のことを知りたい。ペアとしても、クラスメイトとしても、積極的に関わっていきたい。それが私の第一印象であった。


「そういえば贄川、入学式の前後で彼と話してたよな? 一体どんな繋がりがあるんだ?」


「ん、僕?」


颯の話以外では饒舌だった贄川くんは、彼の話の時だけは全然口を開いていなかった。


「入学式前後は、単に席が隣同士になったからってだけで話してただけだよ。彼からしてみれば、どっちかといえば僕は情報収集のために使われたって感じかな」


自分も邪険に遇らわれたと、腕を広げてやれやれといった様子。


「実際に話をした贄川くんがそういうなら、やっぱり冷たい人って感じそうだね」


その言葉に頷くクラスメイトたち。


「どうだろうね。僕からは何も言わないでおくことにするよ。本人が話したくないことを話すつもりはないからね。あとはみんなが決めることだよ」


この件に関してはなにも言わない贄川くん。彼自身は()()()()()()の人間ではあるものの、本人のいないところで秘密をおいそれと話すような人物ではない。


「でもそれじゃあ面白くないから一つだけ。颯の両親のことを知ってるかい?」


でも一つだけ颯に関する事を話し始める。



(そういえば、颯はどうしたのかしら?)


未だにこの場に現れないのは、話が長引いているからなのだろうか。少し前に、ここにいることは連絡しておいたから知っているはず。それとも、ここまでの道のりに迷っているのか。


(できるなら早く会って、お話がしてみたいな)


そんなことを考えながら、残っているケーキを楽しむ。

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