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情報通の解説。

「……ま、そんなわけでうちの家は昔から魔法・魔術について関わっている家なのさ」


講堂から教室への移動中、隣にいた奴から解説を受ける颯。


本当は人と関わる気など毛頭ない。だが事態が事態、魔法だとか魔術だとかが嘘か真かはともかく、ここを出ても行き場のないことは確か。だからしばらくここにとどまる以外の手段が彼存在しない。


ならば少しでも魔法・魔術についてを知っている人物から情報を得ておいたほうがいい。幸運にも隣のやつは自分と一緒にいることを嫌がっていない様子で、かつ魔法についてもそれなりに詳しいらしい。


今は少しでも情報が欲しいから、必要な情報を得るまではその厚意をありがたく利用することにした。


「お前の両親も魔法に関わっていると」


「お前じゃなくて、翔太って呼んでほしいな。で、質問の答えだけど、そうだよ。僕の親父は魔法使い及び魔術師を統治している魔法・魔術統治省日本支部の職員なんだ」


「魔法・魔術統治省? なんだそれは?」


聞き慣れない名前が出てきて聞き直す。


「まぁ名前の通り、魔法・魔術について統括してる国連直轄の機関だよ。ここ日本にはその支部があるのさ」


「国連直轄? そんな組織は聞いたことないが?」


「そりゃ一般には非公開の組織だからね。魔法とか魔術が隠された存在なんだから」


「……」


魔法・魔術の存在は隠匿されてきた。ならば、そんな省庁の存在も秘匿されて当然。愚問だったと反省する。


(とは言え、こんなオカルトチックな話が世界規模のものだとは予想していなかった)


「で、うちの親父はそんな所の情報局に勤務しているのさ。だからいろいろな情報が僕の元にも入って来るんだ」


自身の噂好きと情報収集源を解説する。そういった機関の情報を元にしているのなら信憑性も上がるだろうと、話を聞く相手を間違えなかったことを改めて確認する。


「情報局の職員は日本中散らばってて、日々魔力のある者とかその他諸々を探しまわって報告するのが仕事なのさ。君のこともそこで聞いたよ」


「……そうか」


それは心底どうでもいいこと。そんなことよりも別に聞きたいことがあった。


「じゃあさっき俺が受けた魔法? 魔術? あれは一体なんだ?」


「あぁ、あれ? Lost of Visibility(可視の消失)。まぁ効果は見たまま言葉のまま、言ってしまえば透明人間になれるって代物だよ」


「それは分かる。聞きたいのはその発動方法と理屈だ」


「あ〜……、そっちね……」


後頭部を掻きながら困ったという表情をする。


「悪いけど、一応アレはウチの秘術だから、教えられないんだ」


「秘術……」


透明化なんて代物、乱用されては大変な物であるし、それ故に門外不出というのも理解できなくはない。


加えて、それを聞いたら大半のものが落ち込むのも容易に想像ができるからこそ、その状況を思い浮かべて少し笑いそうになるのを堪える。


「そもそも颯は魔法すら使ったことないだろう? まずはそっちをやってからじゃないと話すら始まらないって」


「……一理ある」


魔法という代物に関わったことが一切ないのだから、あのような高等の代物を扱えるはずもない。彼の意見が妥当であると同時に、自身の焦りを思い知らせる。


「まぁその辺はちゃんと授業してくれるだろうから、気長に待ちなよ」


ここが教育機関であることに代わりはないのだから、その辺りの説明は後でもらえるだろう。今はそれまで待つべきだと諭される。


「そういえば、俺が消えた時、それに驚いていたのが新入生の半数くらいだったが、アレはどういうことだ?」


ならばと、別の違和感についての解決を図るべく、新たな質問を投げかける。


「それはまぁ、その半数は魔法・魔術について知っているから。毎年割合は大きく異なるけど、今年は偶然にも魔法を一切知らないけれど魔力を強く持っている人物が半数、魔法・魔術について知っているのが半数くらいの入学率になったんだよ」


「やっぱり、そういうことか」


これはほぼ予想通り、半分くらいはこのオカルトチックな力を元から知っているということのよう。


「なら、お前も使えるのか。魔法だとか魔術だとかを」


「あぁ、もちろん!」


待ってましたと言わんばかりに、一回指を鳴らす。するとたちまち彼の身体は視界から消えていった。おそらくはさっきの透明化の秘術。


「僕はまだこれくらいしかできないんだけどね。これを使ってる間は他の魔法・魔術は一切使えないし、姉貴みたいに誰か他人に透明化の魔術をかけたりもできない。姉貴と違って落ちこぼれなんですよー」


姿は見えないままに、不貞腐れたような声で不満声を上げる。


しかし大事なのは透明ながらも声は聞こえてくること。この透明化は視覚情報に影響を与えても、聴覚情報には影響を与えないらしい。決して万能の力というわけではないということが分かる。


「こーら!」


と、言葉を遮る大声が背後からかかる。振り向くとそこにいたのは先ほどの生徒会長の二人。


「翔太! 無闇に使っちゃいけない物だって言われてるでしょ!」


「はいはーい」


すぐさま姿を現わす。


「せっかく顔を見にきてあげたのに……」


「必要ないって」


「そんなこと言わないの!」


「いっ!」


ポカッと、頭に一発ゲンコツを入れる生徒会長。


「そういえば、君はさっきの洗馬颯くんだね。さっきはどうもありがとう」


「……いえ」


「この子、ほんとしょうがない子なんだけど、できれば仲良くしてくれると嬉しいです」


「…………」


その言葉に沈黙で応える。誰かと仲良くするつもりなんて毛頭ないのだから、その要望には応えようがない。


一方の女生徒会長であり、彼の姉はその無言を肯首と捉えたのか、ニコッと微笑んだ。


「ところでお前たちはパートナー同士なのか?」


「……?」


「いえ奈良井先輩。発表はクラスについてからですから」


質問の意図がわからない俺の代わりに、引っ叩かれた頭を抑えながら生徒会長弟が答える。一人話が通じない俺は頭を捻るのみ。


「……それもそうか。すまない。さて、そろそろ俺たちは行くとしよう。新入生活を楽しんでくれたまえ」


「……はい」


「もちろんです〜」


「美優も行くぞ」


「はいはい。それじゃあ翔太また後でね。洗馬くんもバイバイ」


二人の生徒会長は去っていった。


「……さっき奈良井生徒会長が言ってた、“パートナー”ってなんだ?」


感じていた違和感。それはさっきの生徒会長たちを筆頭に、上級生の中で一人で行動している者は一切見当たらないということ。仲がいいことはもちろんいいことだが、普通の教育機関では必ずと言っていいほどあぶれ者というのが出てくるものだろう。それが一切ないのが逆に違和感を感じさせた。


そして先ほどの“パートナー”という言葉。それが関係しているのは間違いないと自身に確信させる。


「ん〜。僕から全部説明しても面白くないだろう? それに教室に行けば割りとすぐにわかると思うよ」


「……そうか」


これ以上は情報を得られそうにない。ならこれ以上彼に用はない。だから歩く速度を上げて離しにかかる。


「お、おいおい。歩くの早いってば」


「もうこれ以上話す必要はない。俺を知っているなら分かるだろう? 俺は人と関わり合いになるつもりなんてないんだ」


「って言っても僕らは同じクラスだろ。目的地が同じなんだから一緒でもいいじゃない?」


「入学式の直前と、今さっきお姉さんに怒られたので噂の証明は完了しただろう? ならお前もこれ以上関わらないほうがいい。お前の身のためだ」


これは最大限の譲歩であり最終警告でもあった。これ以上何が起こったとしても自分は責任を取るつもりはないと、そう告げてから歩く速度を早める。


「颯」


だが少し離れたところで、トーンが変わった。その変容に驚き、つい足を止めて振り向いてしまう。


「君が人と関わりたくない理由は知ってるよ。でも先に言ってくけど、ここで人と関わらないなんてことは絶対に不可能だ。そろそろ君は自分を認めて、それを誰かに受け入れてもらうことを知るべきだって思うな」


「……。」


警告とも忠告とも取れる言葉。それが嘘でないことはすぐに分かる。だが、


「……他人のことまで、俺は責任を持つつもりも持てるはずもない」


それはとうの昔に思い知ったこと。誰かの責任は持てないし、誰かが受け入れることもない。 何故なら俺自身のことを受け入れる人物は誰一人いないのだから。


それを改めて心に言い聞かせてから、彼を置いて先に進む。





「そうか。でも、それが君の……」

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