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俺たちは落ちこぼれ、でも二人でなら最高の魔法使い  作者: 広河恵/ぴろめぐ
第一章第二節:クラスメイトとパートナー。
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寮と部屋とルームメイトと。

「ん?」


気がつくと空は赤色から闇に染まりつつある。


「いつの間に? ……もうすぐ真っ暗になるな」


実際、森の先はすでに真っ暗闇。魔法・魔術の教科書とそれに書いてあることの実行に夢中になっていたようだ。しかしまだその1/4も進められていない。もう少し実験と実証を繰り返したい。


「かと言って、山道を夜に歩くのは危険か」


いくら整備されているとはいえ、街灯が一本もない中を歩くのはいくらなんでも危険。大人しく学生寮への帰路につくことにする。


15分くらいかけて学生寮に到着した時には、辺りはすっかり真っ暗。しかしその中でも四棟の学生寮強い光を放っている。


この学生寮はクラスごとに三学年の生徒が配置されている。A組である俺は第一寮、そこに同じくA組のクラスメイトと二年と三年のA組の先輩たちも入寮している。寮には各部屋の他に、大浴場や食堂がある。学校行事の中には寮対抗魔法・魔術戦なるものもあるらしく、学生寮にも小さいながら魔法・魔術訓練室もある。


そんな寮に入ると、エントランスはかなり多くの人で賑わっていた。もうすぐ7時、夕食の時間なのもあるだろう。


その人混みをすり抜けて階段へ出る。今年の一年生は三階が与えられた。帰宅のたびにいちいち階段を登るのは少し面倒だなと思いつつ、階段を上っていく。


部屋は二人一室となっている。その中に各個人のプライベートルームがあり、最低限のプライベートな空間は確保できている。台所、お手洗いと湯船はないがシャワールーム、洗面台などが部屋での相方と共用になる。それに小さいながら部屋にはリビングもあり、ソファーや小さいテーブル、テレビなどもある。


「……なんというか、一般的な学生寮の設備を軽く超えてるだろこれは。ハーシェル学園、生徒への優遇は聞いた以上だな」


一体どれだけの金がこの学園施設にかけられているのだろうか……。


三階まで登り、自室を目指す。あてがわれた部屋は1303。階段から近い場所に部屋があるのはありがたい。


校舎棟の訓練室と同じく、扉の横にある認証モニターに端末をかざすと、ドアが開く。中に入ると案内にあった通り、入ったところのすぐ右横にはキッチンと冷蔵庫。反対にはお手洗いと書かれた扉。その隣には洗面所・バスルームと書かれた扉もある。奥に歩いていくと、リビングとソファとテーブルがあり、さらに奥には並んだ二つの扉。恐らくはそこがプライベートルームだろう。


「……いや広すぎるだろ。これが全生徒に割り振られてるとか、ほんとどうなってるんだよこの学校」


分かっていても、やはり目眩がしてくる。


ところで部屋の相方の姿が見えない。夕食でも食べに行っているのだろうか。


「……喉渇いた」


そういえば、結局昼食も取っていないし、水分補給とかも全然していなかった。普段からあまり水は飲まない人間なのであまり気にしていなかったが、過度に飲み過ぎないのもよくない。ひとまずキッチンへと戻る。


「おっと」


足を滑らして少しバランスを崩す。床が滑りやすくて危ない。数年前に建て替えたばかりだとかなんとか、まだまだ

新品のこの寮の床は滑りやすいらしい。


『ガー』


手をついた位置が、ちょうど洗面所の扉を解錠するスイッチだったらしい。扉が開く。


「えっ?」


「は?」


声が聞こえて方を向くと全身が硬直した。


「は、颯!?」


それもそうだ。なぜならそこにいたのは、あの例のお嬢様。しかも、バスタオルで身体を隠しただけの姿。


「は? は? はぁ? ちょ、え、や、えと?」

「きゃあぁぁああぁぁ!?!?」


訳がわからず、彼女の悲鳴を背中に受けて、とにかく謝りながら猛ダッシュで部屋を飛び出す。


部屋の番号を確認する。扉の上の小さな電子モニターは1303。大丈夫、俺は何一つ間違ってはいない。この部屋は俺の部屋だ。


なら彼女が部屋を間違えたのか。しかし間違えたままシャワーまで浴びているとは一体どういうことなんだ? 一体何が起こっている?


ひとまずこの事態を知っていて、解決してくれそうな人物をすぐに思いつく。ポケットから端末を開いて、急いでその人物に電話をかける。


『どうした洗馬、こんな時間に』


「あの、なんで俺の部屋に、あのお嬢様がいるんですか! っていうかあのお嬢様、部屋を間違えた挙句シャワー浴びてたんですけど!?」


相手は日出先生。教員ならこの事態を解決してくれるだろう。


『……お前、今になってその話題か?』


「は?」


しかし、返答は呆れ返った声とコメント。


『すでに何人からもその話がかかってきて、や〜っと落ち着いたと思ったのに、全く……』


ため息をつきながら疲れきったという口調。


『というか今更か? とっくに知っていて、お前たち二人は受け入れたと思っていたんだがな……。寮に行ってなかったのか?』


「???」


全く話についていけない。


『いいか洗馬。HRでパートナーは基本常に一緒だと言っただろう? つまりそう言うことだ、異論は認めん』


「……そんな、バカな!?」


いくらペア制度だからって、過ごす部屋まで一緒なのはどうかと思う。いや、同性同士ならともかく異性同士が同じ部屋だなのは流石にアウトだろう。いくらなんでも無茶苦茶だ。


『これは毎年のことだけど、毎年そういう風に全員が受け入れている。安心しろ、プライベートルームがあるんだから秘密の行動はできる。じゃあな』


と、一方的に告げるだけ告げて切られてしまう。有無を言わさないらしい。


しかしあの態度からみて、同じ話題がすでに何人も挙げているのか。実際異性同士のパートナーはクラスに何組もあった。だったら、そこで部屋を組み直すとかしすればいいのに……。


「おい」


突然、冷たい光を放ったなにかが首元に突きつけられる。


「話は終わったな。なら大人しく投降しろ」


「……はい」


両手をあげる。なんらかの刃物を突きつけられた状態で、抵抗は出来そうもない。


ドスッ。


「カハッ」


途端、首の後ろに衝撃を受ける。そのまま意識は真っ暗闇へと一直線に向かっていった。

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