【二節】第八話 旅の始まり
━━あれから私達は、洞窟から西にある近くの街を目的とし目指していた。この情報は、洞窟で助けた人達に教えて貰ったのだ。
先ずは、街に行って衣服を買って身に付けなければならなかった。
というのも、洞窟の中で集積所となっていた所から、なんとか着られそうなものを取り敢えず身に付けているだけなのである。
その為、今着ている衣服はボロボロで、着心地も最悪だった。
これだけでは、街に入った時に周りから偏見の目で見られない為に、大きな布をフード代わりとして這おっていた。
「━━ねぇ。あの人達あのまま洞窟に残して置いてよかった?」
突然、クランは洞窟に取り残された人達の事が心配になったのか私に語り出した。
クランは、もうすっかり私が教えた言語を殆んど取得して、今ではスラスラと言えるまでに成長していた。
正直、教えてまだ日が浅いのに、呑み込みが早かった。私としてはとても助かっているのだ。
「まぁあの人達は、故郷が滅ぼされたとか言って、行く宛もなかったみたいだしな。そういう人達は皆と共に暮らしてくとは言っていた。」
「…そう。」
クランは何処か寂しそうな顔をしていた。
「きっと大丈夫だ。あの人達も生きて行く為に色々学んだからな。それに、そんな簡単に死ぬような柄じゃない」
一人だけ洞窟を飛び出し私と旅する方を選んだせいで、クランは皆に悪い事をしたと思っていた。それを励ますかのように私は言う。
すると、クランは少し身体の力が抜けたような気がした。
「この後、街に行って服買い揃えたらどうするの?」
クランは話題を次に変えた。
「図書館のあるところを目指すから、王都に向かうかな」
「なんで図書館?」
「この世界について色々調べないとな。後、この世界の言語もまだ全然だからな」
「なんかこの世界の人じゃないみたい」
━━ここで私は「しまった」と心の中で思った。
(そうだった。私が別の世界から来たとクランに黙ってたんだった)
「実は私、記憶が無いんだ。気づいたら、あの洞窟に囚われた」
なんとかしてクランを誤魔化す事にした。
クランは少し疑うも納得したみたいである。
「ふーん。じゃ、旅する目的は?」
クランは私を揺さぶっているのか、次の問いをかけた。
「一応、私の力の根元でもあるコアを探す為だ」━━なんてクランには言えるはずもなく、私は嘘を言った。
「私の記憶探しかな」
「そうなの。早く戻れるといいね」
クランは何も疑う事なく返した。
というのも、私がこの世界に来る前に保有していた、コアが何らかの影響で、この世界に飛び散ったと推測された。
そもそもコアは、魂から作られているので、微かだがその魂の魔力を感じる事は出来た。言い返せば、まだその魂は生きているとも捉えている。
どうせ、この世界に居ても元の世界に帰れる保証も何処にもないので、一先ず私の力を取り戻す為に旅をするという目標を立てたのである。
そんな事は裏腹に、私達が足を進めている間に、次第に森林だった場所が、どんどん砂漠地帯となっていた。
「そんな事より、この道で合ってる?」
「すっかり言いそびれてたけど、ごめん。迷った」
クランが心配している中、私は正直に言った。
クランは私の顔を見るに、睨むどころか呆れた表情を向けていた。私はクランの顔を見ないと横に振った。
既に起こってしまった事は仕方ないので、取り敢えず道が続く限り前に進んだ。
━━すると突然、前の方から人影らしき者が現れた。
次第に私の方へと向かって来たのである。
よく見ると人影は複数居り、片手には武器らしきものと、スノーボードだろうか魔方陣で宙に浮かせて走らせていた。
「おッ! 旅をしてから初めて人を見たな」
というのも何か様子がおかしかった。そして、私の目の前までやって来た複数の人達は、私達目掛けて遅い掛かってきたのである。
そう、この人達は盗賊であったのだ。
私はすかさず、交わそうとした矢先の事だった。
私の隣に居たクランが、手に魔方陣を出しその中から鎖を伸ばし、こっちに来た盗賊の足を引っ掻けて転ばせたのである。
「私のマスターを狙うなんて良い度胸をしてる。手を出して良いのは私だけ」
なんか急に禍々しい魔力のオーラを放っていた。最後の台詞に関しては、面倒だから聞かなかった事にした。
そして、クランは盗賊相手に鎖を駆使して一人で全滅させたのである。
まだ息があったので、盗賊達を身動き出来ないように鎖で縛り上げ、トドメを刺すところでと私は止めに入った。
「ちょっと待て。この盗賊達にも利用価値はある。殺さなくていい」
クランは嫌々そうにしたが、私の言葉に従った。
私は盗賊に質問した。
「さてと君達に聞きたいんだけど、この近くに街とかある?あるなら行きたいんだけど」
「ケッ! 誰が教えるか!」
と口堅く教えてくれなかった。するとクランが、鎖を出し鎖を地面に思いっきり叩き付けた。
どうやら、私に敵対する者は許さないらしい。なんともおっかなかった。
「ひぃ、命だけは━━この先を真っ直ぐ進めば街に行ける、ます」
とさっきと打って変わって態度がコロっと変わった。
折角なので盗賊が乗っていたスノーボードを貰っていく事にした。
「折角だからこれ貰ってくよ」
と言い、私はこういうには乗った事もなかったが、乗って動かした。私は初めてながらスノーボードを乗りこなせていた。
「何だ。魔力を足に流し込めば後は、魔法の出力を変えてやれば動かせれるのか」
何故か私の後ろにクランが居て、私の腰を掴んで一緒に乗っていた。
「いや、二人だと重たいから自分で乗って来なよ」
「やだ!」
またしても即答で断られた。
意外にもこのスノーボードは、速く進むので断然徒歩よりも楽だった。
「そう言えば、なんでさっき私の事マスターだったんだ?」
「私が主の名前を言うのは、少しおこがましくて」
「そんな事ないけど」
「後、あの人達がマスターとは忠実な者のみに使われる言葉と教えてくれた」
「あの人達? …あぁ。余計な事を」
「だから、私のマスター」
言い慣れてないせいか少しこそばゆかった。でも、本人がそれで言いやすいのなら私は止めなかった。
そんな事を言っているうちに、街らしき建物の灯りが見えて来た。
盗賊のお陰で、ようやく速く街についたのであった。
街の門まで着き、私達はスノーボードからおりた。そして、そのスノーボードは魔方陣の中へとしまい込んだ。
「さてと、ようやく街に着いたな。先ずは衣装買わないとな」
そう言い、街の門をくぐり抜け街の中へと入っていった。
技
【魔方陣斬り】
魔方陣を展開し具現化させた後、その魔方陣を高速で回転させる事により、斬撃する事が出来る。
【魔方陣の盾】
これも、魔方陣を展開し具現化させる事により、相手への攻撃を、この魔方陣に向けさせる言わば盾の代わりである。
所詮、魔方陣なのでそこまでの耐久性はない。なので基本的には、衝突した後は「パリン」と砕け散る。
この魔方陣は、あくまでも魔法を扱う為の言わば器となる部分なので、こういった使い方は余り効率的ではない。なので、力が戻るまでは仕方なく技として使用している。




