第三十七話 二つの鎖
━━あいつは、もう人でも何でもない。ただの魔物だった。
上半身が人で、下半身が蠍なのだ。そして、決め付けには、右腕に大きな鋏を武装させていた。
私とクランは、片手同士合わせるや、セルケトの真っ正面に向かって走っていった。その合わせた手には、魔方陣が展開させられていた。
すると、セルケトは私達が真っ正面に向かって近付いて来るところを見計らって、右腕で叩き突けた。
だが、その攻撃は当たらなかった。私達は、振り下ろされる直前で、それぞれ左右へと交わしたのである。
そして、セルケトに眼中がない様子で、そのまま私達は走り続けた。
セルケトは、そんな私達を逃さないと、標的を私へと絞りその後ろを付けて来た。
(━━やっぱり、私の方に来たか……)
その行動を、知っていたように思うと、私は直ぐ様振り返るなり、再びセルケトの真っ正面に突っ切って行く。
すると、セルケトが今度は、私に向かって突く形で右腕を伸ばした。
私は、その攻撃を【魔方陣の盾】を展開させ防ぐ。
だが、私は思わず「━━クッ」と、口が漏れる。その攻撃は思っていた以上に強力で、魔方陣が砕け散り、私の体勢がグラ付いた。
その隙を逃さなかったセルケトは、尻尾で私を突こうとした。だが、思った通りに尻尾が動かなかったのである。
そして、自分の尻尾を見るなり、ようやくしてセルケトは自分の置かれている立場に気づいた。
それは、その尻尾になんと鎖が巻き付き、縛られていたのだ。セルケトは思わず口に言う。
「なッ━━いつの間に!?」
セルケトは私を見るなり、驚いた表情を見せていた。そんなセルケトに私は煽る形で、こう言った。
「どうした? そんな驚いた顔をして……もっと、回りを警戒しといた方がいいぞ?」
すると、セルケトは何かを思い出したかのように周囲を見渡した。それは、先程まで居たクランの姿が見当たらなかったのである。
セルケトは次に、鎖で引っ張られている跡から辿っていく。その先に、ようやくクランを見つけた。
その場所には、屋根の上に居たのだ。どうやって、登ったのかわからないと言った様子だったが、セルケトは更に驚く事に気づく。
先程の鎖で縛られていた、もう片方にも同様に伸びていたのである。
それに気づき、今度は私の方を振り向いた。よく見ると、私の片方の手には鎖が出ていたのだ。
あの時、手を繋いでいた時から、既に鎖を一つに結び付けていた。
そして、どちらか片方が標的になっている間、その隙にもう片方が尻尾に鎖を巻き付かせていたのである。
あの時、手を繋いでいた間際に作戦を指示していたのだ。それが完全に、手筈通りに事を運ばせられていたのだった。
━━そのセルケトが周囲を見渡している隙に、私は体勢を立て直していた。
ある程度、状況を把握したところで私はセルケトに更に煽るように言う。
「魔物になって、知能衰えたんじゃないか?」
すると、その言葉を聞いたセルケトは更に血を上らせるように、怒り始めた。
「━━私を……そこまで、愚弄するきか……許さない!絶対、許さない!!」
(よし。 あいつは今、冷静ではなくなってきてるな。 次の作戦に移るか)
私は、次の指示を鎖で三回引かせクランに合図させた。すると、引っ張られた振動がクランに伝わるや、私を見るなり、軽く頷いた。
「━━さーて、次の作戦開始だ!」
そう言うと、私とクランは再びセルケトのところへと走り出した。
セルケトは、私達が向かって来るタイミングを見計らって、片腕を私の方へと突き刺してきた。
私は咄嗟に【魔方陣の盾】を展開させると、そのままセルケトの攻撃を受け流した。
セルケトの攻撃と私の魔方陣は擦れ合い、物凄い火花を散らし、地面へと流していく。
(━━そのまま防いでも、パワーに劣るからな……こうやって受け流すのが関の山か)
その隙にクランは、セルケトの足元に回り込み、鎖を縛り付けた。そして、巻き付けた足を引っ張ると、セルケトの重心が崩れグラ付いた。
私は、その隙を逃さなかった。すると私は、再びセルケトの足へと鎖を巻き付かせる。
これで、左右の両足は鎖で縛られたのである。身動きの取れなくなったセルケトは「━━クッ。
ちょこまかと……」と口を漏らしながらも、まだ動ける腕で私達を狙い突き刺してきた。
私達は、その攻撃を避けた。さっきより、行動が明らかに狭まり鈍くなっているので、直ぐに回避する事が出来た。
そして、次に私達が狙うのは、言わずともわかっていた。それは腕である。
すると私とクランで、それぞれの腕に鎖を巻き付かせ拘束させたのであった。
━━これで完全にセルケトは動けなくなったのである。
因みに、最後に腕を残したのにも、訳があった。先ず始めに、一番厄介だったのは、腕より尻尾だった。それは、腕の攻撃をしている間に尻尾の攻撃をされたら、防ぎようがなかったのだ。それに、あのパワーなので尚更だった。
次に、足を止める。足を止め相手の行動を制限させるのだ。そこまでいけたら後は簡単だ。残る腕を拘束させてやればいいだけだからである。
これも、手筈通りに事を運ばせれたのも、クランのお陰である。
そして、私はセルケトの前に立ち、話かけた。
「━━手短に話そう。 そのコアを何処で拾ったんだ? ……いや、誰に渡されたんだ?」
すると、セルケトは私を睨み付けるや、口から針を私に飛ばしてきた。
私は瞬時に【魔方陣の盾】で防ぐ。
「━━はぁ。 聞く耳持たずか……」
私は溜め息を履きながら呟くと、もう潔く諦めた感じで、クランにこう言った。
「クラン。 もう、殺っていいぞ」
すると、私の一言でクランは鎖に巻き付かせた短剣で、セルケトの両腕を切り落とした。
「ぐああああああああああ!!!」
セルケトは、悲鳴と共に私達にこう告げる。
「━━よくも……神である私を此処までやってくれたな。 これで終わると思うなよ?」
そして、セルケトがそう言うと、胸の辺りで光が差し出した。が、それは一瞬にして消えたのである。
その胸にはそれぞれ前後に短剣が突き刺さっていたのだ。
「━━馬鹿……な。 お前、どうしてそれを……」
セルケトが見た先には、魔方陣が展開されていた私の手から伸びていたのは、鎖で巻き付かせた短剣だった。
私は、そんな困惑しているセルケトに、こう返した。
「私が鎖を使ってる時点でわかっていたと思っていたんだが、魔物になって頭悪くなったんじゃないか? 一つ死ぬ間際に教えてあげよう。 元々その武器は私のでもあり、クランの魔力は私と一つになっている。 そして最後に一言付け加えるなら、そのコアは本来私のものだ」
その台詞にセルケトは、目を見開くや、何事も語らずただその場に力無く立ち尽くしていた。
その後、私はそのまま鎖で巻き付かせた短剣を強く押すと、クランもまた力を加えると、その体内にあった生命の石が、それぞれパキッと割れる音が聞こえた。
すると、セルケトの身体はみるみる黒い灰となってその姿を消していったのであった。
それから、セルケトが消え灰の積もった中から、メリアが倒れ込んでいた。
「━━あいつは、死んでるのか……」
と軽く呟いていると、クランが私の元へと駆け付けて来た。クランは私の前に立つと、私の顔を見てきた。
何かを言う事もなく、ただ私の顔をじっと見つめていた。
なんか最後は、呆気ないような終わり方をしたので、パッと浮かばない様子だったが、私はそんな見つめてくるクランに、頭を撫でこう言った。
「━━取り敢えず、お疲れ様」
不器用ながらもクランに言う。私は、こういう人との接し方にはなれていないのだ。
すると、クランは嬉しそうにするも何処か悲しいそうな感じを浮かばせているような気がした。
そして、私はクランの瞳の前へ手を翳すと、パリンとそこに施された魔方陣が砕け、元の瞳へと戻した。
それから、そのコアの一部を回収するべく、倒れているメリアの元へと歩く。
そこには、コアらしき丸い石と、砕けて小さくなった生命の石が転がっていた。
私は、何も考える事もなくコアと生命の石も回収させた。
━━だが、回収を終え私が立ち上がる時、それは突然として起きたのだ。
なんと、メリアが急に起き上がるや、こう叫んだのである。
「━━死ねぇぇぇぇええええ!!!」
メリアは、死んだ振りをしていたのである。
しかし、それは最後の悪足掻きにも捉えられた。メリアが腕を伸ばし、滴り落ちる唇を噛み締め最後の攻撃をしたのだ。
私は、瞬時に【魔方陣の盾】で防ぐも、それは誤算だった。
それは、直ぐにして理解した。標的は、私ではなくクランだったのだ。
クランは「━━え?」と、口を漏らすや顔を動かし自分のお腹辺りを見た。
すると、そこには一番始めに戦った、木で作られた人形腕だけが、クランのお腹に突き刺さっていたのである。
よく見ると、指の一本一本に針が出されていた。その先端には、毒らしきものが塗られていた。
クランは薄れゆく意識の中、私を見るなり私に何やら呟いた様子だったが、距離があって聞き出せれなかった。
そして、クランはその場へと、倒れ込んだ。
そこには「━━アハハハハハハハハ」とメリアの笑い声が響き渡ったのであった。
大邪神セルケト
人(魔女)が悪魔と結んだ契約により産み出された魔物の姿。
その姿は、上半身人の姿をしていて、まるで蠍のでもあり、腕は鋏と足は6本と尻尾がある。
その甲殻は硬く普通の攻撃では弾かれてしまう。
次いでに、力もそれなりに強く、攻防両方に特化している。
若干、速さに欠けている。
基本、毒をメインとして攻撃する。なので、触れると毒に感染する恐れもある。




