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セブンスタート  作者: 落としネコ
第一星 コラシピオン
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第三十五話 覚醒するメリア

 ━━もうあいつは人間ではない。悪魔に魂を売った哀れな少女。そして、今私の目の前に居るのは、そんな悪魔の道へと踏み外した、悪魔そのものだった。


 いや、少し違う。一度あいつは死んでいるのだ。だが、あいつは傷跡も何もかも元通りなのだ。

 それは、生命の石という二つの石に依るものだった。だがら、修正するならば、あいつは人間の皮を被った悪魔で、死者そのものである。


 だが、それよりも許せないものがあった。それは、あいつが本来、魔女だったからだ。

 魔女にも、犯してはならない理が存在する。その中の一つは、悪魔に魂を売るという行為だった。もう一つは、死者の蘇生であった。


 魔女ならば、当然これらの理は理解しているはずである。それが、どの世界でも共通であり、尚更の事だ。


 そして、私の知る限り魔女が悪魔に魂を売った人物は、これまでに七人だった。

 もし、この世界でコアを使用して悪魔と契約している人物が他にも居たとするならば……それは言うまでもないだろう。


 ━━けれども、そもそも私は少なからず魔女ではなかった。何故なら、私は元は男なのだ。魔女ではない。

 だけど、私は無性に気に食わなかった。それは、かつての私の師匠が魔女だったからである。


 私の師匠の教えで、散々言われ続けていた言葉でもあったのだ。それをあろうことか、私のコアに泥を塗られたような気がしてならなかったのだ。


 だから、私はどうしてもあいつだけは許せなかった。すると、私は以前の自分を思い出すや、こんな事を呟き始めた。



 「ククク━━丁度いい。 此処に来て、ようやく魔女と出会えたんだ。 魔女且、悪魔狩りしてやるよ。 その禁忌に判した罪、この私が葬ってやる!」


 と、両手に魔方陣を展開し始める。そう、私は悪魔は勿論、魔女狩りが専門だったのだ。これまで数々の魔女達をこの手で殺めて来ていた。

 だが、今は違っていた。どんなに倒した経験があろうと、こんな身体になった挙げ句、私には魔女等と対抗出来るような魔法や、武器なのはほぼ無いに等しい状況だったのだ。


 私は、魔女の力がどれだけ強大なものか、これまで倒して来て十分に理解していた。

 今回もそうだ。あいつは、今までのメリアとは明らかに違っていた。


 (━━今の私に倒せるか……いや、私が倒すしかないんだ!)


 そもそもの原因は、明らかに私のコアに依るものだったからだ。この世界に、飛ばされたと同時に、私のコアはなかった。

 となると、この世界に散らばったのだと推測された。でも、そのコアを自分の手にするには、いくらなんでも明らかに早過ぎる。


 ━━だが、今はそんな思考よりも、先ずはあいつの弱点を探るのが先決だった。

 とは言え、あれは私の知り得ない存在だった。いくら弱点を探るにしても、手当たり次第やるしかないのだ。


 すると、私が構えた事により、相手もまた私を見るなり、両腕を横に伸ばすと同時に、魔法を唱えた。


 「━━【人形の舞台(ドールズステージ)】!!」


 掛け声と共に、その回りには無数の魔方陣が張り巡らされたのである。

 しかし、まだこれだけでは終わらなかった。次に、こう魔法を唱えてきた。


 「━━【人形の錬成術(ドールズアルケミー)】!!」


 そう言うと、先程の魔方陣の中から、木で作られた人形達が出てきた。

 そして、私は絶望する事となる。そこから更に、上書きするかのように、またも魔法を唱えたのである。


 「━━【人形の蠍(ドールズスコーピオン)】!!」


 すると、今度は地面に、バラバラに砕け散った人形達の破片が、宙に舞うや、先程出現させた人形達と、合体し出したのだ。

 まるで、武装するかのように、人形達が次々にそれぞれの形へと変貌させていった。


 その姿は、先程のメリアに纏っていたものの完全形態だった。それが、今度は無数の人形達が相手だったのだ。

 私は、今からこれ等を相手にすると思うと、気が引ける感じがした。


 更に、私を追い込むかのように、人形達をよく見ると、矢張棘らしきモノが見えた。

 その先端には、毒らしき液体がキラリと照らされ輝かせ、付けられていた。


 「━━さぁ、存分に味わうといいわ!」


 と言うと、人形達の額に魔方陣が浮かび上がらせると、一斉に動き始め、私に襲いかかって来たのである。


 ━━私は、すかさず展開された魔方陣で【魔方陣斬り(マジックスクエアカッター)】を、両手で人形目掛けて投げた。

 けど、その技は軽く弾かれてしまったのである。


 明らかに、先程の人形とは違っていた。人形達も強化されているのだ。

 私は、それから鎖を出し始め、二体の人形の足に巻き付けた。そして、そのまま他の人形達にぶつけ凪ぎ払う。


 だが、どんどん人形達は、私の元へ押し寄せて来る。これでは、いくら倒してもキリがなかった。

 それに、人形達に触れる事さえ儘ならなかった。それは、矢張あの棘である。少しでも触れると、恐らく死に直結してしまうだろう。

 その為、近付こうにも人形達が行く手を阻み、中々メリアの元へ近付く事も出来なかったのだ。


 それと、私が倒した人形達は、倒されても尚、あの魔方陣からまた新たに現れるので、先ずはあの魔方陣をどうにかしなければならない。

 幸いにも、人形にも数が決まっているらしく、倒された数しか現れなかったのである。


 とは言え、戦力差は歴然といった感じだった。人形達が、押し寄せて来る中、私は【魔方陣の盾(マジックスクエアガード)】を、階段のように宙に展開させると、私はその上に飛び乗り、そのまま人形達の頭上へと、避難する形を取った。


 流石の私でも、想定外だったのだ。メリアと一対一で戦うならまだしも、まさか複数の人形達が相手なので、いずれ交戦していても、やがて私の体力が先に尽きるのがオチだったのだ。


 そんな私が頭上で、避難した中メリアは私に言うなり、また魔法を唱え出した。


 「口ほどにもないわね。 私が降りさせてあげるわ。 ━━【猛毒針(ポイズンニードル)】」


 突如、下に居る人形達が一斉に口を開けるや、私目掛けて無数の針が飛んできたのである。

 私は「━━クッ」と言った様子で、その場から飛び降り、相手の針を交わすと、すかさず両腕を上に伸ばし始め、同時に鎖を出し丸めると、大きな鎖の玉をつくりあげた。


 これは、以前クランがやった技の一つだった。私はそれを先程の魔方陣目掛けて、叩き付けた。

 すると、地面は抉れ見事に魔方陣を壊したのであった。


 これには、メリアも驚いた様子を見せていた。完全に逆手を取られたようだった。


 「━━流石に、私もタダではやられっぱなしになる訳にもいかないからな」


 と、煽るような様子で口を開く。それから、メリアが若干手の動きを止める中、私はそのチャンスを逃す事なく、他の魔方陣を壊し始めた。

 一瞬の隙を与えてしまったメリアは、私の行動を止めるべく、魔法を唱え始めた。


 「━━【猛毒の煙(ポイズンスモーク)】!!」


 すると、メリアの回りから煙りが漂わせてきたのである。私は、距離を置くと立ち上る煙りを見ていた。これにより、私も迂闊に近寄る事が出来なくなってしまったのだ。

 だが、その煙りは次第に広がりつついた。このままだと、いずれその煙りに巻き込んでしまうので、私は先程の鎖で丸めた玉を、流れる煙りの手前で思いっきり、地面を叩き付けたのである。


 ━━その煙りは、叩き付けた爆風により、晴れ渡った。咄嗟の行動で、どうにか押さえたが、メリアとの距離を大分開けてしまった。

 そして、立ち上った煙りの中から、メリアの姿が現れる始めた。よく見ると、メリアの表情が若干ニヤ付いた様子だった。


 私は、メリアの表情を見るなり、何かを悟ったのである。だが、私は気づくのが遅かった。

 そう、先程まで私は、人形と戦っていたのだ。そして、迂闊にも私の後ろには、無数の人形達が居たのである。


 その人形達は、私の背後を取るなり、一斉に襲いかかって来ていたのだった。

 それに、気づいたまではよかったのだが、身体はすかさず動く事が出来なかった。


 私の脳裏に過ったのは「死んだ……」と言う言葉だった。私は、斬られる直前で、反射的に目を瞑ってしまったのである。


 ━━そして「ガキーン」と物凄い音が響き渡った。

 だが、暫くして私が斬られた感覚がなかったのだ。どうやら、その思考は私の思い過ごしだったようだ。

 そして、閉じた瞼を開くと目の前の光景に、私は驚いた。


 なんと、私の目の前には、クランが居たのだ。よく見ると、鎖で凪ぎ払ったような後と、クランが人形達の攻撃を、短剣で防いでいたのである。

 すると、クランが私の方を振り返ると、目が合うなり、こう言ってきた。


 「━━マスター。 ただいま」

【悪魔女】

メリア=ヴィリアヌ=フィオーレ

生年月日:12月26日

推定年齢:16歳

性別:♀

身長:154.2cm

体重:43.9kg


人形を操りし錬金魔術師の魔女。

色欲のコアの一部"蠍"を所持している。この蠍の力を使う事により、猛毒を主にメインとした攻撃を得意とする。

メリアは自分の人形を武装する事で蠍の形をつくりあげ更に強大な兵器へと変える。

だが、本来のコアの性能とは違い悪魔と契約した事により、更に紫色のドレスへと衣装までもが変わる。

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