第二十九話 人形を操りし魔女
「━━ゲホッ、ゲホッ……」
壁から砂煙を漂わせながら、私は出て来た。余りにも、砂煙が舞うので、手を払いながら咳き込んでいた。
すると、何処からか少女と思われる声が聞こえてきたのである。
砂煙が止むと同時に、状況が一変した。無数の人形達が、色んな武器を構えて襲いかかっていたのだ。
私はそれに気付くと、咄嗟にしゃがみ込み、まだ手に展開されていた魔方陣を地面に付けた。
そして次の瞬間、地面から無数の鎖が真っ直ぐに、飛び出てきたのである。
すると、襲ってきた人形達が、私顔すれすれに剣先が向けれ、突如として動きが止まったのである。
その人形達は、先程の鎖に絡み付いて身動きが取れなかったのだ。私は間一髪といったところで、殺られずに済んだ。
それから、私は絡み付いた人形達を巻き付けると、ギシギシと音を立て始めた。
そして、私は両手で鎖を掴むと、そのまま勢いよく引いた。すると、その人形達が鎖に無理矢理縛られるや、圧迫されて粉々に砕け散ったのだった。
「━━はぁ。 全く、不意討ちとは酷いな……」
と言いい起き上がると、その少女の方を向いた。すると、その少女は眉を潜めると、こう言ってきた。
「あら、残念━━このまま、死ねばよかったのに……」
と、何とも言葉の悪い振る舞いの少女であった。長い紫髪に、瞳はアンバーの色をしている。それに、衣装は黒く何処か魔女らしからぬ存在をただ寄せていた。
その少女は、更にこんな質問を私にしてきた。
「━━あなたに、質問するのも不本意だけども、その魔法どうしたのかしら?」
「奇遇だな。 その言葉、そっくりそのままお返しするよ」
すると、その少女の眼光が鋭くなった。何処か気に触ったようだった。その少女は、私にこう言ってきた。
「━━あなたは私が折角、質問してあげてるのに、それを質問として返す、言葉のわからないブタなのかしら?」
「生憎だが、そんなブタの言葉で向きになるような、頭の中がお花畑にでもなっているのか?」
その少女の眉が、少しピクついた。少し間が空き暫くすると、その少女は呆れた様子で、こう言ってきた。
「もういいわ━━じゃあ、少し質問を変えましょう。 私と取り引きしないかしら?」
突然の交渉話しに、私は軽く驚いた様子で返した。
「━━取り引き? いったい何を取り引きするんだ?」
すると、その少女は軽く「フフフ」と笑うと、私にこう言ってきた。
「決まってるじゃない。 あなたと一緒に居る子よ」
私は、思わず背筋がゾッとした。それは、彼女から生みださられた恐怖心だった。私は、冷や汗を滲ませながらも、こう返した。
「━━もし仮に、クランを渡すとして、私には何があるんだ?」
「そうね━━あなたに、この魔法の情報をあげるわ」
私は、眉を歪ませていた。私の脳裏ではクランに対し、情報一つではどうみても釣りに合わと思っていたからだ。そして、口先に私はこう言った。
「クランに対し、情報だけだと理に合わないな」
すると、その少女はその言葉に過ちがあるかのように、言い返してきた。
「本当に、合わないと思っているのかしら? あなたは、私のお屋敷を壊した挙げ句、私の人形やものにまで手をかけているのよ? それを私が、あの子一人で許してあげるって言ってるのだがら、優しいと思わない?」
確かにそうだった。彼女が言うように私は、無断で屋敷に入り、無差別に壊してしまっているのだ。本来であれば、こんな身勝手な事は許されない事である。
だが、彼女もまた其れなりの罪を犯しているのだ。と、私が少し間を空けていると、その少女は続けてこう言う。
「━━質問次いでに、少し教えてあげるわ。 元々、あの子は私のものよ? あなたは、私のものを勝手に盗んだ泥棒さんなの。 わかったかしら?」
その少女は、少し苛立ちを見せていた。でも、そうなるとクランを囚らえ、監禁していた人物がこの少女となるのだった。
私は、それを思うと益々渡す気を無くした。そもそも、端から渡す積りはなかった。少しでも、情報が入るか相手を揺さぶっていたのだ。
「━━さっきの言葉で、渡す気が無くした。 お前に、クランは渡さない」
「そう━━それは残念ね……」
と、その少女は眉を潜めるて言う。すると、その後に続けてこう語ってきた。
「でも、本当に渡す気がないのなら、あなたを殺すまでの事よ」
そう言うと、その少女の背後から黒い渦が出現し始めたのである。そして、その中から二体の木で作られた人形が姿を現したのだった。
よく見ると、その人形の首には、ペンダントのようなものを身に付けていた。
私は、そのペンダントに見覚えがあった。それは、雑貨屋のエリックが見せてくれた写真と同じペンダントだったからである。
私は、思わず口が溢れた。
「━━その人形は……」
それを見かねた、その少女はこう言った。
「━━ああ、これ? 私の傑作品よ」
「そうじゃない! その人形はどうしたかと言っている!」
私は、少し向きになる形で言うと、彼女は何やらニヤニヤと浮かべながら言った。
「あれ? 言わなかったかしら━━この人形達、元は人間なのよ?」
私は、その言葉を聞いた途端、色んな感情が溢れそうになった。私は、どうにか冷静さを保ちながらも、こう返した。
「━━お前は、いったい何者なんだ?」
すると、その少女は私に答える形で、こう言った。
「いいわ━━教えてあげる。 私はね、メリア=ヴィリアヌ=フィオーレ。 人形を操りし錬金魔術師の魔女よ」
先程までの空気が一変し、殺気が漂わせていた。
メリア=ヴィリアヌ=フィオーレ
生年月日:12月26日
推定年齢:16歳
性別:♀
身長:154.2cm
体重:43.9kg
人形を操りし錬金魔術師の魔女。
長い紫髪に、瞳はアンバーの色をしている。衣装は黒く何処か魔女らしからぬ存在を漂わせている。




