第二十三話 二人の気持ち
━━そして、私はその場で少しよろけながらも立ち上がる。何故か、クランはくっ付いたまま離れようとはしなかった。
クランの体重が、そのままのし掛かる。よっぽど、心配していたらしい。
けど、そろそろ重たく感じてきたので、クランを退かそうとした。だが、クランは私に抵抗し、しっかりと抱き締められ、離れる気は更々なかった。
私は、ため息混じりに、その重たい足で一先ず、敵の元へと歩き出した。すると、クランは私が歩くのを感じてか、私から離れると、同時にこう言う。
「━━もう、動いて大丈夫?」
私は「ああ……」とだけ言うと、クランは何やら私の前に立ちはだかるや、そのまま体勢を低くさせ、私のお腹をじっと見詰めた。
すると、突然クランは私の開いたお臍を、親指で「ツン」とつついたのである。
私は訳のわからないまま「━━ッ」と、電流が走る感覚がし、そのまま腰まで響く。と、私は腰が抜けたようにその場にしゃがみ込んだ。
そして、クランが私にこう言った。
「━━まだ、動いたら駄目」
お前は私の母かと、一瞬言おうかと思ったけど、あれだけ危険を犯して、クランを心配させてしまっている事もあり躊躇してしまった。
だが、私もこんなところにずっと居る訳にもいかない。それに、衣服に血が付着している事もあり、血を落とせる場所も見つけなければならなかった。そして、何よりも私達を襲撃してきた、あの敵の存在である。
━━そして、この場所は……
私は再び立ち上がり、頭を巡らせ考え始めた。その時、またもお臍から電流が走る感覚がした。恐る恐る顔を下に向けると、矢張クランだった。
クランは、どうして私の邪魔をするようだった。よく見ると、クランの頬が膨れ上がり、ご機嫌斜めな様子だった。
すると、突然クランが私を押し倒したのである。地面に落ちる直前で、クランが鎖を私に巻き付かせ、地面との衝突は避けた。
そして、ゆっくりと地面に下ろされると、クランが私を跨がったまま、顔を近付けさせてきた。
私は、この光景に見覚えがあった。次に何をされるのかも、おおよそ検討が付いていた。この、身動きの取れない状況で、私は思わず目を瞑ってしまった。
やられると、思った次の瞬間、今までとは違う感覚に見舞わされた。私は、思わず「━━んくッ」と変な声が漏れるも、何とか声を出さずに堪えていた。
そして、私は恐る恐るクランの方を見る。すると、そこにはクランが私のお臍を舌を使って舐めていたのだ。
私は、第二手がくる前にクランを辞めさせようとしたが、それは既に遅かった。
「━━いや……ちょっ、まっ」
私は、つい焦り口が思うように言えなかった。そんな事はお構い無しのクランは、ひたすらに舌でお臍を舐めてくる。
私は、つい焦り口が思うように言えなかった。そんな事はお構い無しのクランは、ひたすらに舌でお臍を舐めてくる。
全体に、電流が流れる感覚に見舞わされ「ビクン」と、所々でビク付かせていた。何とも言えなかったこの感覚は、擽られる感覚と、電流が走る感覚とが入れ混じり、頭の中では混乱が生じていた。
これだったら、まだキスをされた方が増しだった。そう思える程に、今のこの状況は苦痛になっていた。
次第に、私の息も荒くなり、意識もボーとなってきた。私はされるがまま、クランにお臍を舐め回され続けられた。
━━そして、ようやく終わった。私は息を荒く上げながら、ぐったりとしていた。
クランは思わず「あっ……」と声が漏れた。こっちに集中し過ぎて、完全にマスターの事までは考えていなかったようだ。
クランは、口に付いた唾液を脱ぎとり、マスターの方を見詰め始めてきた。どうやら、怒られる覚悟で、少し怯えた様子だった。
だが私は、もうクランに抵抗する気力も、怒れる気力もなかった。
取り敢えず、私はクランの言う通り、私の傷が癒えるまでは、おとなしく此処に待機する事にした。
一先ず、矢張クランには、何かしらの罰を与えてやらないと、私も気が済まなかった。
というのも、クランは此処最近、色々やり過ぎてしまう事がただあった。私は、クランにどんな罰を与えたら、おとなしくなるのだろうと考え始めた。
そして、私はこういうのには、疎かったので秒で考える事を辞めた。私は、パッと思い付いた事で、クランには反省して貰おうと、こう言った。
「クラン、罰として膝枕の刑に処す!」
しかし、迂闊だった。何とまさか"膝枕"という意味がわかっていなかったのである。クランは、首を傾げて「ひざまくら?」と疑問に復唱していた。
私は、面倒くさながらも"膝枕"というものを教えてあげた。すると、クランはぎこちない体勢で、地面に星座させられ、その上に私が横になり頭を乗せていた。
少し、膝をプルプルと震えさせていた。どうやら、今まで星座をした事がなかったようだ。
(━━あれ? もしかして、結構クランにとっては罰になってるのか?)
━━暫くして、クランの膝の震えも収まり、どうやら慣れたのかなと思わせた。だが、それは間違いだった。クランが涙目で私にこう言ってきた。
「ますたぁ~ 足がヒリヒリする……」
私は、そんなクランの弱々しい声聞いてか、私は、頭を上げクランを見た。
(━━まぁ、クランも反省しているみたいだし許すか)
そう思い私は、クランに罰を与えるのを辞めた。そして、クランは足を崩そうと、足を動かした瞬間、それは何とも言えない声を上げ、その場で力無く倒れた。
「━━はぁわぁ~」
私は、その何とも言えなかった声を聞き、笑いそうになったが、何とか堪えた。折角、クランが星座を頑張っていたのに、笑う訳にはいかなかった。そして、私は少し心配してクランに声をかける。
「クラン━━大丈夫か?」
「━━だいじょ……ばない……」
「大丈夫そうだな」
私は、軽い口調でクランに返した。そして、倒れ込みクランの足を、親指でつついてあげた。すると、またもクランの口から何とも言えない声が発しられた。
「━━はうぅ」
流石に、今の声は反則である。まさか、クランの口からこんな声が出てくるとは思ってもみなかったのだ。
私は、興味本位で更につついた。すると、クランは身体を「ビクン」とさせた。
何とも言えない光景だった。さっきまで、クランが私を弄っていたのに今度は、私がクランを弄っている。
私は、クランの反応が面白かったので、ひたすらに「えい……えい……」と、つつき続けていた。
そろそろ、クランも限界になってきたのか、私に弱々しい口調でこう言った。
「━━ま、ますたぁ。 もう……ゆるしてぇ……」
私は「あっ……」とさせた様子で、流石にやり過ぎてしまった。クランが俯せのまま、倒れ込んで頭を腕に伏せていた。
クランは、疲れきった様子で「ふぅ……ふぅ……」と息を切らしていた。
「す、すまない━━大丈夫か?」
流石に、クランの状況を見て、私はクランに言う。すると、クランは黙りだった。
私は、そんな黙り込むクランを見て、申し訳程度に、頭を撫でた。
すると、撫でた途端、クランは急に身体を縮め込んだ。そして、暫くすると、腕で伏せていた顔をチラッと私に見せてきた。
何か、言ってくるのかと思いきや、また暫くして、クランは顔を伏せたのだった。




