【一節】第一話 気がつくと少女になっていた
━━そこは、薄暗く少し肌寒くて雫が滴る音が響き渡った。
私は目が覚めた。
「此処は…」
意識が朦朧とする中、今までの事を振り返った。
「確か私は━━三大王に捕まって異世界とやらに飛ばされたんだったか…」
意識が次第に回復してきたところで、ようやく手足を動かそうとした時。
私の手足は何やら手錠のようなもので縛られていた。
「なッ、身動きがとれないだと…!?」
まだ目隠しは外れていないので辺りは見渡せれない。
そして事の流れを振り返ったが、手錠のようなもので縛られた感覚はなかったから、これは第三者によるものかと疑問に思った。
だがしかし、異世界へ飛ばされたとするならば、私の今の状況はどうなってるのか、もし第三者が私を捕らえてきたとするならば……
嫌な予感がした。もし仮に私が意識を失っている間に、その第三者に囚われてしまったと言うならば、これは非常にまずい状況である。
━━と、そうこうしている間に生き物らしき気配を感じた。
何やらうめき声のようなものを聴覚へと入り込んでくる。次第に声は大きくなり、近付いて来る事がわかった。
━━そして、うめき声は止み少し間が出来た。
その時である、目に覆われていた目隠しが突然切り裂かれたのである。
私は身動きがとれないまま、恐る恐る頭を上げる。
視覚はまだ少しボヤけていたが、今目の前にいる生き物をうっすらだが認識した。巨大な緑色とした立ち前に左手には何やら木材で出来たような物を持っている。
私は悟ったのである。もしこの世界が異世界であり、今目の前に立っているのが、オークであるのであらば、今の私の立場は非常に最悪なのである。
だが少し疑問も残る。オークとは本来補食するか、その場で殺すはずなのに何故私を捕らえてまで生かしているのか。
━━と、考えている暇はなかった。
突如として私の頭を鷲掴みにして、顔を近付けてきた。
何やら色々見ているらしい。私の外見はそんなに良いものでもない気もするのだが……
でも、このまま黙ってやられている訳にもいかないので、魔法で殺す事にした。
私の右目には、七つの大罪と呼ばれる魔女の魂をコアとし目に埋め込める事で、それを自らの力に変えて強力な魔法を使う事が出来るのである。
「一先ず、これで死んで頂こう。━━【闇の影】」
…しかし、何も起こらない。
ただ、言葉が響いただけである。
困惑したオークが荒立て始めた。
これはまずいと思い考えるよりも先に倒す事を優先した。
「じゃこれならどうだ!━━【光の槍】」
何も起こらない。
オークは左手に持っていた棍棒のようなものを降り始めた。
「ヤバい、ヤバい、ヤバい!何とかしないと…」
他にも使えそうな魔法を考えた。流れからして大きな魔法も使えないだろう。
「ならば詠唱魔法でならどうだ!━━光を照らすその影には闇をも食らう。光射す魔性の刄。【光の刄】」
これも何も起こらない。
そして、オークの攻撃に間に合わず、目を瞑り込んだ。
━━が、その攻撃は直撃したかに思いきや、パリンとガラスが割れるような音がして、その攻撃を防いだのである。
その音に気づき目を開けるとそこには、バランスを崩したオークの姿と、私の頭上の辺りに魔方陣らしきものが、ガラスの破片のように落下していた。
回り見渡したが助けられた訳でもないので、これは恐らく私が出したものであろうと推測した。
と、私は何かを閃き意識を集中させ魔方陣を思い描いた。
━━その描かせた魔方陣が、私の前に姿を表した。
これを物体化させる。そして、魔方陣を物体化させて高速で回させた。これを体勢を崩したオーク目掛けて掛け声と同時に飛ばした!
「いっけー!!」
その魔方陣は勢いよくオーク目掛けて飛んでいき、そのまま真っ二つになった。
どうにかして、この場は何とかなったのである。
気づくと、いつに間にか目も冴えていた。
━━そして、手足を手錠で拘束されている金具を、さっきの魔方陣を駆使して破壊した。
バタリと倒れ込んだ。
「はぁ、何で急に魔法が使えなくなったんだろう…。」
ため息を溢し、事の出来事を振り返り考えて、自分の手を眺めていた。
「…にしても、自分の手小さいし細いし綺麗だな」
と、ボソッと呟いた。
「翌々、思えば何だか声も高くなった気もする」
一度に色々出来事が起きたせいで声の事すらも気にはしていなかったのである。そして何故か無性に胸騒ぎを覚えた。
何だかとても嫌な予感がし、冷や汗も掻き始めてきた。
まさかな、と思い自分の身体を見てみた。
それが、そのまさかなのであった。
━━この小さな身体付き、少し肌白く、決め付けに髪も長かった事にようやく気づいた。
何度も何度も手で身体を触っても、何も変わらなかった。見たまんまなのである。おまけに貧相な胸に加え、大事な部分もなかった。
「アハ、アハハ、アハハハ~」
軽く苦笑いしながら、これが悪い悪夢で嘘なのであれば覚めて欲しいと願ったが、今あるこれは見たまま現実なのである。
「てか、何で全裸なんだよ!」
腹いせに、さっき倒したオークに向かって、転がっていた石をぶつけてやった。
「あの変態オークめ。私が女の姿をしていたから生かしていたわけか…」
━━取り敢えず、座りながら一連を整理し始める事にした。
「先ず、今の状況化では私は異世界に飛ばされてこっちに来た。すると何らかの影響で女になった。恐らく、気絶していて女になった私をさっきのオークが見つけてお持ち帰りした。取り敢えず、そこまでは何となくだが検討はついた。」
一先ずの経緯の流れは仮説段階だが、予想し出した。
「問題は次だな。何故か私の魔法が使えなくなっていた。」
これにも色々仮説は考えられる案はいくつか浮かんできたが、あくまでも仮説なので本当なのかは明白にならなかった。
━━例えば、魂をコアとして変換して別の擬態となる者を対象として意識そのものを移し返る…
現状では不可能ではない。実際に七つの大罪とされる魔女等の魂をコアにして、それを自らの力としているからである。
でも既に死んでいる者の意思をコアとして、そこに宿す事は不可能である。あくあでコアは力を宿すものに過ぎない。
「まぁ、実際生きたままコアにして別の擬態となるものに宿すやり方は試した事もないから解らないけど、取り敢えず魔法が使えないのは不便だ…」
━━と、そうこう考えていると、フと何かを思い当たったのか頭を過らせた。
「そう言えば、まだこの女の姿をした私の顔を拝めていなかったな」
そう言い、私は魔方陣を展開してガラスが反射する要領で見る事にした。
そして、言葉を失う。
なんとも可愛らしい女の子の姿が映っていたのである。
「こ、これが私か…」
自分でも驚いた様子で、顔をじっくり眺めていた。
長くてしとやかな黒髪に、瞳は綺麗なアイオライトであった。身長は低くて精々140cmくらいで結構身軽な感じである。
そして、私は肝心な事に気づく。
「あ、あれ?私の右目に魔方陣が刻み込まれてない!?」
この時同時に、こう悟った。その目に宿したコアがなかったせいで魔法が出せなかったのではないかと。
「ま、待てよ?まさか…」
焦った様子で新たに魔方陣展開させた。
すると、その展開した魔方陣が地面から浮き出て、そこから複数の武器が出現した。
「武器は何とか出せた。問題は…」
何をこうも焦っているかというと、七つの大罪のコアをベースとして、武器も連動して作られているのである。その為、コアがないと本来の武器の力も発揮しないので、ただのガラクタになるのである。
そして、大きくため息をついた。
その目にはハイライトが無くなり、とてもショックだったのか、体操座りして踞った。
プロフィール
名前:黒神 白亜
生年月日:8月9日
推定年齢:210歳(外見年齢:21歳)
性別:♂
身長:181cm
体重:65.5kg
下界に住む死神(母)と魔界に住む悪魔(父)との間柄に産まれてきたハーフ。両親とは決別し父の元へ引き取られた。
七つの大罪とされる魔女を狩り、その魂をコアとして自らの力に変えて魔法を使う。
七つのコアは右目に宿しており、右目には魔方陣が描かれている。
魔法だけでは心細いとして、魔法と合わせて七つの武器を所持している。




