第十七話 亜人種の正体
━━狼男がクランを抱え込んでいると、突然クランは嫌そうにジタバタさせて「離して」と狼男に向かって言う。それを聞いた狼男は、クランを地面に足を着け下ろしてあげた。
すると、少しよろけながらも私の元へ向かってくる。そんなクランを見てか私も駆け寄る。そして、クランは私に抱き付いた。
クランは私に「負けた」と悔しそうに言ってきた。私はクランの頭を撫でながらこう言った。
「まぁ、経験の違いだったから仕方ない。 クランは頑張ったよ」
私が普段言わなそうな口でクランを慰めた。すると、狼男が横目に、したっぱ達にこう言ったのである。
「此処が、俺の縄張りだと知ってて入って来たのか?」
その眼光は鋭く、今にもしたっぱ達を殺しそうな目付きだった。したっぱ達は狼男を見るなりとても怯えた様子だった。更に、狼男は続けてこう言う。
「お前等は、まだ幼い子供にしかも女、相手に手出していたぶってたのかァ?」
益々、狼男の眼光が鋭くなり、凄まじい程の殺気を感じていた。私も、狼男に身を寄せながら、明らかに芝居がかった口調で言った。
「わ、私は止めようとしたんです。 でも、あいつ等に押さえ込まれて、私身動きが出来なかった」
したっぱ達に指を指し「グスン」と涙目になりながら、見事な迫真の演技をしてみせた。そして、したっぱ達は私を見るなり「あいつ俺等を売りやがった!」みたいな表情を浮かべていた。私はそれを見て、テヘペロとさせた。
すると、狼男は「ああん?」とさせた様子で今度は、私を間近で見つめてきたのである。
(怖い怖い怖い怖い。 顔ちっか。 目付きこっわ。 さ、流石にバレたか━━)
と冷や汗を滴ながら、私は狼男に目線を反らす。すると、狼男の口からこう出たのだ。
「そうだったのか。 それは怖い思いをさせたな」
意外にも、私の言った言葉が通ったようで、完全に真に受けているようだった。それからも、したっぱ達が正座させられ、約一時間に渡る説教をさせられていた。私達は、狼男の隣でただただ説教をさせられている、したっぱ達をずっと見てるだけだった。
「━━といういう訳でだ。 俺の敷地内に無断で侵入した事と、客人に手を出した罰として、お前等は少なくとも2週間は俺の雑用に付き合って貰うからな。 覚悟しておけ。」
と狼男は黙々と語っていた。私は少し、客人というワードに違和感を感じていたが、余り深くは考えなかった。
「よし! お前等、もう帰っていいぞ。 ああ。 そこで倒れてるボスもちゃんと送ってやれよ。 傷は浅い、と思うが一応見て貰え」
この狼男は、厳しい割りに意外と気が回る、とても優しい狼男の印象なんだと私は思っていた。ようやくして、この長い説教からも解放され、したっぱ達も解散したのである。
私もようやく潔く靴屋に向けて歩き出した。すると突然、狼男は私に言ってきた。
「ああ。 少し待て!」
と狼男は私達を止めた。すると、変貌していた狼男がみるみると人間の姿に変わっていたのである。私はこれには、驚いた様子で見ていた。そして、その狼男の正体が明らかとなった。そう、その正体はクラリックだったのだ。
「お、おじさん!?」
私は、思わず声を上げて出してしまった。そして、私達はクラリックの正体を知りながらも、一緒に靴屋に向かうのであった。
◇◆◇◆◇
「━━いや、まさかおじさんが亜人種だったとは知らなかったな。 でも、何で路地裏に私達が交戦してたのわかったんだ?」
私は、改めてクラリックが亜人種である事を驚き感銘を受けながらも、クラリックに質問をした。
すると、クラリックはポケットから煙草を出し、咥えテーブルにあるマッチで火を付けた。そして、一服置いた後話をした。
「まぁ、あれだけ騒がれちゃ気づくだろう」
「確かに、それもそうだな」
と私は返した。そして早速、本題の昨日私が頼んだものについて質問をした。
「そう言えば、もう出来てるのか?」
すると、クラリックは私を見るに何処か意外そうだったのだろう、こう返してきた。
「何だ? もっと俺に聞きたい事があるのかと思っていたが…」
「まぁ気にならなくもないけど、別に人の事情なんて聞いても仕方ないしな」
私の言葉にクラリックの眉がピクりと動いた。そして、こんな事を言う。
「お前は、つくづく変わった人みたいだな」
「その台詞そのまま、そっくり返すよ。 おじさんも見かけによらず優しいしな」
すると、クラリックは鼻で笑っていた。それから、クラリックは立ち上がり、私達にこう言い席を外した。
「少し待ってな」
少しして、クラリックがあるものを手に抱え戻ってきた。その手に持っているのが、昨日私が頼んで置いた靴だったのである。
「ホラよ。 俺なりにリスペクトしてつくらせて貰った」
「おお。 でも、もう少しかかるのかと思ってた」
「あれから、ずっとつくってたからな」
「え? じゃ寝ずにずっとつくってたのか?」
私は、驚きながらも質問した。すると、クラリックは「そうだが」と返した。私は、心配そうにクラリックを見つめた。クラリックは私の視線に動揺したのか、こう言ってきた。
「いや、こんな小さな子から頼まれたらな、早くつくってやりたくなって、つい没頭してしまった」
この人は、何処までお人好しな狼なんだと思い感銘を受けながら、私はクラリックの手を握り「ありがとう」と言い、神を崇めるような事をしていた。
すると、クラリックはこういうのに慣れてなかったのか、とても動揺した様子で言う。
「く、靴持って来てやったんだから、早く履かんか」
明らかに、口調もおかしくなっていて、私は笑いを堪えていた。一先ず、クラリックをからかうのも悪いので私とクランは靴を履く事にした。
クランの靴は、茶色のロングブーツだった。白いローブに決め細かな青い刺繍で短いスカートに茶色のロングブーツ。全てにおいて可愛く引き立っていた。
私は、黒色のフォーマルシューズだった。白いシャツに黒のショートパンツで、黒のコートと黒色のフォーマルシューズでとても悪くない組み合わせだった。
クランはとても喜んでいる様子だったがしかし、私は結局女性ものになるんだなと、この私の姿を認めざる追えなかった。
一先ず、これで全ての装備は揃ったので、あのボロボロな衣装を着ていた時と比べたら、何も文句が言えなかった。
そして、私とクランはクラリックに「ありがとう」と交わして、店を出ようとした時、クラリックが「おい、待て」と私達を止めた。すると、クラリックは続けてこう言う。
「そのままだと、足が擦れて痛くなるぞ。 これを持ってけ」
と言って私達にあるものを投げ渡した。なんとそれは、タイツだったのである。すると、私はタイツを見てクラリックにこう言った。
「いや、私はこのままでいい━━」
と返品しようとして、クラリックの方を見ると「ああん?」と言った様子でこちらを鋭い眼光で見ていた。私は流石にこの空気を壊さまいと、こう言い直した。
「ああ。 やっぱ、有り難く使わせて頂こうかな。 おじさん、ありがとう」
と震え声で言うと、クランも続けて「ありがとう」と言った。
その後、私とクランはタイツを履いたのである。
「そう言えば、金払わなくていいのか?」
と私は、クラリックに質問した。すると、クラリックはこう返答した。
「タダでやるよ。 短い時間だったが、お前達と居て楽しかったしな」
「そうなのか…」
私は、その後に無神経な事に、つい口が滑ったようにこう言った。
「おじさんって、ロリコンなのか?」
すると、自分でも思わず何言ってるんだとした様子で、冷や汗を掻き始めた。流石に怒られると思い構えていたが、こう返ってきた。
「ロリコン? ってなんだ?」
私はその言葉を聞いて、少しホッとした。そして、私はこう返して店を出ていったのである。
「おじさんが、私達の事が好きなの?って意味だよ」
━━そして、さっきまで話していて賑わっていたこの店も静まり返り、そこにはただクラリックが呆然と突っ立っていた。
すると、クラリックの表情が少し和らいだ気がした。
【亜人種】
名前:クラリック=マーケン=ルビド(くらりっく=まーけん=るびど)
生年月日:3月21日
推定年齢:38歳
性別:♂
身長:172cm (+20cmくらい)
体重:68.8kg (+16kgくらい)
亜人種の獣人。白銀の毛並みで、瞳の色はシルバー色の狼男である。仁王立ちしている。
特徴的なのは矢張、グラサンであろう。狼男になってもグラサンを外さないようである。
基本的には爪を駆使して攻撃をするようである。勿論、牙も使う。




