第十六話 謎の白銀の狼男
━━そして、靴屋を目指して歩いて居た私達だったのだが、突如、目の前にはとある人等に立ちはだかれていた。
それは昨日、路地裏で絡まれた時の連中達だったのだ。しかも、今度は大勢の仲間を呼んで、路地裏に屯って私達が来るのを待ち構えていたのである。
私は、ただただ面倒くさそうな表情を浮かべながら、その人等を見ていた。何故か、クランは前に出て、やる気満々な様子で構えている。
そもそも私は嫌な予感はしていて、路地裏を避けようと遠回りして行くはずだったのだが、クランがどうしてもこっちに通りたいらしく、私の言う事を聞かなかったのである。私は渋々ながら、クランを先頭に路地裏へと足を進めていったのであった。
すると、案の定そこには昨日の人等が待ち構えていたのだ。
「あぁ。 昨日より面倒くさくなってるな。 私、見学してもいいかな?」
と私は、クランに問いかけた。正直、余り無意味な戦闘は避けたかったのである。すると、クランは「コクリ」だけ頷いた。私はクランを遠目に距離を置き、見学する事となった。
「━━昨日はよくもやってくれたな。 ちゃんと落とし前は返させて貰うぜ。 ボス、オナシャース!」
したっぱらしき人がそう言うと、後ろから難いの大きな筋肉質な巨男が現れたのだ。その巨男はクランを見てこう言った。
「なんだ。 ただのチビガキじゃねーか」
「甘く見ない方がいいッスよ。 現に俺等があのガキ一人にやられたんで」
そんな事を言いながら構え出した。すると、いきなりクランが鎖を袖から出し、その巨男目掛けて飛ばした。がしかし、巨男も一筋縄にはいかなかった。なんとクランが飛ばした鎖を意図も簡単に手で掴んだのだ。
「何だ? この飛び道具。 おもちゃか?」
そんな挑発を言いながら、そのまま掴んだ鎖を力強く握り締め砕いたのである。そして、クランの先手必勝とはならなかった。
「次は俺の番だな」
そう言うと、クラン目掛けて走り出した。そして、そのままタックルしたのである。クランは上にジャンプして交わし、頭上から数本の鎖を巨男に向かって身体を巻き付けた。そして、そのまま巨男を投げ飛ばした━━と思ったのだが、巨男はびくとも持ち上がらず、ただ鎖がピーンと跳ねていた。クランはその巨男に力で負け逆に引かれそうにグラついた。
「これだけか?」
と巨男は言いうと、「ふーん」と巨男に巻き付いていた鎖をバラバラに粉砕させたのである。これには、クランも「クッ」と言った様子だった。
それからも、クランと巨男の攻防は続いていた。
「オラオラ。 どうしたァ? さっきの威勢がないぞ」
「━━ッ。」
完全にクランが押されていて、クランは巨男の攻撃を鎖を駆使して、交わすので手一杯だった。
完全にクランが押されていて、クランは巨男の攻撃を鎖を駆使して、交わすので手一杯だった。
「それにしても、お前等のボス強いな。 あのクランがあそこまで押されてるとはな」
と私は、感心しながら、敵であるしたっぱの隣に顔を出していた。それに気づいたしたっぱ達は、突然目の前に現れた私に驚いていた。
そんな私にしたっぱはこう言う。
「お、お前こっちに何しに来た?」
「ああ。 私か? いや、そこでただ見てても詰まらなかったから、退屈凌ぎにお前等のところに遊びに来た」
したっぱ達は、私の言っている意味や行動がわからないといった様子で見ていた。すると、一人のしたっぱが私にこう言ってきた。
「お前、俺等とやり合う気か?」
「別に暇だから付き合ってあげてもいいけど、その場合喧嘩じゃなくて殺し合いになるがいい?」
私は脅し次いでに、したっぱ達の方を向き言う。すると、したっぱ達は聞かなかった事にしたのか、少し後ろずさった。矢張、何でも言って見るものである。そもそも、私は端から戦う気がなかったのだ。
すると、したっぱの一人が私に不安そうに言ってきた。
「あのチビ大丈夫なのか? ずっと押されてるけど」
「うーん、どうだろ? 正直、キツいかもな。 クランは戦闘経験まだ浅いから慣れてないけど、お前等のボスは随分慣れた手つきな様子だからな。 このままじゃ、クランは負けるだろうな」
そんな性格的に私が分析して、色々口走っていたら周りのしたっぱ達は、私に偏見な目で見ていた。流石に思う事もあったのか、私にこんな事を言ってきた。
「お前、あのチビの仲間じゃないのか?」
「仲間か… まぁ、一応仲間ではあるのかな」
私の曖昧な解答に、周りのしたっぱ達はクランを見るなり哀れんでいた。
そんなやり取りをしている内にも、クランと巨男の戦いに進展があったようだ。さっきまで、優勢であった巨男の動きが鈍っていたのである。明らかに、巨男に疲れが出ていた。
「こんの。 さっきから、ちょこまかと…」
そして、巨男がクランにタックルを仕掛けた時、突然巨男が転倒したのである。よく見ると、巨男の足元に鎖が一本伸びていた。巨男は、これに躓き転倒したのだった。
その転倒をすかさずクランは、ジャンプし無数の鎖で大きく丸めたものを、巨男目掛けて振りかざしたのだ。
「これで終わり」
とクランは呟くと、その攻撃は見事頭にぶつかり、渾身の一振りが巨男に襲う。これには誰もが驚いていた。さっきまで、明らかにクランが押されていたのにもかかわらず、あの巨男を見事下したのである。
周りのしたっぱ達は、「ボス」という声があがっていて心配している様子だった。
━━と誰もがその倒れ込んだボスが、負けかと思っていた矢先の事だった。なんと、巨男が起き上がったのである。これには、したっぱ達は喜び、クランは驚いた様子だった。
すると、突然その巨男は胸を両手で叩き始めたのである。更に「ウオオオオオ」とまるで獣の如く吠え始めたのだ。すると、みるみると、先程の人間だった姿が徐々に獣の姿へと変貌していったのであった。
その姿は、まるでゴリラのようだった。どうやら、この巨男の正体は亜人種だったのだ。
そして、まだ戦いは終わりではなかったのである。
「ウオオオオオ」と雄叫びを上げ、胸を両手で叩いて己を奮い立たせていた。
すると、明らかに先程までの動きとは違っていた。猛スピードでクランに向かっていった。クランはすかさず、無数の鎖で壁をつくり上げた。が、その壁は意図も簡単に壊されてしまった。
そして、獣の姿となった巨男は、クランを片手で掴んだ。その手はクランみるみると握り締め始めたのである。すると、ミシミシと徐々に締め上げられていき、クランは「ああああ」と苦しそうな声を上げる。
流石に、このままではクランの命も危うかった。クランも握り締められては、手も足も出ない様子だった。
どうも、巨男は獣の姿になってから自我を保てていなかったようである。
「少し、まずいな」
と私は、あの巨男を止めさせるべく、魔方陣展開させ始めた。
するとそんな中、颯爽と猛スピードで巨男目掛けて、お腹を切り裂いたのである。あまりの一瞬の出来事だったので、目で追い付けないでいた。
「グオオオオ」と巨男は声を上げ、手で掴んでいたクランを離し、巨男はその場で倒れた込んだ。
巨男の手が離れた事により、クランも落ちるも、先程の巨男を切り裂いた人物がクランを抱え込んだのである。
私は、恐る恐るとその人物の姿を見ると、そこに移り込んだのは、狼男だった。
その狼男は白銀の姿な毛並みで、瞳はシルバー色で、何故だかグラサンをしていたのであった。
(使えない)呪文
【攻撃上昇呪文】
魔法や、詠唱魔法とは異なり、呪文とは術者によって定められたものに効力が及ぶ。
この呪文は、対象としたものの攻撃力を増幅させてくれる。
逆を言えば、増幅し過ぎると自我を保てなくなりやがて、崩壊させる事も不可能ではない。
まさに、呪文ならではの効力である。




