第十五話 風の噂
━━エリの店を後にした私とクランは、次にクラリックの店へ向かい街を歩いてた。
(しまったな。 どうせだったらあの時、靴屋の前に転移魔法描いとくべきだった。 また、あの路地裏に入らないといけないのか…)
というのも昨日、路地裏で悪そうな連中に絡まれたのだ。また待ち構えていない事を信じ、そう願いながら歩んだ。
(それにしても昨日は、自分の姿を隠すので手一杯だったから、街並みよく見ていなかったが、色んな店が並んでたんだな)
私は、観光気分で街並みを見ていた。
そんな中、街では奇妙な噂も流れているみたいだった。私は、微かに入ってくる立ち話を耳にしていた。
「そう言えば、街外れにあるあの教会付近で奇妙な人影見たって噂だぜ」
「そうなのか? こっちじゃ、とある村が一日にして壊滅したらしい」
どうも、この世界では、色んな事件何かが飛び交っているようであった。
━━それから、しばらくすると、看板に「ギルド」という文字が書かれてあった。こういうのがあると、本当に異世界に飛ばされて来たんだなと、私は改めて実感していた。折角なので、何か情報が得られるだろうと思い中へ入る事にした。
するとそのギルドの中は色んな装備を着ている人等で賑わっていた。前にはカウンターがあり、左側には沢山の貼り紙がされている。恐らく、クエスト等の任務が貼られているのだろう。右側では、開店してそんな時間も経っていないのに、早くから酒だろうか、小さな樽のジョッキに入っているものを飲んで顔を赤くしている人等もいた。
私は、貼り紙がされている場所に向かい、何があるのか色々見る事にした。
(ふーん。 やっぱり、どれも魔物退治ばかりだな)
貼り紙に書かれている内容を見てると、村や街の名前だろうか。まだ私の知らない名前もチラホラ書かれてあった。
すると、そんな私達を見てか、悪口だろうか。明らかに私達の事を言っている人等が居た。
「あいつ等、まだガキじゃね? ガキがこんな場所来るところじゃねぇぞ」
「誰だよ。 子供連れ込んできたやつ」
私は、別にクエストしに来ている訳でもなく、ただの情報収集で来ているので、回りからどう言われようとも無視していた。
(そうそう。 私はこんなギルドで毎日、便利屋みたいに人に言われた仕事を、ただただこなして資金を手に入れて生活してるような連中ではないのだ)
そう思いながら、回りの人等を軽蔑していると、何処からともなく後ろから「ギャー」とか「キャー」とかという叫び声みたいなのが響き渡っていた。
(そうそう。 ギルドの奴等はギャーとか騒いでた方がお似合いなんだよ。 …ぎゃあ?)
私は、独り言を心の中で呟いて、自分の世界に入っていて気づかなかったのだが、どうもさっきから後ろが騒がしい事に気づいたのである。私は嫌な予感もしつつも後ろを振り返った。
そこには、やっぱりクランが鎖を出して、悪口を言っていたであろう人等に向けて飛ばしていたのだ。数名は見事に溝内を食らい、その場で倒れ込んでいて、他はどうにか交わしていた。
「あわわわわわわ。 待て待て待て!」
嫌な予感は的中し、私は慌てながらクランを止めに入った。すると、クランの口からこんな言葉が出たのである。
「マスターを侮辱する奴は皆敵。殺す」
完全に殺意が出ていた。だけど、私はクランに注意をした。
「いいか? クラン、どんなに悪口を言われても、勝手に攻撃はするな。 後々、面倒な事になるから。 攻撃してもいいのは、相手から攻撃された時にしな」
一先ず、クランにそう言い聞かせた。よし、これで何事もなく終わってめでたし、めでたし。という訳もいかないのが現実であった。
「さっきは、よくもやってくれたな」
「このガキ許さん」
「良かったら、俺のパーティーに入らない?」
「何この子、小さいのに強い」
「その鎖どうやって出してるの?」
と言った言葉か飛び交い、一瞬にしてクランの回りには色んな人等で溢れ返ったのである。私はどうにか、人が溢れ返る前にクランから距離を置いていた。そして、クランは急に色んな人等から言われ若干、困惑気味になっていた。
「クラン。 これが面倒事になるということだ。 自分の罪に反省しなさい」
私はクランの方を見て敬礼し、そう残してカウンターに向かっていった。
そして、カウンター前まで来たのだが、私の背が思っていた他小さくて、カウンターに顔を出すのがやっとだった。
「こ、この。 何で、こんなカウンター高いんだよ。」
それも無理もない。本来であれば、こんな小さな子供が来るような場所ではないのだから、当然と言えば当然の作りではあったのだ。
それから私は、ムキになりつつも、仕方ないので隣にあった椅子を台代わりにして、立ち乗りカウンター前の女性に話し掛けた。
「あの一つ聞きたいんだけど、此処最近で変わった事とかあった? 例えば、別の場所で異変が起きたとか」
「いえ、そのような事は入って来てないと思われます」
嘘を言っている様子でもなく、仕事の案件だけでただ言っている訳でもなさそうだった。矢張、ただの噂に過ぎないのかもしれないと思った。私は続けて質問し出した。
「やっぱ、もう一つ聞きたいんだけど、世界地図って何処で買える?」
「地図ですか? それなら、路地裏を出て靴屋が見えるので、その隣にある雑貨屋さんで買えると思います」
どういう偶然だろうか、私が目的としていた靴屋の隣と聞かされ、私は驚いていた。それから、私は「どうも」とだけ添えて、その場を後にした。
一方、クランは未だに周りに囲まれ、色んな人等に質問攻めされたり、パーティーの勧誘に誘われてたり、野次を飛ばされてたりと、一人相手に光景が色々カオス状態であった。
よく見ると、クランはフードを深く被っていた。
(そろそろ、呼んであげないと可哀想だな。 でも、呼んだとしても、周りの声で、私の声掻き消されそうだけど、まぁ言ってみるか)
そう言いながらも、私はクランを呼んでみた。
「おーい。 クラン、行くぞー」
すると案の定、私の声は周りに掻き消されて、クランまで声が届いていなかったのである。更には、フードを被ってしまっている為、余計に届かなくなってしまっている。
(あぁ、どうしようかな。 ただの引き立て役のつもりで、クランに注意浴びせた行為が、まさかこんな事になるなんて予想外だったな。 別に、クラン呼んでも返事しないし一人で先行こう)
そう言い、私はクランを置いて先に行く事にした。
━━なんて事を思いながら、私はどうにかしてクランを、そこから出す方法を考え始めたのであった。
こんなところで、足止めされているのも馬鹿らしいので、ちゃっちゃと済ませる事にした。
私は【治癒回復】を、その群がってる人等に目掛けて唱えた。すると、一瞬「か、回復?」や「なんだこれ」と言った様子で、どよめきが響き渡る。
その隙に、私は【魔方陣の盾】をクランの頭上まで展開させ、そこまで飛び乗った。
「おーい。 クラン聞こえるか?」
私は、クランの頭上で呼ぶも聞こえていなかった。私はため息をしながら、そこから飛び降りクランの元へ降りた。
まぁ、この行動に気づく人等もいたようで、数名が私に気づく。一先ず、先にクランの無事を確かめる。
「おい。 大丈夫か?」
すると、クランは顔を埋めながら「コクリ」と頷いた。私はクランの無事を確認した事ですぐさま次の行動に移る。
私は右腕を真っ直ぐ伸ばした。そして、私は【閃光魔法】と唱えたのである。
すると、上げた右手から強い光が一瞬、射した。そこに居た人等は、その光に眩み手や腕なので光を隠した。
その隙に私は、クランを抱え込み【加速魔法】を唱え、上に飛ぶ。そして、先程クランの頭上で展開させていた魔方陣に手をついて、そのまま勢いよく押した。すると、人等で囲いになっている場所の外側に到着させた。
その後、私達は入り口の扉まで走り、外へ出たのであった。
「━━あぁ、疲れた。 たかがギルドに入って情報聞いてただけなのに、何でこんなところで魔法使わないといけないんだ」
私は疲れた様子で、文句を言っていた。それをクランのせいだと感じたのか、クランが反省した様子を見せて「ごめん」とだけ返した。
「ああ。 いや、クランを責めたんじゃなくてだな」
私に謝るクランを見かねて罪悪感を感じながらも、一先ず言い直した。
「クランは悪くないよ」
と言って、クランの頭を撫でる。
「さてと、情報も僅かながら集めたし、早く靴屋に行くぞ」
と私は、靴屋を目指して歩き出した。
(使えない)詠唱魔法
光を照らすその影には闇をも食らう。光射す魔性の刄━━【光の刄】
光で出来た刄の形をしたものを、標的に対し当てさせる魔法である。
光の結晶で織り成して構成されて出来ている。れを切ったり、粉砕させたりは出来ない。
これに触れたものは、光の集合体なので見事に貫通して行き、貫通したものは真っ二つになる事でしょう。




