第十四話 私の衣装
━━そんな寝静まった夜の事、私は目を覚ました。私は起き上がると、横にはクランが眠っていた。なるべく音を立てず、クランを起こさないように、ベッドから出た。
(んー。 やっぱベッドだとどうも寝付けないな)
私は背を伸ばし、独り言を心の中で呟いた。それから、クランを方を見返す。するとクランを見るに、私は若干笑みを溢し、こう思っていた。
(クランも寝てたら普通の女の子で可愛いのにな)
私は、二度寝をしようと思ったが、どうも寝付けなかったので、そのままこの部屋を後にし、階段を降りて一階に着いた。すると、扉の奥に光が差し込んでいたのである。その光が差す扉まで行き、恐る恐る扉を開けた。そこには、エリが私の為につくっていたのだろう、衣装を片手に椅子に腰掛けながら、そのまま寝ていたのである。
私は、寝ているエリの元へ行き、手にしていた衣装を取り、代わりにそこにあった、シーツをエリにかけた。
(へぇ、これが私の衣装か。 確かに悪くはなさそうだな)
そう言い、少し試し着をしてみた。その衣装は、黒いコートにボタンの代わりだろうか、黒い紐が付いていた。回りには白い刺繍が施されている。でも、コートだけじゃ中が丸見えである。私は辺りを見渡してみた。すると、マネキンに子供用ぽそうな衣装が飾られていた。私は恐らくこれであろうと確信した。
白の袖が長いシャツに、黒のショートパンツだった。これも試しに試着してみた。
すると、袖は長いのにシャツ下若干短くお腹が少し見えていた。ショートパンツなのは、恐らく動き安さで選んだのであろうと、思った。その上に先程のコートにある左右の紐をクロスさせ交互に若干、真ん中を空けながら、お腹辺りまで紐を持って来させ結んだ。そして、ようやく私の衣装が整ったのである。
私は思わず「おお~。」と、口に出しながら感心していた。
まぁ、少し女ぽさを感じるが、これはこれでとても動きやすくて、悪くなかった。
(脱ぐのも面倒だし、別にこのままでもいいか。 後でマネキンには、私が着たあのゴスロリ衣装でもかけとくか)
そう言い私は、こっそりとこの部屋を後にした。
そして私が、寝ていた寝室まで行き、クランを起こさないように、そこにある窓をゆっくり空けると【魔方陣の盾】を使い、その魔方陣を足場とし、この家の屋根に飛び移った。
「ふぅ。此処からだと結構、街が見渡せれるな」
私は屋根の上に立ち辺りを見渡していた。すると、見回りだろうか、あちらこちらに兵士らしき人影が巡回していた。
「こんな寝静まった夜に、見回りとはご苦労なことで」
その巡回している兵士を見るに独り言を言っていた。立つのも疲れてきたので、その場に座り込み、今度は夜空を見上げた。
赤く染まりあがる満月に、無数の星がキラキラとさせている。その反対側には、青く輝く月も出ていた。
「━━この世界には、月が2つある。 どういう訳か、この世界に太陽は無く朝はやって来ない。 うーん、朝は来ないのにどうして月や星があれだけ光ってられているんだろう」
私は何処か矛盾しているこの考え方で、色々疑問に思っていた。
「やっぱり、図書館に行ってこの世界について色々調べないとな。 今はわからない事だらけだ。 次いでに、この身体は何でこんな姿になったのか、この世界と関係しているのか」
考えれば考える程、どんどん積み重なる問題に私は、どうにかなりそうだった。一先ず、混乱は避けようと、考える事を後にし、次の目的についてどうするか、考え始めた。
すると、屋根の淵でクランの顔がにょきと出てきた。私は突然現れたクランに驚いて「うおッ!?」と声をあげてしまった。
クランは、目を細めじっとこちらを見つめてくる。そして、クランはこう言ってきた。
「やっと見つけた。 突然、居なくなるから心配した」
どうやら、私を心配して探していたらしい。それから、鎖を器用に使い、クランも屋根へと上がってきた。
すると、クランは私の衣装を見るなりこう私に言ってきた。
「それ、どうしたの?」
「ああ。これ? エリが寝ながら持ってたから、勝手に着てみたんだけど、どうかな?」
私は、この衣装について問いかけた。すると、クランの口から出たのは、意外な言葉だった。
「凄く、可愛い」
「それを言うなら、格好良い。じゃないのか?」
「マスターのその姿可愛い」
私は問い直すが、クランは首を横に振り「可愛い」と言い張る。私は渋々ながら「そうか…」とだけ返した。
すると、クランは私の横に座り、私の肩へと凭れ掛かった。私は少し驚くも、クランも甘えたいのだろうと思いそっとさせておいた。
それから、ただただ時間だけが過ぎていった。
そして、私は部屋に戻ろうと、身体を起こそうとしたら、クランが眠っていたのだ。どうやら、まだ眠たかったらしい。
(思えば、クランは寝る時もいつも一緒だったな)
そんな事を思い返していたが、私はどうにかクランを起こさないように、抱え込んで【魔方陣の盾】を使い、それを足場にして、窓まで飛び移った。そして、クランをベッドまで運んだ。
(全く、私を探しに来たと思えば、その場で寝て… 私はクランの母じゃないぞ)
そんな事を思いながら、クランの頭を撫でてやった。すると、クランの口からこんな言葉が溢れてきた。
「…ママ」
私は、少し驚いたが、少し思う事もあった。
(まぁクランにも、親が居るんだよな。 もし、クランが無理矢理連れて行かれたとするなら、親に会わせてやらないといけないんだよな)
そんな事を思いながら、色々考え込んでいた。次第に私の瞼も重くなっていき、ベッドに座り込んだまま私は眠ってしまった。
それから事なくして、外から大きな鐘の音が響き渡ったのである。その響く音に私は目が覚めた。どうやら、起床の合図のようだった。この鐘の音で、家から人が出て来たり、店を開くところもあった。
私は、部屋にあるゴスロリな衣装を手に持ち、エリの居る部屋まで来た。そして、そのマネキンにゴスロリな衣装を着せてあげた。
「よし! これでいいな」
と私は満足気に言った。すると、隣で寝ていたエリがよだれを滴ながら起きたのである。何とも、見苦しい気な表情に私は思わず苦笑いしていた。
エリは私を見るに「おはよう」と少し寝惚けながらも私に言う。
私もそれに釣られ「おはよう」と返した。
そして、エリは目を見開いて、ようやく私が着ている衣装に気づき、思わず叫んだのだ。
「ああ! それ私がつくっていた最中の衣装!」
「あぁ、勝手ながら着させてもらってるよ」
「その衣装まだ途中なのよ。 最後までつくり着るから渡してちょうだい」
「そうなのか? でも、このままでいいよ。 私も気に入ったし、別に着られれば問題ないからな」
そう言い、エリには悪い事をしたみたいだが、これでようやく私の衣装が出来たのであった。
それから、クランも起きたようで、こちらに向かって来た。
「ああ。起きたか、おはよう」
「あら、おはよう。クランちゃん」
私とエリが言うと、クランも「おはよう」と返した。そして、エリはこう私に言ってきた。
「今から朝食の準備するから、顔でも洗って来たらどう?」
「いいのか?」
「ええ。 最後くらい、私もちゃんとしときたいから」
とそう言い、エリは台所えと向かった。私達は洗面所で色々準備した後、クランも衣装に着替えさせて、リビングに向かった。
朝食が出来上がるまで、私は床に魔方陣を手書き始めて何かをし出した。
そして、私はクランをこっちに呼んで、私とクランはお互いに背を向け合わせて、クランの手を繋いだ。クランもわからない様子で私の指示に従ってくれていた。
それから、私は魔法を唱え始めた。
「妖精の加護の下。我にその守りの加護を与えたまえ━━【妖精の保護】」
すると、手描いた魔方陣が光だし、無数の光の玉が魔方陣の中から出現し、私とクランの衣装に入っていったのである。その後、手描けた魔方陣は跡形もなく消えた。それから、私はこう独りで呟いた。
「折角、エリがつくってくれた衣装だからな。 簡単にキズつかれても困るし、最善の策して施してやらないとな」
そんな事をしている内に朝食が出来たらしく、エリが私達を呼んでいた。そして、朝食を済まし終えると、私達は、店の入り口へと立ち止まっていた。
「もう、行ってしまうの?」
エリは何処か悲し気に私達へと問いかけていた。私は「ああ」とだけ応えた。更に、続けてエリは言う。
「また、気が向いた時に遊びに来てちょうだい。 いつでも歓迎するわ」
「ありがとう」
私は、無愛想ながらもこう返した。最後に、エリはこう問いかけてた。
「クラリックには、よろしく伝えてちょうだい」
「わかった。 それじゃ、そろそろ行くよ。 またな」
「またね」
私とエリが別れを告げて、この店から出ていったのであった。
(使える)詠唱魔法
肉体は力を宿し、血は精神を司り、骨で全てを包み込め━━【魔力変遷】
魔力を流し込んだり、吸収したり、お互いの魔力を変えたりする事の出来る魔法。
妖精の加護の下。我にその守りの加護を与えたまえ━━【妖精の保護】
妖精の力で、その標的のものを対象に、加護を与え保護してくれる。対象が解除しない限り効力は続く。




