第4話 そして時間は経つ、かなりの悩み事。
誤字報告をいただきました。どんな設定だったかなーって前話を見るときにさらっと目は通しているんですが気づきませんでした汗
本当にありがとうございますm(_ _)m
あれから3年後、時雨…いや、ルイス・カーライルはグレイシア王国の王都にある王城でなに不自由ない暮らしと、英才教育を受けてメキメキとその実力を表に見せるようになった。そもそもどうして時雨が王城で暮らしているかと言うと、その生まれによるものがかなり関係している。辺境伯家であるルイスの家、カーライル家、夫婦共に元冒険者であるというこの世界ではよくある経歴なのだが、妻であるリリアーナ・カーライルは元々国王陛下であるアレク・グレイシアの妹だったのだ。そして夫のウィル・カーライルはそれを知らずにリリアーナと結婚してしまい、ウィルを家族へ紹介する時、アレクに会わされ、リリアーナを権力から守るためということで公爵と同等、そして自領の中では王族並みの権力を持つ辺境伯の爵位を授けられたのである。もちろんこれは人格者で平民貴族隔たりなく接しているアレクにも批判の声が上がるほどのものだったが、無理やり押し通したのはウィルの人格を認めたからである。平民であったウィルであったが、その育ちはよく、社交礼儀は上級貴族に匹敵するほど美しかった。また、国王だからと言って媚び諂わず、自分の意見をしっかり通すことができる男だった。
その2人の間に生まれたルイスはつまり国王の甥であり、元々アレクがルイスを溺愛していたこともあるが(影武者を王城に残し、辺境伯領に1人で訪れるほど)、表向きには血縁関係があるということで、王城で暮らしているのである。
(今考えてみると内容の濃い3年だったな…)そうルイスが考えていると、
「ルイスおにーさま!今はご飯の時間ですよ!考え事は後にしてください!」
この声はアレクの娘、ルゥリィ・グレイシア、この国の王女である、愛称はルゥだ。お兄さまとは呼んでいるが第1王子である実の兄がいる。
「まぁルゥ、ルイスは明日器の儀式があるんだ、父さんは前日の夜眠れなくて儀式の時に倒れそうだったからな。」器の儀式とは5歳になる年の最後の日、神からクラスというものを授かる儀式である。そのクラスによってレベルが上がった時のステータスの伸びや取得できるスキルが変わるという。
もし、レベルが上がっている状態でクラスを授かってもそのレベル分の成長値が瞬時に加算されるので問題はないなのでそのことは気にしなくていいのだが…
「そんなことはないですよお父様、ルイスはお父様の数倍精神力がありますからその程度じゃ緊張しませんって、なぁルイス?ついでに明日の器の儀式が終わったらまた模擬戦といこうじゃないか、クラスの力も含めて戦えば俺も勝てるかもしれないからな。でも食事はちゃんと食べろよ?ルゥが泣く。」そう、第1王子、ルーク・グレイシアはルイスにとって良きライバルであり親友なのだ。ついでにシスコンなのだが。
「いや、まぁ緊張はするんだけどな、あはは…。おっ、今日の野菜炒めは美味いな、肉も野菜も一級品だ。」そう、ルイスはとても緊張している、それは器の儀式にではなくとてつもない数値のステータスと膨大な量のスキルがあるからなのだがそれを言うわけにはいかない。
(しかし相談くらいはしないとな。あとで一応父さんの部屋に行こう。)
そしてなんだかんだでアレクのことを父と思っているルイスである…実の父親があるのは確かだが、死んでしまっては仕方がない。冷酷だと言う考えもあるが、ルイスは両親の顔も見たことがないのだ。それに、まだ2歳になりたての頃ということで、ルイスはそのことを知らないという認識になっている。
「やった!ありがとうございますルイスおにーさま!それ私が作ったんですよ!」
「そうかルゥ、こんな美味しい料理が作れるなんて将来いいお嫁さんになるな。」
「えっ!?そんな…いいお嫁さんなんて…えへへ。」
「そうだな、ルゥはいいお嫁さんになるぞ!あっはっは!」
「おとーさまには何も聞いてません!」
「そんな…しゅん…。」
(おい、しゅんって自分で言うのか、自分で。)
「そうですよ、ルゥはどこにもやるつもりはありませんからねお父様!」
「ルークおにーさまもやめて!」
「そんな…しゅん…。」
(お前もかよルーク…。それよりも4歳でここまで喋れるとは、やっぱこの国の教育水準はとても高いんだな…)
そう、このグレイシア王国は貴族平民関係なく言葉の読み書き、話し方を覚えることは無料でできるのだ。これもアレクの政策の賜物であり、国王としての人気の一つである。そしてお金を払えば専属の教師が雇えるため、ルゥも大人に負けないほど会話をすることができている。
「それよりもお前たちは理想のクラスはあるのか?」アレクは何もなかったかのように話題を変える。
「そうですねお父様、器の儀式はその人間の内面を写すと言いますし、やはり勇者などの最上級光クラスのクラスが欲しいところですが高望みしてもどうにもなりませんし僕はどのようなクラスでもいいと思っています。」
ちなみに最上級光クラスとはそれぞれクラスのランクと属性である。ランクは通常、中級、上級、最上級の4つ。通常ランクは幅が広く、一般的な市民から、戦士や魔術師など多岐にわたる。一方最上級は一握りの才能を持ったものしか授かることができないが、ルークが言ったような勇者などのとても強力なものが多い。数百年前に最上級を超えたクラスの英雄が現れたという伝説が残っているが今までそう言った事例はない。
そして属性は無、火、水、風、光、闇の6つがある。無属性は農民でも戦士でも魔術師でも、ランクで言う通常のように多岐にわたる。火であれば有名なものが火炎使いだ。とても強力な火属性魔術をブーストされた状態で放つことができ、操ることができる。なぜ魔術師が無属性かと言うと、どの属性にも突き出ているものがないからだ、それこそ専門属性のクラスには負けるが応用力が高い。全ての属性に適性が現れるので火には水を、と言ったように相手の弱点を突く戦い方ができる。なので別にどの属性が強いといいものはないのだ。
「俺もなんでもいいかな、それこそルークが言った通り高望みしてもどうにもならないし。」ルークとルイスがそういうとアレクは肩を落とし、
「そうか…、お前たちにはもっとこう夢がないのか!?おとぎ話に出てくるような英雄になりたいとか金持ちになりたいとか!」
「「ないですね」」
「嘘だろ…。」とても国王とは思えない言葉である。それこそ権力を持てばなんでも自分の思い通りになると思い込む人間が多い、だがこのアレクは一般庶民が持つような憧れを今でも抱いている。まぁこう言った考え方ができるから国民中心の政治ができるのだろうが…
「とりあえずごちそうさまでした。父さん、あとで話したいことがあるんだけどいいかな?」
「ん?なんだ?やっぱり英雄に興味があるのか?とりあえず仕事が終わったらお前に連絡するよ。」
「ありがとう。それじゃ俺は部屋で本でも読んでるよ。」
「俺のいじりには答えてくれないのか…お父さん悲しいぞっ。」
(何か聞こえた気がするが気のせいだろう。)
そして俺が部屋で本を読んでいると
コンッコンッ
「ルイス様、アレク様のお仕事がひと段落つきましたのでお伝えさせていただきます。」
「わかった、今いくよ、ありがとう。」
「了解致しました、では失礼いたします。」
「さてと、覚悟を決めないとな…。」
こうしてルイスはアレクの部屋へと向かった。
次回、ルイスはアレクにステータスを見せるのでしょうか、もし見せるとしてアレクの反応は…?