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月トガリ  作者: 吉四六
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人は科学に利便性を追い求め、究極の死を目指す

 楽士団が演奏する歓迎の音曲の中、俺達はインディガンヌ王国王宮へと招き入れられたんだけどさあ。なんか、微妙な雰囲気なんだよね。

 やっぱ、俺がヤートだからかなあ?何気に空気の雰囲気?空気感?ってのが堅い感じ。

「しかし驚かされますな。神州トガナキノ国の行列は。」

「そうですかぁ?私はもう少し短くしたらどうかって言ってるんですけどねぇ。ウチの執政官が中々首を縦に振ってくれないもんで。」

 インディガンヌ王国の国王自らが俺達を出迎え、今も王宮の廊下を一緒に歩いている。うん。なんかフレンドリー。でも微妙。

「いや。見応えのある行進でした。あのように魔獣を飼い慣らすことができるとは思いもよりませんでした。」

 そりゃそうだよねぇ。

「う~ん、飼い慣らすってのとはちょっと違うんですよねぇ。どっちかと言うと終身雇用契約?的な?だから、働いてもらってるから、こっちもそれに見合った報酬を支払う的な感じですかねぇ。」

「ほう、雇用契約ですか?」

 インディガンヌ王国の国王の名前はサラディーン。サラディーン・インディガンヌだ。

 年齢は四十二歳と、俺よりも年下だね。いや、トガリは十六歳だけどさ。中の俺は五十一歳だからさ。

 白い顎鬚をたくわえたほっそりとした老人だ。年齢的にはまだまだ壮年なんだけど。見た目がねぇ。どうしても、老人の印象が強すぎるんだよね。まあ、実際この世界での平均寿命は五十九歳ぐらいだからね。四十二歳って言ったら棺桶に片足突っ込んでるようなもんでしょ。

 そのお爺ちゃんが、結構、気を使った感じで俺の隣を歩いてるわけですよ。ね?ちょっと、微妙な感じでしょ?

「それと殿(しんがり)を歩いておったあの金剛。あの金剛はどのような原理で動いておるのですか?」

「ああ、あれは、金剛じゃなくって鎧なんですよ。」

「鎧?」

「ええ、分類としては魔導鎧(まどうがい)になります。金剛のように自立式で勝手に動くってもんじゃないんですよ。まあ、勝手に動くように設定すれば勝手に動くんですけど。基本、あれは着て動かすもんなんです。」

「ほう。それでは、やはり、あの魔導鎧も人の霊子で動くのですかな?」

「う~ん正確には幽子ですけど。まあ、霊子での稼働が基本ですね。」

「それと、あの宙に浮いておった魔導鎧ですかな?人と同じぐらいの大きさの。あれも同じ原理で?」

「基本はそうですね。まあ、何でもかんでも、霊子と幽子を使って稼働させれば安上がりで枯渇することがありませんからね。便利なもんですよ。」

 俺の答えを聞いたサラディーン王が満足そうに何度も頷く。

 話しながら王宮内の迎賓館に到着する。王宮とは渡り廊下で繋がっており、迎賓館のダイニングにて、インディガンヌ王国の王族と会食だ。

 まずは、インディガンヌ王国王族の紹介が滞りなく進められ、俺達、神州トガナキノ国側の紹介が行われる。

 驚いたことにアヌヤとヒャクヤが変なことをせずに、スムーズに紹介された。インディガンヌ王国の王妃に「神州トガナキノ国の王妃殿下は、お若いのですね。」と言われて、「はい。まだ、建国されて六年程の国で、私と同じく国そのものが未熟ですから。今後は何かとお教えいただきたいと思います。」って、アヌヤが言ってた…

 …え?

 アヌヤだよね?

 ええ?

 別の人?

 通訳入れる?

「そうなんよ。トガナキノはでっき(・・・)立て(・・)のホヤホヤなんよ。だからあたしも若いんよ。これからは色んなことを教えて欲しいんよ。」

 そう。アヌヤの本来の台詞だとこんな感じだよね?そうだよね?ほら、漢字の数そのものが違う。ええ?

「左様でございます。(まつりごと)を担う王族にとって若さは未熟の象徴であって、なんの取り柄にもなりません。私もクワァンテル王妃のように国王を補佐できる王妃になりたいと、常々より考えております。」

 と、ヒャクヤがアヌヤに追随する…って、え?

 真っ青だよ。誰がって?俺だよ、俺。俺が真っ青だよ。

 よくもまあ、これだけ外面良く嘘八百をペラペラと喋れるもんだ。普段から「若さは武器なの!」とか「可愛いは最強なの!」とか「パパは子守をしてれば良いの!」とか言ってるくせに。はあ?若さは未熟の象徴?国王を補佐?何をいけしゃあしゃあとぬかしとるんじゃ、こいつらは。

「トガリ陛下が羨ましいですな。若く可愛い王妃に囲まれ、聞くところによると、もうお二方、王妃がいらっしゃるとか?」

 クワァンテル王妃が俺に問い掛ける。

「え、ええ。」

 ゴツイのと怖いのがいますねぇ。

「しかも、皆さまが魔獣をお狩になられるとか?」

「え、ええ。」

 そうなんすヨ。だから、こんなにお淑やかな訳ないんすヨ。

「凄いですわあ。美貌と強さを兼ね備えた才色兼備の王妃を四人もだなんて。」

「え?ええ。まあ。」

 この王妃、同じことを二回言ったよね?大事なとこか?それって。

「そんな、嫌ですわ。お恥ずかしい。そのように仰って下さるのは、クワァンテル王妃だけです。周りからは、はしたないと言われて、もう魔獣を狩ることをお辞めなさいと言われておりますの。」

「左様でございますのよ。魔石を採るためにも、また、臣民を護るためにも魔獣を狩ることは必要だと申しておりますのに、周りの者達は辞めろと煩いんですの。」

「だって、魔獣を狩りに行くたんびに、お前らモラっう。くっ。」

 テーブルが音を立てて揺れる。同時に俺の言葉が途切れる。

「あら、地震かしら?」

 白々しくもヒャクヤがぬかす。

「怖いですわ。地震ってあまり経験がございませんの。」

 とは、アヌヤだ。

 俺の言葉が途切れたのでインディカンヌの王妃と国王が首を傾げる。

「モラ…何ですの?ごめんなさい。よく聞き取れませんでしたわ。」

「いえ、いえ、二人は、よく討ちモラすことがあるのですよ。その後始末に私が奔走する次第でして。ですから、周りの者達が辞めろと言うのだと思います」

 俺の言葉を聞いたアヌヤとヒャクヤが、ようやく俺の足の甲から踵をどける。

 アヌヤとヒャクヤが同時に俺の顔を見る。

「ごめんなさい。次は確実に仕留めますわ。」

「左様でございます。陛下がゆっくりとお休みになられるよう、しっかりと仕留めますわ。」

 二人とも微笑んでるけど笑ってない。うん。目がもう完全に人殺しの目だ。次は無いってことね。

 はい。

 理解しました。

「ところで、トガリ陛下。」

 サラディーン国王が話を転ずる。

「はい。」

「トガリ陛下は、我がインディガンヌ王国のインフラ整備を援助して下さるとのことですが、その事業計画としてはどのようなことをお考えなのですかな。」

 おう。直球ですねぇ。

「その件につきましては、私の方からご説明させて頂いてもよろしいでしょうか?」

 スーガが割り込んで来たヨ。うん。まあ、俺はなんにも考えてなかったからね。うん。任せるよ。

「うん。任せる。」

 スーガが俺に向かって一礼し、サラディーン国王に向かって「ご無礼失礼いたします。」と、言って頭を下げる。それを受けたサラディーン国王は鷹揚に頷き、スーガの発言を許可した。

「事業計画といたしましては上下水道の整備と併せまして道路整備を考えております。もし、インディガンヌ王国の方でも希望のインフラ整備事業がございましたら、そちらへの援助も視野に入れることは可能かと考えております。」

 スーガの言葉を受けたサラディーン国王が満足そうに頷き、「結構ですな。」と応える。

 サラディーン国王は一旦口を閉じるが、俺の方に向き直って再び口を開く。

「実は、現在計画中の整備事業がございましてな。」

「ほう。伺いましょう。」

「お恥ずかしい話、この王都にはスラムが二か所ございましてな、そのスラムの再開発を計画しておるのです。」

 ああ、そう言えば、そんな話を肉屋の親父がしてたね。

「先々代の国王です。上下水道の整備もできておらぬ内から、次々と建築を押し進め、誰も住まぬ建物ばかりが建ち並ぶ始末。また、地域的にも王城の西側と城壁の西側ということもあり日当たりが悪く、非常にジメジメとしております。そのスラムの再開発事業にお手をお借りしたいと考えておるのです。」

 じゃあ、その地区の上下水道と道路整備がメインだな。最初の提案とあまり違いはないね。

「スラムの再開発では、何を造られるご予定ですか?」

 サラディーン国王が頷く。

「日当たりの悪い場所ですので、公共の用に供する物を建てようかと考えております。」

 うん?なんだ?サラディーン国王、今のイメージは何だ?

「成程。では、その詳細を互いの執政官同士で話し合わせましょう。」

「左様でございますか。ありがたい。神州トガナキノ国のトガリ国王は懐の深いお方と聞いておったのだが、実際にそのようなお応えを頂戴できると、噂は本当であったのだと実感できますな。」

 公共建築物を建てると言った時、サラディーン国王がイメージしたのは発電所だった。発電所?造れるのか?神州トガナキノ国以外の国が?

「いえいえ、我が力など微力も微力。実際、私の両隣に座っている王妃二人にもあたっあああ…」

 再びテーブルが激しく揺れる。

「嫌だわ。揺り返しかしら?」

「本当、もう、揺り返しなんて起こって欲しくないのに。」

 再び俺の言葉が途切れたので、インディカンヌの国王と王妃が、やっぱり首を傾げる。

「如何なされた?アタ、なんと仰ったのかな。申し訳ないが、よく聞き取れませんでした。」

「は、はい。実際、私の両隣りに座っている王妃二人にも、新しい(・・・)街を造るにあたって、力を貸してもらわなければならないほどですと、言いたかったのです。」

 アヌヤが顔を近づけてくる。

「勿論ですわ。私は常に陛下と共にあるのですから。常に立派な行いをなさる陛下には()()下がりっぱなし(・・・・・・・)でございます。」

 ヒャクヤが顔を近づけてくる。

「その通りですわ。私も陛下の仰せならば、如何様なことも成し遂げてみせますわ。」

 妖怪二人に挟まれてる気分ってわかるかなぁ?

 まさに今がそれ。

 妖怪、猫っ被りだよ。

「しかし、トガリ陛下からのご厚意ばかりでは、こちらも心苦しい。私にできることがあれば、なんなりと仰っていただきたい。」

 へえ。いい奴じゃん。この爺さん。

「じゃあ、お言葉に甘えて。」

 サラディーン国王がにこやかに頷く。

「私がヤートの出自であることは皆さんご存知かと思いますので、まず、ヤート族の解放と復権。」

 同席しているインディガンヌ王国執政官の眉が僅かに動く。

「それと、獣人との掟を解消し、解放し、居住地域選別の自由を与えてやって頂きたい。」

 インディガンヌ王国の執政官が立ち上がるが、サラディーン国王が右手を挙げて制する。

「最後に奴隷制度の廃止ですね。」

「な、内政干渉でございます!」

 サラディーン国王が止めていたにもかかわらず、立ち上がった執政官が大声を出す。俺は、サラディーン国王の脳内から新たなイメージを拾い取る。

「座れ。」

 今までの雰囲気を脱ぎ去り、本性をチラリと見せたサラディーン国王が静かに命令した。

 執政官が「申し訳ございません。」と言いながら、静かに座る。

「失礼して、私が捕捉させていただいてもよろしいでしょうか?」

 ギュスターだ。

 その言葉にサラディーン国王が頷き、発言の許可を与える。

「ありがとうございます。それでは…」

 ギュスターが先程立ち上がった執政官へと視線を向ける。

「我が君は要望をお伝えしたにすぎません。要請でもなければ、勿論、命令でもございません。我が君は、そのご出生から、人が生まれながらに持つ権利というものに大変敏感になっておられます。その結果、我が君が他国の救援、援助を行った際には、必ず、先程の三点のご要望をご提示なされます。従いまして、我が君の要望に応えるか否かはインディガンヌ王国の自由でございます。」

 ギュスターが頭を下げる。

「ふむ。ヤート族のご出生となれば、やはり、同族の冷遇は耐え難いもの。ヤート族の所有管理権限は各国が所有している。その所有権を侵害することなくヤート族を解放したい。そのように受け取ったが間違いはございませぬか。」

 ギュスターではなくサラディーン国王は俺に向かって言っている。

「その通りです。ヤート族、獣人、奴隷、いずれも国政に組み込まれております。私の要望を無理に押し通そうとすれば、角が立ちます。私が幼い頃であれば、そのようなことに頓着いたしませんでした。しかし、今は国王。角を立てることはしたくはありません。」

 サラディーン国王が頷く。

「承知いたした。遠いウーサ大陸の神州トガナキノ国から、突然、インフラ整備事業の援助の申し出があった時は何故かと訝しんだが、得心がいった。すぐにとはお約束できかねるが、遠くない将来には、その三つのご要望、必ず叶えましょう。」

 サラディーン国王がニッコリと笑う。

 ふん。好い爺を装っても丸わかりなんだけどねぇ。そんなこと、これっぽっちも思ってないくせに。先程拾い上げたイメージは洗脳奴隷だ。

 この爺、洗脳奴隷の一件に関わってやがる。

「しかしながら、奴隷制度の廃止は難しいですな。」

「医療魔法の関係ですか?」

 俺の回答にサラディーン国王が頷く。

「我が王家でも三つの医療用の奴隷家族を養っておりますからな。奴隷制度を廃止するのは中々に難しいでしょう。」

 そうなんだよね。

 どの国でも王様や貴族は三世帯から五世帯の奴隷家族を養ってるんだよね。昔、戦争が頻繁に起こってた国なんかは特に多い。詳しく聞くと戦争への備えだそうだ。

 戦争で腕や足を失った場合、養ってる奴隷家族からその失った部位を供出させるんだと聞いた時はこいつら人間としてどうなんだ?と、思ったよ。

 そのくせ、貴族は最前線に立つことが少ないから、あんまり怪我しないんだよねぇ。それでも奴隷家族を養って、貴族や王族の誰かが怪我したり病気になったりしたら奴隷家族を使って治療してる。

 俺の知ってる奴隷家族なんて、全員、腎臓が片方なかったっていうことがあった。

 胸糞悪いよねぇ。人間を家畜のように、いや、家畜として扱ってるよね。

「野蛮だわ。医療用の奴隷家族なんて。」

「本当、自分の体の中に他人の体が使われているなんてゾッとしますわ。」

 あ~あ。俺よりも我慢できない奴が言い出しやがった。

「ふふ。」

 アヌヤとヒャクヤの言葉を聞いたサラディーン国王が静かに笑う。

「聞いたところによると神州トガナキノ国では医療魔法が飛び抜けて突出していると聞き及んでおりますが、その医療魔法とは、どのようなものなのですかな?」

「申し訳ありません。神州トガナキノ国の医療魔法に関することは機み…」

 ギュスターがサラディーン国王に答えようとするけど、俺がそれを止める。だって、アヌヤとヒャクヤが失礼なことを言ったからね。

 それに、このまま話を続ければ、洗脳奴隷について、もう少し、何かわかるかもしれない。

「基本的な医療魔法は各国の魔法と変わりはありません。」

 サラディーン国王の表情が俄かに曇る。この爺、どこから仕入れたのか神州トガナキノ国の医療用カプセルのことを知ってやがる。

「ただ、精霊がどうやって肉体を治療するのか。その原理を究明しただけです。」

「原理?原理とはどういうことですかな?他人の肉体から己の肉体を再構築する。それが、医療魔法の原理ではないのですかな?」

 サラディーン国王の言葉に俺は緩やかに首を振る。

「魔法だけに囚われてはいけません。精霊は命じられて動くだけです。魔法の仕組み自体は浅いものです。注目すべきは対象となる肉体です。」

「ほう。肉体の方に原理があると申されるのか。」

 俺は頷きながら口を開く。

「肉体は肉でできておりますが、髪の毛は肉でしょうか?爪は肉でしょうか?」

 その場にいるインディガンヌ王国の全員が眉を顰める。

「爪は爪であり、髪の毛は髪の毛で、歯があり、骨があります。血が流れる血管は心臓という大きな血管のような筋肉でできております。人の肉体には微細な雷が流れ、その雷が神経を刺激し、脳は記憶し、考えるのです。夜空に瞬く星々のように深遠で広大なる物が人の肉体なのです。我々は、この、最も身近な宇宙の深淵をどれほど知っているのでしょうか。」

 サラディーン国王が、数度、頷き、俯いたまま黙り込む。うん?黒い男のイメージだ。誰だ?クルタスか?そして、顔を上げると同時に口を開く。

「ふむ。つまりは魔法というものを学ぶことよりも人体の仕組み、その物を学ぶ方が医療魔法の奥義に至れると、そういうことでございますかな?」

 サラディーン国王の言葉に俺は目を伏せながら頷いた。

「とかく、我が国は魔法大国として言われますが、その実は世界の成り立ち、森羅万象の理を究明することに重きを置いているのです。現在の魔法はその副産物にすぎません。」

「トガリ陛下の仰ること。真に興味深い。では、更にお伺いする。人の肉体を、欠損した人の肉体を元に戻すにはどうすれば良いのか?神州トガナキノ国では奴隷制度は無いと聞いております。どのように元通りに治療しておられるのか?」

 スーガとギュスターが心配そうに俺の方を見てるけど、大丈夫、下手なことは言わないよ。

 うん?これは、拘束された奴隷か?変なものを思い浮かべやがるなぁ。医療系の話をしてて、そういうイメージを浮かべるってことは、そういう趣味の人かな?だったら俺とも話が合うかもなぁ。

「人は、その肉体と霊子体、そして、精神体で構成されております。肉体が欠損したとしても精神体と霊子体は欠損することがございません。霊子体と精神体は欠損した肉体を修復しようとするのです。私たちはその修復しようとする霊子体と精神体の手助けを精霊にて行うのみです。」

「ふむ。」

 サラディーン国王が椅子の背凭れに体を預ける。

「やはり、具体的にはお教えいただけぬか。」

 俺は目を伏せがちに、その理由を答える。

「我が国の医療魔法を利用すれば、人が人でない者に変わってしまいます。こればかりは、私も口にすることはできません。」

 再び、サラディーン国王の脳内に先程と同じ男が現れる。人間じゃないのかなぁ?

「成程、そのための禊ですかな?」

 サラディーン国王の言葉に俺は頷く。

「力はあるに越したことはありません。しかし、その力の使いようを間違えれば、人の血が流れます。究極的には、この星、その物が血を流します。」

 口に手を当てサラディーン国王が再び沈思する。長い時間だった。サラディーン国王が瞼を開けると同時に、俺の言葉を反芻する。

「力の使いよう…成程、やはりな。」

 引っ掛かる言い方だな。先程見えた男のイメージが、より鮮明に見える。

 黒いローブ。

 暗い雰囲気を纏った男。

 年齢は二十歳前後か。

 全身黒尽くめだ。

 顔色も黒い。黒人か?違うな。

 黄色人種だが肌が黒い。雷精魔道具を持ってる?

 なんだ?何故、今、この男のことを思い浮かべる?

 スラムの再開発…

 発電所。

 霊子。

 奴隷の供給?

 戦争。

 捕虜奴隷。

「トガリ陛下。」

 思考を切り替え、サラディーン国王の方へと視線を向ける。

「いや、大変有意義なお話であった。是非ともスラムの再開発に御手をお借りしたい。」

 その言葉と同時に俺はサラディーン国王の脳内から一つのイメージを受け取る。

 霊子発電。

 神州トガナキノ国とは、まったく、思想を違える霊子発電。

 生きた人間を医療用のカプセルに閉じ込め、その人間達の霊子を使って発電するシステム。

 あの女の魔法使いは、洗脳奴隷が沢山必要だと言っていた。

 俺はニッコリと微笑んだ。

「ええ。今後のことも含めて、インディガンヌ王国とは是非とも仲良くやっていきたいですからね。」

 テーブル下、俺の手の中でフォークが捻じ曲がっていた。

 胸糞の悪くなることを、次から次へと、よくもまあ思いつきやがるよ。クソったれめ!

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