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宇宙蟹工船  作者: 豊洲 太郎
20/21

  19 アートアンドクラフト

 アートアンドクラフトのワークで、ママの肖像をクレパスを使って描くことになった。クラスの皆は、驚くほど速いペースで作品を仕上げていた。

 ぼくはスケッチブックにコーンフラワー、カーネイションピンク、メイズを塗り重ねてみたけれど、まるでマーマレードトーストがシーツに貼り付いた跡のようになってしまった。ママの輪郭は淡い水彩のイメージだから絶対にクレパスでは描けなかった。あんなワークもスクールも大嫌いだ!ダディは、まだラジオなんかに祈りを捧げているのだろうか…

 (パン!)

 ママが消えた朝も同じ音がした。

 喉に錆鉄が詰まった気分。TOKYOの空には灰色雲が集まっていて、あのフレーバーに包まれていた。ぼくは下着姿だったけれど、とにかく靴に履き替えて廊下に出た。隣室の机の引き出しから婦人用の拳銃を取り出した。それを両手で構えながら階段を静かに降りた。そして、踊り場からホールをそっとのぞきこんだ。

 淡い逆光に、青と白の羽毛が宙をキラキラと舞っていた。

 重力や時間の恩寵が消えて、輝く羽毛が小さなエンジェルに見えた。ソファーにはリボルバーをいだいて赤いフィギュアになったダディが崩折れていた。

 銃声に怯えた青いインコが何度も窓にぶつかって墜ちた。かれの願いに応えて出窓を開くと、かれは裂けた灰色雲を目指して羽ばたいていった。

 ぼくはテーブルに置いてあった読みかけの「アフターバーナー」誌をダディの顔に伏せた。

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