第5話-宿を決めよう。野宿は嫌です。
「そうだ、お姉さん。僕ここにさっき来たばかりなのでオススメの宿を教えてもらえませんか?泊まるところ決まってないんですよね。」
苦笑を浮かべながら-といってもフードで見えないけれど告げるとミーシャは少し考えるそぶりを見せた後口を開く。
「金銭的に余裕があるあるいは自分を追い込むためにあえてというのであれば他の宿屋よりは高いのですが『月の雫亭』がいいかと思います。金銭的に余裕があまりないのであれば傭兵冒険者御用達の『三本の角』がオススメです。」
両方の宿について詳しく聞いたところ、月の雫亭は一泊大銀貨一枚で二食付きなのに対し三本の角は素泊まり大部屋雑魚寝で銅貨三枚からなのだそうだ。もちろん個室もあるらしいが。
考えるまでもなく月の雫亭だろう。
大部屋では耐えられない。女性冒険者の駆け出しだと大部屋に泊まるんだろうか。男女混合?そもそも赤の他人の気配があっては寝れない。
金銭的に問題はないし、ご飯も美味しいらしい。しかも、銅貨三枚プラスするとお昼に簡単なお弁当を作ってくれるらしい。
「月の雫亭にはどう行けばいいのでしょうか。できたらここからの簡単な地図とか書いてもらえませんか?」
ミーシャは小さな板を取り出すとそこに簡単な道順を書いた。この世界のほとんどの国では紙は貴重であり、そういったものの文明はあまり発展していない。と少ない基礎知識で教わった。
「ありがとうございます。」
ペコリと一礼するとギルドを出る。
道順はなんとなく記憶できたのでもしも迷ったら道を聞けばいいだろうと思いながら道を行く。
しばらく歩くと宿へとたどり着いた。外装はまあ想像通りだ。
中へと入る。
カランカランと鈴の音が響く。
「いらっしゃいませ!」
元気な声が聞こえてきた。
左側を見ると可愛い13、4歳くらいのうさ耳の生えた少女がいた。黒のロップイヤーだ。
街中やギルドでもちらほらといたが、獣人だ。
フードを被った怪しげな人間にもしっかり笑顔で接客の基本ができている。
文明の感じの割にはきちんとした接客で意外性を感じる。
「こんにちは、部屋は空いていますか?」
「一人部屋でよろしいでしょうか?」
「ええ、お願いします。」
「一泊二食付きで大銀貨一枚です。10日以上お泊りで一割引になりますがいかがいたしますか?」
「それでは10日分お願いします。」
「かしこまりました。それでは大銀貨9枚になります。お湯は別料金で銅貨3枚でご用意いたしますのでお申し付けください。また、お昼もお弁当を別料金でお作りすることが可能ですので前日までにお申し付け下さい。」
大銀貨を9枚と銅貨3枚を渡す。
「ありがとうございます。それではこちらがお部屋の鍵となります。お部屋は二階の角、305号室となります。お湯はいつ頃お持ちしますか?」
「できるだけすぐにお願いします。」
「かしこまりました。」
鍵を受け取るとそこを後にする。
読んでくださってありがとうございました。