第3話-地理学?の授業を思い出す-
しばらく歩いて行くと街道のような道へと出た。
整備されているわけではないが踏み固められ草が生えていない道だ。馬車も通るのだろう。馬車の轍の跡が残っている。
人も何人か歩いているので多分街へと向かっているだろう人と同じ方向へと歩く。
いかにも冒険者といった服装で腰に剣をさす人もいれば、行商人なのだろうという人もいる。女性の一人旅といった人はおらず、若返った為性別の判別がつかない外見になっていてよかったと密かに思う。
現代日本のように女性が一人歩きできるような世界ではないだろう。そもそも地球ですら女性や子供の一人歩きがほぼ安全にできるという国や地域は少数派であった。
もちろん子供も一人歩きはしないだろうが、駆け出し冒険者風の少年らも見かけたのでおそらく成人はかつての日本と同じく早いのだろうと推測を立てる。
神様はこの世界の予備知識を余り与えてはくれず、非常に不便ではあるが今まで読んできたラノベや世界史などで培った知識をもとにどうにか乗り切りたいと思いながら歩いていると大きな壁が見え始めた。
歩いた時間はおそらく2時間弱だろう。
地理学の時間--だったと思う--に学んだパリの街の話を思い出させるような門と壁そこにはあった。所謂城壁都市だ。
入るために並ぶ人達の列へと並ぶ。馬車と徒歩の人間とは列が違っていたため、想像よりも列は短く、思いの外進みも早い。
それとなく周りを観察しつつこれからのことを考える。
日本にいた頃から男装はたまにしていたから、余程じゃない限り--それこそ裸に剥かれない限り、バレることはない自信はある。だからこのまま周りに男であると勘違いさせる方向でいいだろう。
「身分証を」
「身分証を持ってはいないのです。なのでこの街でギルドに登録する予定です。」
身分証を持っていないことに特に何かを言われることはなかった。何かしら言われるかなと身構えていたのに少し拍子抜けだ。
「それならこのオーブに手を置け。それと入頭税として銅貨5枚だ。」
門番の男が丸い水晶のような球を指し示す。手で触れたものの賞罰記録を読み取る道具でどこの町にでもあるものだ。もちろん夏希にはそれが何かなどわからない。以前読んだラノベから予想して正解を導き出してはいるが。
反対側の手で鞄から銅貨を取り出すふりをしてアイテムボックスから銅貨を5枚取り出すと男に渡す。
「通っていいぞ。」
「ありがとうございます。ついでと言ってはなんですが冒険者ギルドの場所を教えてもらえますか?」
「ああ、いいだろう。」
ギルドの場所を聞けば分かりやすく説明してくれる。ぶっきらぼうというか愛想は悪いが優しいのだろう。
お礼を言い頭を軽く下げると門をくぐる。
この世界で初めての町だ。
読んでくださりありがとうございます。