01 エラリーちゃん(19)は銃を撃ってる時が一番キュートでセクシー
ざっくり経緯は省かせて貰うが、私はプレイしていた剣と魔法のRPGの世界へとぶち込まれる事になった。
何でもこの世界には実際に魔法使いが居るとのことで、虚構を現実へと変える魔法使いさんが個人的に作ったゲームを運悪く中古屋で買ってプレイしていたのが運の尽き。メーカー表記無いのおかしいとは思ってたんだよ。でも同人ゲーって線もあったし。
魔法使いにはいろいろとルールがあるらしく、私はゲームの中に突然ぶち込まれ死んでもそこから出られないという事実と引き換えに魔法使いと全く同じ魔法の能力を植え付けられた。すなわち、虚構を現実に、頭の中の存在をリアルに出現させる能力である。本当はもっとすげー能力なんだけど、元々魔法使いではない私にはそれ以上うまく扱えないのでした。あらら残念。
でも想像力クソみたいな私に「ぼくの考えたさいきょうの魔法/兵器」なんてものを生み出せるはずもなく。
ぱらららら、と軽快な音と共に、木々の隙間から剣を振り翳して飛び出してきた男の上半身が蜂の巣になる。
血飛沫が落ち切るまでにこの元ゲームの世界固有の能力である『装備変更』でグレネードランチャーに武器を切り替え。オプションの衣装変更でヘッドギアも出て来ます。茂みの奥に向かって引き金をがちっとな。BANG!!ちゅどーん。敵の悲鳴が三つ、四つ木々の間に木霊する。煩いし敵を呼びそうなので聞こえなくなるまでガンガングレネード撃つぜ撃ち込むぜー、物量に任せて戦場を更地にしてやるのぜー。
ははは火の玉打ち出すマジック並の魔法なんかとは大違いだね文明力が全然違うね流石は人殺しの為だけに生み出された兵器だね。まあこの兵器を生産するのに利用している技術は魔法な訳ですが。
元々私が好きなのはアクションゲームなんだよね。ファンタジーゲームの中でも現代兵器の魅力に抗えない。
銃や爆弾って最高にクール。身長162cm体重49kgの現役JDと火器の組み合わせも最高にキュートでセクシー。そうだろ?ひへへへ。
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やあどうもどうも画面の向こうのプレイヤー、或いはオーディエンス諸君。魔法使いの作ったRPGの世界の中に取り込まれちまった哀れな女子大生ことエラリーちゃんだよヨロシクネ。あ、こういう時はあれか、はじめましての人ははじめまして、とか言った方がいいのかね?勿論エラリーってのはHNです。
初っ端からメタメタじゃねーかとか思ってる人、そりゃあ魔法は実在した!魔法使いが作ったゲームの世界に放り込まれた!なんて事が起こったら何らかのメディア化を疑うのは当然の事だと思わない?
思うよね?
だから私は礼儀正しくこうしてご挨拶してるってわけよ。
別に実際の所はどうなのかは知らないし、知ったところでどうともならないからどうでもいいんだけど、仮にその予想が当たってたらご挨拶は大事っしょ?舞台でも大抵始まるときには「レディース&ジェントルメーン」ってやるし。
私の華麗な冒険を物語として起こしたメディアの形式が漫画なのか小説なのかゲームなのかは知らないけどな。個人的希望はスタイリッシュでド派手なアクション満載のゲームだね。プレイヤーの皆様には素晴らしい操作を期待しておくよん。間違っても武器の切り替えにもたついたりパニクったりしてJD丸焦げ串刺し袈裟切りゲームオーバーなんて悲しい真似はしないでね。頼んだぜ相棒。
「おいエラリーぼけっとしてんな」
ごちっ、と脳天に突然の痛み。はぁ?痛ってぇな?何?
「三秒後に帝国軍に突撃するからね。やる事は分かってんな?」
「それ一体誰に言ってんのさ厚化粧ババア」
いたいけなおなごの頭を遠慮なくグーで殴った奴は、この世界に来た私を拾って飯の種にしてるおっかなくて大阪人も吃驚なくらいに化粧の濃~いおばさんだ。ナントカ帝国とうんたら王国の戦争の最前線でも真っ赤な口紅と真っ青なアイシャドウを欠かさない、ミランダ傭兵団のミランダ団長様とは彼女の事である。あ、多分これゲームなら今ムービー中でしょ?多分画面の向こうの君も団長の化粧の濃さに笑ってるだろ?
減らず口を叩いたせいか、きっちり三秒後の奇襲に飛び出すタイミングで思いっきりケツを蹴り飛ばされた。何という手荒い突撃号令。
さてプレイヤー君チュートリアルを始めよう。相手は雑っ魚い偵察用の小隊で、私達は精鋭部隊だからチョー簡単、安心して操作方法を覚えてちょうだいな。
……と言いたいところなんだが、残念ながらこの奇襲作戦は私にとってはもう覚えてないくらい戦闘行為を重ねた後のものなんだ。
「エリ、いつも言ってる事だが、戦いには集中しろ!最初に戦場に立った時の事を思い出して身を引き締めな!」
「アイサー、ミランダ。なんというナイスなフラグの台詞」
つまりもう次の展開は予想できるよね?はいカメラさんここでフェイドアウトして、あ、右斜め下の方向に引いて行ってね、そっちの方が私がかっこよく見えると思うから。
次に暗転して、こんなテロップが流れるでしょ?
最初に戦場に立った時──私はあの日の事を今でも鮮明に覚えている。初めて人を殺したあの感覚を──
みたいな。
そんでその初バトルがチュートリアルになるんですね、わかります。
そんな訳で次のページからは私がこの世界にブッ込まれた回想が始まるよー。
続きを書いてしまったため、形式を変更して上げ直しました。