一緒の時間
夏休みの課題。
皆さんはいつ終わらせてます?
ちなみに自分は提出日までやらない派です(笑)
「ーーーーーーつまり、ここだけだとわからないからこっちの方程式を使ってだなーーーーーー」
「・・・・・・」
「・・・・・・おい」
「・・・・・・・・・ぐぅ」
「こらっ!」
「あいたっ!?」
「人がわざわざ教えてやってるのに寝るとはいい度胸だな、あぁん?」
「痛ったーい!だからってデコピンしないでよっ」
「五月蝿い黙れ起きたら続きだバカたれ。こっちだって寝たいの我慢して付き合ってやってんだから早く終わらせろ。」
時刻は既に午前0時から短針が二周ほど駆け抜けたころ。俺と幼馴染みの彼女の晴香は彼女の部屋で二人、勉強会をしている。
なぜこんな時間まで勉強を見ているかと言えばーーーーーー
「全然課題が終わんないよー!!」
「ギリギリまでなにもしなかったお前が悪いんだろうがっ!」
「ふえぇぇぇんっ!!」
・・・・・・なんてことはない。ただのサボっていたツケが回ってきただけである。
時期は夏、日付は8月30日。
そう。彼女の言う課題とは学生にとっての天敵である夏休みの課題のことである。
ちなみに俺は面倒なことは先に済ませるタイプなので夏休みの課題は7月中にすべて終わらせている。
「っていうか、晃はもう課題終わってるんでしょ?だったら見せてくれれば良いじゃん。そうすれば晃だってこんな風に付き合ってくれなくてもいいんだからさ」
「バカたれ。それじゃ意味無いだろ。夏休み明けには試験があるの忘れたのかよ」
「あうぅ。そうでした」
ちなみに俺たちが通う学校では休み明けには復習の意味を込めての試験があり、それで赤点を取ってしまったらそこから一ヶ月の間、土曜の休みは楽しい楽しい補習授業行きが待っているのだ。
「しかも、だ」
そう呟いて俺は晴香の横にある夏休みの課題とは別の冊子の山を見やる。
「お前の場合それらも片付けないとならんしな」
ため息混じりに彼女に言うと目の前の晴香はあごをテーブルに置いてしくしくと泣き出した。
「ううぅ、何であたしだけ特別課題を渡されないとならないのよ~?」
冊子の山、もとい彼女に渡された特別課題。期末試験があまりよろしくなかった彼女の先生がたの救済措置であるのだが、当の本人からは自分を崖底に叩き落とすのを愉悦としている下卑た笑みを浮かべる悪魔に見えたことだろうな。
本来なら夏休みのほとんどを学校での補習で潰されているところを俺が先生に必死に交渉し『俺の監督つき』ということでならと見逃して貰ったのだ。
もちろん本人の預かり知らぬところで交わされた密約であるのでこいつが知る由もないのだが。
(普段から素行も成績も優秀だとこういうとき有利だな)
とはいえせっかくくれた先生方のためにも、こいつには最低でも赤点ラインからは脱却できる成績をとってもらわなければ俺が報われない。
(なんか俺ってこいつに振り回されてるよな・・・・・・)
・・・・・・そう考えたらなんだか腹立ってきたな。
「ていっ」
「あ痛ぁっ!?」
なんとなくまた彼女の額にデコピンをかまし、涙目で睨む彼女を無視して溜飲を下げた俺はパンパンと手を叩く。
「ほら休憩終わりだ。今夜は寝かさないから覚悟しておけよ」
「うわぁ~ん、鬼~悪魔~馬鹿晃!?」
なんか凄まじいくらいにディスられたが元々今まで遊び呆けていたこいつの自業自得だ。ここは相手お前のためを思い敢えて鬼になろう。
「・・・・・・ちなみに、だが」
「ふぇ?」
「今日中に全部終わらせれば褒美として俺の手作りケーキを食わせてーーーーーー」
「頑張りますっ!!」
俺の言葉を最後まで聞かず晴香は一心不乱に目の前の課題に取り組み始めた。
現金なやつとなかば呆れ、まぁ、何だかんだでこいつに甘い俺も同じようなものかと自嘲した。
そして俺はこのバカだが放っておけない幼馴染み兼彼女である晴香のため、彼女を横目に何を作ってやろうかとこいつの喜ぶ顔を想像しながらお菓子のレシピ本を開いた。
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