狂っている友達は私の今日のご飯になった
私のお友達は狂っています。
「そう、あなたは狂っているのです」
私の事を、邪魔するのです。
「狂っているのは、君だよ」
私は、料理をしたいのに
「いいえ。 食材から離れて」
「友達を見捨てるわけないだろ」
それを、邪魔するのです。
「……はやくどいて」
「こっちのセリフだ」
生意気。
フライパンで叩いてやろうかしら。
「……ぁ……」
あら。
食材が目覚めちゃった。
台所がうるさくなるわ。
「菜摘……! やっと起きた……大丈夫か!?」
へぇ、そんな名前だったんだ。
「悪いけど、もう一回寝てもらえる?」
調理中に叫ばれちゃ困るわ。
「ひっ……嫌……」
かわいそう。
食材になりたいのに、そいつに邪魔されて悲しいのね。
「大丈夫よ」
微笑む。
「…………」
睨まれた。
大丈夫なのよ?
「きっと彼はあなたに嫉妬したのね」
傍迷惑な人。
今は、驚いた顔をしてる。
当たってるからかな?
「だから私の邪魔をしたのよ」
多分ね。
私、感は鋭い方なのよ。
「大丈夫」
私は結構大食いなの。
だから
「二人とも、食べてあげる」
残さず、すべて。
……
「よし」
オーブンの蓋を閉めた。
中には、野菜と、友達。
「いやああああああ! 出してっ! 出して出して出して!」
叫び声。
「やっぱり君はおかしい! こんなの……間違ってる!」
唐突な否定。
うるさいなあ。
「まあまあ怒らないで。 友達でしょ? 私達」
なのに、間違ってるなんてひどいよ。
やっぱり彼は狂ってるのです。
「じゃあ……ここから出してよ!」
「十分焼いたら出したげるってば。 レシピにも書いてあるもん」
せっかちな人だなあ。
「今! 今出してっ! 早く! こいつはどうなってもいいから!」
「菜摘……!?」
彼を指差して菜摘ちゃんは叫んだ。
それが友達への言葉……? 酷い、酷いよ……!
私は悲しくなった。
オーブンのスイッチを入れた。
余熱をとるの忘れてた。
しばらく、うるさかった。静かになった。
お茶を入れた。
オーブンの音が聞こえた。
「焼き終わり」
蓋を開けた。
中身を取り出した。
テーブルに置いた。
ナイフとフォークを持ってきた。
「いただきます」
食べた。
「おいしい」
食べた。 食べた。
「おいしいよ……」
食べた。
涙が止まらない。
皆さんも友達は大事にしましょうね。