『宇宙雑音 -The Fansy Noise-』 第0号(プレ発行・2014初夏)
サバンナのマドレーヌ
ここに来るのは
背骨のないお菓子だけだ。
私はこのサバンナで
ずっとそんなマ
ドレーヌばかりを
見てきた。
暗がりで自分を食べてしまう貪欲なマドレー
ヌは
ドーナツになることを夢見ながら、
しかし
その回転木馬な駆動だけは
決して、
許すことができないでいる。
同情の余
地などは
目に入らないので、
禍々しい
水色の包丁で切り
取られているそれらを、
ボクは食べたいとも思えないのだ。
そこ
からは黴も
羽根も
這えないのであり、
さらに
言えば
遥かなるサ
バンナに
ぽつんとひ
とつ落ちた、
甘い甘いマドレーヌだけが
その隣に寝ころびな
がらもまったく腹の鳴ら
ないでいるライオンを
責めることのできる唯一の洋菓子なのである。