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篠塚雅宗青年の苦笑

今朝はハルに会わなかった。

いつもハルに会う時間に寮を出たのに…。

ああ見えて、時間には気をつけているハルがこの時間になっても登校していないことに少し心配になる。…過保護すぎるだろうか。

「お早う」

「お早う、遊」

色々と考えていると遊が教室に入って来た。少し、眠そうだ。俺の隣、つまりハルの席に座ると手に持っていた袋からサンドウィッチを取り出し、食べ始める。

「朝食、食べてないのか?」

「寝過ごしたから。これはさっき購買で買ってきたやつ」

そういえば遊も、来るのがいつもより遅かった。…俺がどれ程ハルしか見えていないのかよくわかるな。思わずため息をついてしまうと遊がこちらをちらりと見やる。

「ハルはまだ来てない?」

「ああ」

「へぇ、珍しいね。…だから若干落ち着かないんだ。雅宗は」

「…まぁ少し心配ではあるな」

苦笑しながら正直に答えると呆れたような顔をされた。

「過保護だね。この前だってハルをからかった2年を脅してただろ」

ハルは見た目も言動もとにかく目立つ。人形の様に整った生気の希薄な容姿をしているが、それに反して瞳は力強い生命力に輝いている。その矛盾に、いや、アンバランスというのか。とにかくそれに人はどうしようもなく惹かれる。そして不安に襲われる。得体の知れない恐怖を抱く。

そういった人間にハルはよく絡まれている。自分の中に生まれた恐怖心を誤魔化すためにハルに突っかかり、人間らしく動揺するのが見たいのだ。

「まだ脅してはいない。忠告と言ってくれ」

「過保護だな。ちなみに二度言ったのはわざとだ」

自分でもそう思うが、仕方が無いだろう。

ハルは目を離すと何に首を突っ込むかわからない。こちらも楽しませてもらっているので大人しくしていろとは言わないが、目の届く範囲にいてほしい。いざという時に守れないじゃないか。

「…なんて、おこがましいよな」

「ん?何か言った?」

「いや、なんでもない」


ハル、貴方は知らないでしょうが昔は遠くから見守るだけでよかったんです。なのに、貴方の季節に貴方と言葉を交わして、俺は欲深くなってしまった。

…どうしようか?

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