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だいよんわ おひめさまのぼうけん ちゅうへん

「ここが、あの男のハウスね!」

「お姫、そのネタは今の若い子はわからないよっ!」


 お姫様たちは、ついに件のパン屋さんの近くまでやって来ました。

 いよいよ魔女の思い人の顔を見ることが出来るのです。

 ですが、あせってはいけません。

 不用意に近付いて感づかれては、パン屋さんに見つかってしまうかも知れないからです。

 そうなったら、お姫様たちが街に来ていたことを、魔女にチクられるかもしれません。

 お姫様たちが自分達だけで街に言ったことを魔女が知ったら、大変なことになってしまいます。

 もしかしたらショックのあまり、気絶してしまうかもしれません。

 真っ青になって慌てる魔女の姿もちょっと見てみたいお姫様でしたが、それはさすがに可哀想です。

 ですから、ここは見つからないように接近するのが得策です。

 でも、パン屋さんはお昼にも拘らず繁盛しているようで、人も多く接近は難しそうでした。

 この国では朝と夕方の一日二回パンを焼くのがスタンダードなので、この時間でもお客さんが居るのは繁盛店の証拠です。


「なー、ねーちゃん。見つからないようにいくって、どうするの?」

「アンタ本当におばかね! さっき言ったでしょ、魔法で小さくなっていくのよ!」


 上空で少し話題に上っただけだったのですが、それだけで察することが出来ないといけないようです。

 お姫様は壁から少しだけ顔を出してパン屋さんを睨み付けながら、ペチペチとバーニカを叩きます。


「いたいよー、ねーちゃーん!」

「痛いってことは、生きてるって事よ」

「そっかー! 俺、今生きてるんだー! すっげー!」


 バーニカは物事をあまり深く考えない性質なようです。

 ひとしきり観察を終えると、お姫様はいよいよ行動に移ります。

 魔法の呪文を書いたメモ帳を、ポケットから引っ張り出します。

 ぺらぺらとメモ帳をめくると、お目当ての呪文を見つけました。

 お姫様は咳払いをすると、早速呪文を唱えます。


「深く深淵に沈む古の記憶よ。忌み嫌われ恐れられ、永久の彼方に封じられた力の僅かな一欠けらよ。現世に我が肉体に干渉し、暫しの間変質させよ。求めるは小さき姿。僅かな暗がりに紛れるもの。音も無く近付くもの。物陰から気配も無く現れるもの。忘れ去られたその姿に、我が肉体を組み替えよ。魔力の胎動。力の奔流。純然で清らかなる波動! ミニマム!!」


 呪文を言い終わると同時に、お姫様の体からどす黒い霧のようなものが放たれます。

 そはお姫様の姿を多い隠してしまい、どんどんと小さくなっていきました。

 あっという間に掌サイズになった黒い霧が晴れると、なんとそこには掌サイズになったお姫様の姿があったのです。

 お姫様が今使ったのは、身体を小さくする魔法だったのです。


「ほら、ぼけっとしてないでアンタも小さくなりなさい!」

「いたいよねーちゃーん。蹴らないでよー」


 小さくなったお姫様に足を蹴られながら、バーニカも魔法を使います。


「えーっと、なんだっけ、えーっと、そーだ! みにまむー!」


 魔法の名前を口にしたとたん、バーニカの体は見る見る小さくなります。

 そうです、魔法には別に呪文なんて必要なかったのです。

 その現象を起こそうという強いイメージと、発動キーになる名前さえ唱えれば、魔法は効果を表します。

 お姫様が唱えていた呪文や、体から発散された黒い霧は、別に必要ないものなのでした。

 というか、呪文はお姫様が自分で考えたもので、黒い霧もお姫様が必要ないのに発生させたものだったのです。

 なぜお姫様がそんな事をしたかといえば、とても大切な理由があるからでした。

 そのほうがカッコイイと思うからです。


「まったく。アンタは相変わらず分かってないわね。魔法って言うのはもっとかっこよく使わないといけないのよ」

「えー、なんでー?」

「おあほさんなアンタにもわかるように説明してあげるわ。魔法って言うのは、多くの愚民にとっては不思議で理解できない現象よ。着火魔法なんかは道具があれば使えても、どういう理屈でそうなってるかなんて分からないのよ。それでもその効果はよーく知ってるわ。魔法の恐ろしさもね。だからそれっぽく演出して、それっぽい言葉をつけてやれば、より恐怖心を増長することが出来るの。恐怖は支配を強固にするわ。魔法による恐怖での支配。その為にはかっこよさが必要なのよ」

「へー、すっげー!」


 すごく感心した顔をしているバーニカでしたが、話の内容は難しすぎて良く分かっていませんでした。

 ただなんとなく、かっこいい方がみんな感心して言うこと聞いてくれるのかな、と思った程度です。

 お姫様の説明は中二病の症状が九割だったので、本質的には大体あっていました。

 恐怖云々と口には出していたお姫様でしたが、一番大事なのはやはりかっこよさだったのです。

 一見会話が成立していないように見える二人でしたが、同じおっぱいを飲んで育った絆は我々の常識を遥かに超越するものだったです。


「よし! じゃあ、さっそくいってみようよっ!」

「僕達がー、乗せてあげるねー」


 リスとフェアリードラゴンがお姫様たちを背中に乗せます。

 二人とも小さくて見つかりにくく、且つ高機動なのでこういったスニーキングミッションにはぴったりです。

 リスはバーニカを乗せ、壁の上を走ります。

 フェアリードラゴンはお姫様を乗せ、空を行きます。

 すっかりドラゴンに乗る姿が板についているお姫様です。




 お姫様たちは、誰にも気が付かれること無くパン屋さんに接近することに成功しました。

 小動物であるリスとフェアリードラゴンは、屋根や建物の影を上手く使って動くことに慣れているのです。

 屋根の上から屋根裏へともぐりこみ、天井の隙間からこっそりと中を覗きます。

 お店の中には沢山のパンと、何人かのお客さん。

 そして、にこにことしたメガネの男性と、エプロンをつけた女の子が居ます。


「柔和そうでいっつもにこにこしてるっぽい顔ね。落ち着いた声質も人当たりのいい外見も、まぁ及第点って所かしら。イケメンやかっこいいと言うよりも、好青年とか優しいお兄さんって感じね」


 お姫様のイケメンチェックが炸裂します。

 なかなか的確な評価に、リスとフェアリードラゴンは関心の声を上げます。


「で、あっちの店員の小娘が妹ね。ぽやーっとしたいかにもおっとりとした天然っこですみたいな顔してるわね。あの足取りや体重の移動の仕方はガチみたいね。あんな生物がこの世に実在していただなんて驚きだわ。ていうか何よ胸部に付いた肉の塊は。人間の頭ぐらいあるじゃない。もいでやろうかしら」


 どうやらお姫様は大きなおいっぱいが御気に召さないようです。

 体から若干黒い霧のような魔力を放っていますが、気が付かれない様に極力気を使っているので、放出量は抑え目です。


「お姫、乳はほっとけばそのうち大きくなるよっ!」

「でもー、先代の予測機だとー。希少価値ってでてたよねー」


 先代の森の魔法使いは、様々な道具を発明していました。

 その中の一つが、「乳将来性測定装置」です。

 遺伝的要素や現在の生活状況、そしてエロさから将来のおっぱいのサイズを魔法の道具で、その的中率は100%でした。

 世界の因果律や法則を捻じ曲げるほどの力を持っていた先代でしたので、おっぱいの将来のサイズを見抜くことなど簡単だったのです。

 その「乳将来性測定装置」を使ったところ、お姫様にもたらされた結果は以下のようなものでした。


 強く生きろ! 希望はそこに有るものさ! 希少価値を愛する紳士を狙えっ!


 お姫様は、無言で「乳将来性測定装置」を殴りつけました。

 ですが、どうやら先代魔法使いはその装置を痛く気に入っていたらしく、「破壊絶対不可」の魔法をかけていたのです。

 殴りつけるたびに、お姫様は逆に自分の拳をいためることに成ったのですが、それでも構わず小一時間ほど殴り続けました。

 ちなみに魔女がお姫様ぐらいのときに使用した際出た結果は「デカメロン伝説」でした。

 今では魔女は、立派なデカメロン伝説です。

 魔女のであれば許すことが出来るお姫様でしたが、他の大きなおっぱいは受け付けないようです。

 お姫様は、ギリギリと歯を食い縛りながら目を血走らせ、妹さんの大きなおっぱいをにらみつけます。

 そんなお姫様を見ても、誰も引いたりしません。

 慣れたものだからです。


「あれ? あの人、騎士のひとじゃない?」


 バーニカが指差したのは、店に入ってきた鎧姿の男でした。

 竜鱗と思しき素材で出来た軽鎧を着込んだ姿は威圧的では有りましたが、その表情は何処かへらへらとして緊張感が欠片も感じられません。


「何あのへらへらした男。って、ヤダあれ、王都の王太子近衛特務部隊の鎧じゃない!」

「なー、ねーちゃーん。その、オウタイシコノなんとかってなーに?」

「アンタほんとおバカね、っていいたいところだけど、これは知らなくても仕方ないわね。殆ど森の外の事なんて習わないんだから」


 お姫様たちはホシネズミにいろいろな勉強を教わっていましたが、人間社会の事はあまり教わっていませんでした。

 森の中で生活をしている分には、そんな知識は必要が無いのです。

 毒キノコの見分け方や、おいしい山菜の見分け方のほうが、よほど役に立つのです。


「いーい? 今の王様は正室との間に、八人の子供が居るの。私がその末っ子なのは知ってるでしょう?」

「うん、しってるー」

「ということは、私の上には七人兄と姉が居るって事なの」

「へー、すっげー」

「男は三人居て、それぞれ王位継承権を持っているわ。長男は退屈な男で、落ち着いてるといえば聞こえはいいけど事なかれ主義の面白みの無い男よ。次男は気でも狂ったんじゃないかって感じの堅物で、長男を守り立てることしか考えてないわ。問題は、三男なのよ」

「兄弟多いんだ、すっげー!」

「他の二人と違って、三男は少しは頭が回るタイプなのよ。上の二人を使えないと思ってるらしくて、自分が王になろうとしているらしいのよね」

「えー、そんなことしたら喧嘩になるじゃんかー」

「その通りよ。血みどろの喧嘩になるわね。三男はもうその為の用意をし始めたのよ。このあたりは政治的に不安だから、護衛である近衛騎士団を増やす必要があるとか、それを一軍団とすれば戦時の戦力としてもカウントできるとか言って新造したのか、近衛特務部隊よ」

「へー。でもそれだと、長男とか次男とかも兵隊持つんじゃないのー?」

「長男は次期王様、次男は万が一のスペアよ。戦場に出ることはあっても予備兵力扱いになるわ。それに比べて三男ならいっくら死んでも構わないわ。それを逆に利用して、危険な戦場に何度もいって兵力を割り振らざるを得ない状況を作り、その兵士達を屈強に鍛え上げたのよ。長男次男の近衛特務と三男の近衛特務とでは月とすっぽん。素人と玄人の差があるわ」

「すっげー! それで、あの鎧の人もそのなんたらこーたらーっていうのの人なの?」

「アンタ本当に固有名詞覚えないわね。そうよ、あの鎧は近衛特務部隊の制服みたいなものね。頭が二つある馬の紋章を付けているでしょう。アレは次男の近衛特務部隊の印よ。次男の性格のせいで、今じゃ機密諜報局みたいな仕事してるわ。秩序だなんだ御託並べて、結局は長男を守り立てて国を安定させることしか考えてない狂信者見たいな奴等よ、次男もあいつ等も」

「へー、すっげー! でも、なんでねーちゃんそんなことしってるの?」

「私の稼ぎ口が株式だけじゃないからよ。全く、あのトカゲ野郎のせいで何度煮え湯を飲んだか。何時かもっと力を蓄えたら必ず地べたをはいずらせて泥水を啜らせてやるわ。その上でブレスで両手両足を炙りまくってやるのよ」

「へー、すっげぇー!」


 いまいち会話が成立していないようにも聞こえますが、バーニカはお姫様の話をあらかた理解していました。

 文字通り姉弟の様に育った二人だからこそ成り立つ荒業なのです。

 お店の中に入ってきた鎧を着た男に、パン屋さんの妹が手を振っています。

 店長の青年も、にこにこと笑いながら片手を挙げました。

 どうやら、鎧を着た男は二人の知り合いなようです。


「こんにちは、ソルクスさん! お昼休みですか?」

「はいはい、こんにちは。そうだよー。ハルに飯作ってもらおうと思ってね」

「あー、またお給料全部使っちゃったんですか?」

「あっはっはっは! 頼れるものは幼馴染ってね!」

「まったく、相変わらずだなぁ。でも、まだ俺たちは昼なんて食べないぞ?」

「うえ、マジか!」

「いいよ、兄さん。先に作ってきて? 私一人でもこの時間なら大丈夫だから」

「うわーい、リンちゃんマジ天使!」

「まったく。じゃあ、頼もうかな。リンの分も用意しておくから。直に変るから、待っててね」

「大丈夫だよ。ゆっくりしてきてね」


 鎧の男、ソルクスと、パン屋さんの店長、ハルは、お店の奥へと入っていきます。

 お姫様達もそれを追って、店の奥へと移動します。

 友人と二人での会話を聞けば、きっと人となりも分かりやすいでしょう。

 油断している姿をつぶさに観察してやろうと、お姫様は邪悪な笑顔を浮かべるのでした。




「リンちゃん、随分大きくなったな」

「ああ。もう立派なおねぇさんだよ。なんていったら、怒られるかな。もうそろそろ結婚してもいい年なんだし」

「歳、離れてるからな……。まだ、気が付かれてないのか?」

「ばれてたら、こんな風にはしていられないよ」

「そんなこと無いだろう。それに、お前の仕事は第二王子から賜った立派な仕事だ。お前のお陰で、何人の人が助かってるか考えろよ」

「それでも、人殺しは人殺しだよ」

「国家の指示を受けて悪党を殺す人殺しだ。お前が殺してきた奴が何をしてきたか、分かってるだろ?」

「ああ。分かってる。分かってるよ」


 二人の会話を聞いていたお姫様達は、なんともいえない微妙な表情で凍り付いていました。

 唯一状況を理解できていないバーニカだけは、いつものぼけっとした顔をしています。

 流石のリスとフェアリードラゴンも、あまりの事態にボケることができません。

 お姫様は眉間に皺を寄せて冷や汗をかきながら、ゆっくりとため息をつきます。


「なにこれ。なにこれ、どういう状況なの」

「ねー、ねーちゃーん。あの人暗殺者なのー?」

「ちょっと黙ってなさい。ねーちゃん今ちょっと混乱してるから。アメあげるから食べてまってなさい」

「うわーい! わかったー!」


 バーニカはお姫様からもらったアメを舐め、ご満悦です。

 そんなバーニカとは対照的に、お姫様たちは目の前の状況にどう対応するか必死で頭を回転させています。


「これってー、凄くまずい状況かもー」

「まて! 冷静になるんだっ! 友達同士のジョークかもしれないよっ!」

「そ、そうよね。こういうときこそ冷静になるべきよね。とりあえず、もう少し様子を見ましょう」


 結局お姫様たちは、状況を見守ることにしました。

 このときお姫様たちは、まさかあんなことになるとは思いもしなかったのです。

今回で終わると思った?

残念! 中編でしたぁー!(ばばーん


そういうわけで謎の展開です。

パン屋さんの正体は!

お姫様は無事帰ることが出来るのかっ!

待て次回!!

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