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DEADLY SIX  作者: 七鏡
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狭間の次元。あらゆる世界から隔絶された、存在しない世界にある歪な城。

そこにはこの世の理からはずれし六人の住人が住んでいる。通称デッドリーシックス。それが彼らの名前だ。

人間や神の定めた法に従わぬ悪魔や悪霊など、超常の存在を倒すために集められた超常の存在たち。

数世紀を生きる魔女や吸血鬼、元悪魔祓い、正体不明のミイラなど、それを構成するメンバーは一癖も二癖もあるものばかりである。

その集団のリーダーにして、D6の下の組織、セクター666にも所属したミズ・デッドリー。外見こそ十代後半の少女だが、数世紀を生きる魔女である。バチカンの禁書庫にあるとある本によると、彼女は少なくとも17世紀後半から活動しているという。魔女狩りを生き延びた彼女は、その後の魔女たちの祖となったとされ、現在いる魔女の大半が彼女の魔術体系を直接的・間接的に受け継いでいるとまで言われている。

彼女がいつごろ、教会に協力するようになったかはわからないが、1955年の非公式な「悪魔および超自然現象に関する国際会議」において、その姿を確認できる。

1999年、セクター666壊滅後、彼女は教会と彼女自身の意思でD6を結成した。

しかし、ミズ・デッドリーの思惑も真意も、誰にも知ることはできない。


ミズ・デッドリーの魔力で作られた歪なデッドリー城はいくつもの部屋がある。

部屋の内部も混沌としており、ある部屋は幼女趣味の部屋。ある部屋は仮面ばかり飾られ、またある部屋は大きな一つ目の目玉が置いてある。部屋に入ったと思いきや、扉の前に戻されたり、荒野の砂漠に放り出されたり、と不可解な現象ばかりに逢う。デッドリー以外の住人達はそう言った部屋に入り込まないように、細心の注意を払っている。

しかし、部屋の配置はデッドリーの気分なのか、なんなのかは知らないが、入れ替わったりする。自分の部屋の位置に、そう言った不可解な部屋が来る、と言うこともたびたびある。

メンバーからすれば文句も言いたいところだが、彼らはそれを言うことはしない。ミズ・デッドリーは強い魔女であるし、仮にこの城から出たとしても、教会の監視がつくだけ。それならばいっそ、開き直ってここにいたほうがましだ、と言うわけなのであった。



円卓に座る六人。

彼らが個々に今座っているのは、新たな任務の説明があるためだ。

彼らに任務を与えるのは、主にバチカンのカトリック教会だ。とはいえ、バチカンのみならず、あらゆる宗教や霊能者の依頼までこなす。時には国連の要請もあったりする。これはセクター666時代の名残であろう。

今回の任務の説明のために招集をかけたのは十分ほど前だ。だが、メンバーの大半は今来たばかりだ。

基本的にここにいる者たちは自発的にここにいるのではなく、ある種の罰や対価としてD6に所属しているにすぎない。

ミズ・デッドリーはそれも仕方がない、とため息をつき、自身の左から面々を見る。

銀髪の青年、ジョン。吸血鬼。

大柄の男、アントニオ。元悪魔祓い。

全身包帯の謎の存在、プトレマイオス18世。詳細不明。

半裸の美女、マダム・ヘカテ。同じく詳細不明。

黒髪黒目の少年、カーズ。人間と悪魔のハーフ。

そして、ミズ・デッドリー。魔女。

これがデッドリーシックスの構成員である。

「さて、全員そろったようだから、説明を始めるわ」

デッドリーはきびきびとしたよく通る声で言う。

「今回の敵はこれよ」

そう言い、デッドリーが右手を翳すと、円卓の中心にホログラムが浮かぶ。

ホログラムとして浮かんできたのは、若い一人の男であった。非常に整った顔で、前と後ろに長く垂れた黒い髪。目は真っ黒で瞳と白目の境は存在しない。その外見だけで、人間ではないことは簡単にわかる。

「これは?」

アントニオが表情を変えず、低い声で問う。

「日本にいる神よ」

もっとも、とデッドリーは息をつく。

「日本には、いくつもの神がいて、八百万の神と言われるほどだけれどね。まあ、私たちの感覚で言えば、妖精とか精霊という感じかしら」

唯一神、という概念のない日本人の感性にデッドリーも最初は違和感を感じたものだ。

「それで、その八百もいる神のうちのそいつがどうしたってんだ?」

ジョンがイライラしながらデッドリーに聞く。彼は短期でいつもイライラしている。

「この神が今、日本で暴れているそうなのよ」

「それはまた」

ヘカテが薄ら笑いを浮かべる。

「誰の依頼?日本の陰陽師?」

ヘカテの問いに、デッドリーは首を振る。

「アマテラスだよ」

デッドリーの答に、ヘカテとアントニオが驚く。ジョンとカーズは誰だ、それは、と言う顔でぽかんとする。プトレマイオスは相変わらず動きもせずそこにいる。

「誰だ、そりゃ?」

「八百万の神の頂点にいる神よ」

「そんな奴と知り合いなのかよ」

「まあ、ね」

デッドリーはそう返すと、コホン、と咳をして話題を戻す。

「今回の任務は、この神、アマツミカボシの退治よ。極力戦闘は避けるようにとのことだけど、最悪殺しても構わないわ」

「で、そいつの特徴は」

アントニオが言うと、ジョンが嗤う。

「おいおい、所詮精霊だろう?俺一人で十分だよ、このジョン・アーヴィング様一人でな」

「彼の能力は星落としよ」

「は?」

「星、とは言うけど、実際は隕石を落とすだけ。地球の引力圏にある隕石を自在に操れるそうよ」

そう言って、ジョンを見るデッドリー。

「さすがのヴァンパイアでも、隕石は無理じゃなくて?」

「・・・・・・・・・・」

「では、我々も打つ手はないのでは?」

「いいえ」

アントニオの言葉にデッドリーは首を振る。

「彼の星落としには時間がかかる。それに、所詮彼は一人よ。私たちがうまくやれば、どうにかできるでしょう」

そう言い、デッドリーは作戦を話す。

「まずはアマツミカボシを世界そのものから引きはがす」

つまりは、異なる次元に彼を連れていく、と言うことだ。

日本の神の中でも強力なアマツミカボシだが、その力は自身の所属する世界に限られる。

たとえば、彼が地獄にいったとしても、彼の星落としはそこでは発動しない。そこは彼の所属する世界ではないからだ。もっとも、彼が死亡して地獄の住人となれば別だが。

「私以外の全メンバーで足止めをする。星落としを阻み、私への攻撃を防ぐ。その間、私がアマツミカボシを異次元に送り込むための魔術を組む。魔術発動後、アマツミカボシの最大の攻撃手段はなくなる。そこを後は片つける。いたってシンプルな作戦よ」

そう言ってジョンを見る。これなら馬鹿でもわかるだろう、と言外に言われているようで、青年は舌打ちをする。

「しかし、そう簡単にいくものか?」

「心配はわかるわ、アントニオ。でもまあ、やるしかないでしょう」

「そもそも、日本にも神は大勢いるんだろう?そいつらがどうにかすればいいじゃねえか」

ジョンが言う。

「それは無理よ。今の日本の神はほとんど力のない状態なのだから。信仰の薄い今の世界ではね」

デッドリーはそう言うと、一同を見る。

「さて、それでは説明も終わったから早速行動と行くわよ」

デッドリーは一同の了承もとらずに詠唱を始める。ジョンが文句を垂れるが、耳を貸さない。

デッドリーの詠唱が終わり、六人の姿が円卓から消える。




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