表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

震災から15年

作者: シンジ
掲載日:2026/01/08

十五年。彼にとって、その時間はまるで巨大な石碑のように、彼の人生に立ちふさがっていた。

津波がすべてを奪った、あの日。

結婚二年目を迎え、ようやく二人だけの生活に慣れてきた頃だった。

新しい家具を揃え、お互いの両親を招いて食卓を囲む計画を立てていた。

小さな幸せが、手のひらに溢れる砂のように、あの日一瞬で消えた。

あれから十四年が経ち、彼の人生は大きく変わった。

仕事では責任ある立場につき、かつての友人たちも、家庭を築き、子どもを育てている。

彼の周囲には、新しい生活を始めるよう促す声がいくつもあった。

しかし、彼の心は、あの日の瓦礫の下に埋まったままだった。

彼は、彼女の遺品を、まるで宝物のように扱っていた。

古ぼけたアルバム、彼女の字で書かれた手紙やメモ、そして、結婚する前に彼女に送った腕時計。それらに触れるたび、彼女の温もりと香りが蘇るようだった。

しかし、そのすべてが、彼女がもういないという冷たい事実を突きつける。

彼は、時折、鏡の中の自分を見つめる。

四十歳を過ぎた自分。少しずつ白髪が混じり、目尻に深い皺が刻まれている。

彼女は、もし生きていれば、どんな姿になっていただろうか。その答えのない問いが、彼の心を苛む。彼女は、永遠に二十代のまま。

歳を重ねていく自分との間に、埋められない溝が広がっていく。

この十四年間、彼は「もしも」の世界で生きてきた。

もし、あの時、彼女のそばにいれば。もし、あの時送り出していなければ。

そして、もし、彼女が今も生きていれば、どんな未来があっただろうか。

その思考は、彼を安らぎから遠ざけ、過去の呪縛に縛り付ける。

しかし、最近、彼は少しずつ変化を感じていた。

悲しみや後悔だけでなく、感謝の念が芽生え始めていた。

彼女が彼に残してくれた、短くも愛に満ちた時間への感謝。

そして、彼女が彼を愛してくれたことへの感謝。

このまま、彼女との思い出を抱えて生きていくのか。

それとも、新しい一歩を踏み出すのか。

彼の心は、二つの選択肢の間で揺れ動いていた。

それは、どちらを選んでも、彼女への裏切りになるのではないかという、深い葛藤だった。

彼は、愛する人を失った痛みと、それでも生きていかなければならない現実の間で、ただ、立ち尽くしていた。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ