秋になったら
楓は茅秋からの返事を心待ちにしていた。
今日来るはずだったのに、
夕方急な土砂降りになった。
楓「茅秋くんとカスミ、大丈夫かな。風邪ひいてないかな…」
雨を見つめながら
カスミからの配達を待つ日は続く。
ようやく晴れたと朝日を感じ窓を見つめると、
病室からでもよく見えていた金木犀の花が
落ちてしまっていた。
楓「台風はいつも金木犀まで連れて帰るのね」
そう言いながらカスミが来るのを心待ちにしていたが、来なかった。
毎日毎日、時々名前を呼んでみたが、
カスミが来ることはなかった。
楓「台風は…金木犀も、カスミと茅秋くんさえも連れて帰るの?やっと出来たお友達なのに…」
悲しい気持ちと並行してどんどん
視界がぼやけてきて、涙がたくさん出た。
目が熱くなるほどに。
母「どうしたの!?どこか痛いの?!」
お見舞いに来た母が泣いている楓を見て
慌てた様子でいる。
楓「心が痛い」
母「ええ?!心臓…ナースコール押さなきゃ!」
楓「そうじゃないの!違うの!人を想うと…茅秋くんとカスミを想うと心が痛むの」
母「ああ…よかった……はぁ…なんだ、それ恋じゃない」
楓「え?これって恋なの?だってまだ会ったこともない、顔も見たことない人だよ?」
母「そりゃあ顔を知ってから関わっていって恋をするのが主流かも知れないけどさ。顔を知らなくても心が通じ合ってるじゃない。立派な恋よ」
母にそう言われて
最近ずっと茅秋の事を考えてしまうのも、
深いため息を頻繁についてしまうのも、
手紙を読み返してにやけてしまうのも、
毎日毎日胸が苦しいのも
一括りで恋のせいだと気付かされて
身体中が熱くなり、手で顔を覆った。
楓「お母さん、私茅秋くんとカスミに会いたい。また金木犀が咲く頃になったら手紙来るかな」
また溢れそうになる涙を必死で堪えながら
母に尋ねた。
母「そうね、きっと来るよ。でもずっと顔を知らないまま、たとえ来年会えたとしても金木犀が枯れたらまた次の秋をここで待つの?」
楓「…嫌だ。もう待ちたくないよ。次の秋までに私、絶対ここを出て茅秋くんに会いたい!ねえ、私秋までに自分の力で歩きたい!」
母は少しだけ泣きながら笑顔を見せて頷いた。
母「事故にあってから初めてね、楓からそんな前向きな言葉が聞けたのは。貴方が彼に会えるように、お母さん何でもするわ。先生にも相談しましょうね」
楓は母の言葉の暖かさに、涙を抑えきれなかった。
先生に相談し、次の日から少しずつ
自力で歩けるようにリハビリを始めた。
半年間のブランクは想像以上で、
思うようにはいかない。
長いようで短い、自ら決めた[来年の秋までに]
という目標が時に楓を苦しめ、励ました。
毎日ただ地道に、ひたすらに
茅秋くんに会える日を信じて。




