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枯れるまで


カスミは楓の元へまた配達に訪れた。




楓「伝書鳩みたい!凄い!今日もありがとね」



カスミに感謝を伝え、写真と手紙を眺めた。




楓「え!?同い年じゃん!これ運命なんじゃない?こんなの少女漫画だよ!というか名前…何て読むんだろう?綺麗な漢字…」



楓は心臓に手をあてて深呼吸し、

気持ちを落ち着かせながら

何を撮ろうか辺りを見渡した。





ここから5日間ほど、2人のやりとりが続いた。





楓【こちらこそ、よかったらお友達になってください!ねぇ、同い年だよ!凄い偶然!びっくりだよ。お名前、綺麗な漢字だね。なんて読むのかな?】








茅秋【よっしゃ!友達成立!しかも同い年なんて凄いよ。全部カスミが写真を届けてくれたおかげだね。まるで少女漫画みたいだよ。名前は ちあき って読みます】








楓【ちあきくん、素敵な名前。秋がついてるね。私の楓って名前も秋生まれにちなんで季語にしたんだって。茅秋くんってどんな雰囲気の人なんだろう。知りたいな。】








茅秋【かえでちゃん、由来も素敵で可愛い名前だね。俺も秋生まれなのが由来だよ。誕生日も近かったりして。10月15日生まれ、黒縁メガネをかけた175cmの普通の男子高校生です】








楓【可愛いだなんて嬉しすぎる…初めて言われた。ありがとう。私は10月1日生まれで、髪は鎖骨位までの長さ。160cmの普通じゃない女子高校生です。誕生日も近くてびっくりだよ!】








やり取りをしていく中でお互いを少しずつ

頭の中で形にしていった。




楓からの手紙を受け取った茅秋が

早速返事をしようとした時、

天気予報にはなかった突然の土砂降り。




仕方なく家に帰り、飼い猫の寝顔を撮影した。




手紙を書こうとしたが、

少し引っかかった事がある。




楓からの手紙に書いてあった

「普通じゃない女子高校生」の部分だ。




ふざけて書いたようにも取れるが、


妙に引っかかる。




茅秋は


【少しずつ楓ちゃんがどんな子かわかってきて嬉しいよ。ねえ、普通じゃない女子高校生なんて自己紹介聞いた事ないから気になるよ、どう普通じゃないの?俺はどんな楓ちゃんでも友達でいるから】



と書き、


窓から見える雨を眺めながら[普通じゃない]の

意味を考えた。




もう頭の中である程度完成されている

楓ちゃんは本当はどんな子なのかと。





どんな子でも受け入れたい



そう素直に思う自分の心に手をあてて

これが恋ってやつなのかとしみじみ思った






早く手紙を届けたい




返事が欲しい



ベッドに寝転がり、

小さい頃天井にいたずらで書いた

一つの星を見つめながら、彼女の事を考える。




まるで耳元に心臓があるかのように、

鼓動が高鳴っていた。





そんな茅秋の想いを裏切るかのように

雨の日は続き、

台風まで来て、やっと晴れたと思えば

一週間も経っていた。




いつもの病院へ向かうと、金木犀の花は落ち、

木の下にはオレンジの絨毯が広がっていた







茅秋「花、全部落ちちゃったか…なんで台風の時期に咲くんだろう。それが儚くてまた魅力的なんだけれど」



寂しそうにため息をついて

金木犀の周辺をぐるぐる回る。




カスミを探して。






いつも居た樹の根元にも、付近にも、

どこにもいない。




茅秋「カスミー!どこにいるんだー!」




叫んでみても、3時間ほど待っても、

カスミは来なかった。





それから1ヶ月程は毎日通って


カスミを探したが、現れなかった。



カスミは金木犀と共に消えた。






もしかすると金木犀が咲く時期にしか

ここに来ない鳥なのかも…



カスミを待つ日々が

そう悟らせてくれたような気がした。


茅秋は諦め、先は長いが1年間秋を待った。







次やり取り出来る日まで





楓ちゃんと会える日まで






沢山写真を撮っておこう。



秋まで無駄にしたくない。


いっぱい見せたいんだ。






茅秋は秋を心待ちにしながら、


毎日被写体を探しては

カメラを向ける日々を過ごした。




金木犀が枯れるまで続いた2人のやりとりを

胸に、淡い期待を寄せながら。







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