楓
翌朝の事。
寝返りをうつと体に朝日を感じ、目を覚ました。
チュンチュンという鳥の囀りを聞き、
「カスミ!?」
と窓際に向かって叫んだ。
窓の縁でカスミが鳴いていた。
首に何かを掛けている。
タイミングよく朝の回診にきた看護師さんに
窓を開けてもらい、カスミを出迎えた。
看護師さんは
「鳥がいるね。入って来たら外に返すのが大変だから少しだけ開けるね」
そう言って病室を出て行った。
カスミは首を傾げながら待っていて、
看護師さんが居なくなってから
ベットの柵に止まった。
「賢い子。病室に入ってるのを見られたら窓を開けられなくなるものね」
そう言いながら首にかかっている何かを
手に取って見た。
「え!?写真がケースに入って帰ってきた!」
もう戻ってこないと思っていた
あの空の写真が戻ってきたのだ。
ケースに入っていることで、
誰かが見てくれたのだと嬉しくなり口元が緩む。
写真を取り出した後、
まだケースに何かが入っていることに気付き、
取り出してみた。
「何これ…手紙かな」
ノートの1ページが丁寧に折られた
手紙らしき物を広げる。
そこには
【とても綺麗な空ですね。俺主催コンテスト、最優秀賞を授与します】
と書かれていた。
「えー!褒めてもらえた!しかも俺って!うそ!」
嬉しくて、少し照れくさくて、顔が熱くなった。
相手が男の人だと分かり、
どんな人かなと頭の中で
理想の王子様を思い描いた。
(背が高くて…黒縁メガネをかけてる人がいいなあ。)
ピンク色の想像をしているとカスミが
チュンと一声鳴く。
はっと我に返り、写真を願い通りに届けて
また戻ってきた来たカスミを褒めた。
「本当に賢い子!ありがとうね。ねえ…返事を書いたらまた届けてくれる?私この人とお友達になりたいなって。」
カスミに聞くと、また一声鳴いてくれた。
うん!と背中を押すように。
私は飾っておいたポラロイドカメラで
カスミにピントが合うように、
背景には花瓶の花だけが映るように1枚撮った。
出てきたカスミの写真の裏に、彼へ手紙を書いた。
【最優秀賞、とても嬉しいです。ありがとう。写真を撮るのが趣味なの。誰かに見て欲しくてこの子に頼みました。まさか本当に届くなんて…手紙を届けてくれたこの子の名前はカスミです。 楓より】
そう書いて、カスミの首にかかっている
カードケースの中に写真を入れた。
「カスミ!昨日と同じ人へ届けて欲しいの。お願い!」
カスミは少し間を置いてからホッピングをし、
窓から飛び立った。
カスミの背を指を組みながら見送る。
お願いします…と心で呟きながら。
『楓〜!ケーキ買ってきたよ〜!』
お見舞いに来た母の声が聞こえてびくっとする。
そして、この夢みたいな出来事を聞いてほしくて
私は入院してから初めて声を弾ませ、夢中になって話をした。
母はそんな私の姿を見て、少し目を潤ませながら
嬉しそうに話を聞いてくれた。
『お返事、きっと来るよ』と。




