おれ
秋になると、学校終わりに自転車を走らせて
病院の前にあるでかい金木犀を見に行くのが
中学生の頃からの俺のルーティンだ。
金木犀が咲く時期は台風が多くて、
あっという間に花が落ちるから
毎日かかさず秋を感じに行く。
自転車を置き金木犀の根本に腰をかけ、
深く息を吸った。
「これがやめられないんですよ。ずっと咲いていたらいいのに」
そういいながらポラロイドカメラを
下から見上げるようにして
金木犀を撮った。
カメラから出てきた金木犀の写真を見ていると、
足元に白い小鳥が近寄ってきた。
その小鳥は一枚の紙を咥えていた。
「綺麗な鳥だな。なに食ってんの?見せてよ」
小鳥は少し間を置き、ホッピングしながら
俺の手元に来た。
「写真…?なにこれすげー綺麗じゃん!いい写真!どこから持ってきたの?」
カメラが趣味だからいろんな写真を
撮ってきたし、見てきた。
その中でも凄いと思える綺麗な空だった。
この小鳥はどこから持ってきてしまったのか。
こんな貴重な作品は
本人の手元に返さなければいけない。
…もしかして飼われている鳥なのか?
俺は一縷の望みにかけることにした。
リュックからノートを取り出して
撮影者に手紙を書いた。
【とても綺麗な空ですね。俺主催コンテスト、最優秀賞を授与します】
ノートの1ページを破り小さく折った。
小鳥が疲れないように、リュックに付けていた
トレカキーホルダーに空の写真と手紙、
さっき撮った金木犀の写真を入れて
小鳥の首にかけた。
「頼んだぞ、俺コンテストはお前にかかっている!受賞者に届けてくれよ」
小鳥は俺を少し見つめ、
キョロキョロするとどこかへ飛び立った。
小鳥の飛んでいく先が夕陽で眩しくて
目の前に手をかざした。
姿を見て空が暗くなってきたことに気付き、
自転車にまたがり、
口笛を風に乗せながら帰路に着いた。




