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世界破滅アプリ〜おっさんが現代にできたダンジョンに挑む  作者: 結城明日嘩


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いざダンジョンへ

 深夜2時、人通りはない。それでもしばし周囲を確認。この時間なら新聞配達や牛乳配達にも早いはず。近くにコンビニでもあれば多少は人通りがあったかもしれないが、それらもないので無人だ。

 主要道路沿いなので車の通行は皆無とは言えないが、駅に入るかどうかを確認しているドライバーも少ないはず。


 という事でタイミングを見て入口を通った。

 しばらくは普通の階段だ。特に境界線をまたいだような感覚もない。電話をしながらだと、唐突に圏外になるのだろう。そう考えた所でスマホを見ると、案の定圏外の表示だ。

 これは割と問題だな。負傷して動けなくなったとしても助けを呼ぶことができない。ダンジョン内同士なら電波が届くなら、トランシーバーなんかが有用そうだ。


 やがて階段は終わり、通路へと変わる。天井にはLEDの様な灯りが付いているので、移動するのに問題はない。

 破滅アプリを起動してオートマッピングを開く。階段のアイコンが付いているのを見るとゲーム的だと思ってしまう。

 歩いていくと一定距離ごとにマスが明るくなり、壁の位置などがマッピングされていく。


「これなら迷う事はない……か?」


 そもそもこのアプリが何なのか。信じて良いのかも分かっていない。頼り切るのは危険かとも考え、通路を極力覚えていこうとは思った。

 昔の3Dダンジョンだとマップを見るにもMPが減ったりしたから、基本的にはルートを記憶したものだと少し懐かしくなる。

 通路自体に変化はないので、歩いた感覚で距離を掴めるようになる必要はあるが。


 通路を歩いていると、分かれ道があったり、十字路になってたり、行き止まりだったりと、巨大迷路という感じだ。

 途中でスチール製っぽい扉があったりしたが、最初はスルー。いきなり罠があるとかは思いたくないが、不浄の獣が待ち構えている危険はある。

 某ダンジョンRPGでも敵の遭遇率が高いのは扉を開けた時だったからな。


 などと出入口付近のマップを確認し、マップのひとマスの広さを感覚的に掴めてきたなと思った時、スマホが振動した。

 メールか何かかと思ったが、よく考えればここは外部の電波が届かない。スマホの画面を確認すると、破滅アプリからの通知だった。

 通知を開いてみると「空間把握のスキルを獲得しました」と表示されている。アプリのキャラ画面を開くとスキルの欄に【空間把握】が記載されていた。


「斥候らしいスキルっちゃあスキルだが、自分がある程度できると思ったらスキルとして記載されるって事なのか?」


 スキルを覚えたらそれができるようになる、ではなくできるようになったらその結果が記載されると。

 となると戦士が武器を持ったらいきなり無双できる様になるのではなく、実際に戦えるようになったらそれがスキルとして認定されるという感じだろうか。


「スキルが付いたら何らかのボーナスがあると期待するしかないか」


 魔術師のマジックアローみたいにいきなり技が使えるようになるものもあるし、スキル次第って事かもしれん。

 そう思った時、足元に違和感があった。何だろうと思って見てみると、小石が転がっている。拾ってみると単なる石にしか見えない。強いて言うなら投げるのに手頃な石って感じか。

 初期ダンジョンのドロップ品で見かける【石ころ】っぽいなと思った時、まさにそうなんじゃないかと思えてきた。


 改めてダンジョンの床を見てみると、そうした小石は転がっていない。誰かが掃除したかのようにゴミっぽいものもなかった。

 小石があると気づけたのは【空間把握】のおかげだったりするのだろうか?


「じ、地味だな。だが成果はある……?」


 ちなみにひとマスのサイズは5m四方って所だな。そして通路を見ると4マス先に黒い影がいるのに気付いた。不浄の獣という奴だ。映像で見るよりも輪郭がブレて見えるというのは違和感があった。

 光学迷彩って訳でもないが、存在感が希薄に思える。

 ただチャッチャッと爪を鳴らしながら近づいてくるので、そこにいるのは確かなのだ。


 俺は10mほどの距離まで近づいてきた獣に、右手に握ったままの【石ころ】を投げる。ピッチャーからキャッチャーの半分の距離、的が中型犬サイズなので多少なりとキャッチボールの経験があれば当たる……しかし、体の衰えは計算外だった。衰えというより子供の頃の感覚と大人になってからの感覚のズレか?

 何にせよ、石は獣の手前で跳ねて獣に当たることなく壁際に転がった。


 俺の本命は鉄パイプだから。こちらはダンジョンに入ってから軽く素振りをしておいた。感覚のズレは少ない。

 別に薙刀やら棒術を習ってきた訳じゃない。子供の頃にほうきでチャンバラした程度の経験だ。それでも狙った場所を突く、叩くといった動作くらいはできる。


 当たらなかった【石ころ】に、攻撃されたと認識したのか間合いに入ったのか、獣は地を蹴り加速しながら向かってきた。

 俺は左手で棒の中程、右手で終端の側を握りながら半身で構える。まずは最大射程の攻撃、突きを狙う。突き出すというよりは、相手の勢いを殺すために待ち受ける感じだ。


 中型犬といっても柴犬の様な愛らしさはなく、ドーベルマンの様な鋭さを持った怖さがある。真正面から突っ込んでくるので、それを棒で受け止める様にして構えた。

 棒を見て左側へとズレた軌道に合わせて、そちらへと少し振り、獣の胸元を棒で受け止める。ズンとした衝撃にテーピングしただけのグリップが押し込まれそうになるが、両手でしっかり握って距離を保持。

 足軽が槍を持っているのは、間合いを保てる武器だから。至近距離での攻防は、素人には不利なのだ。持ち手から先の1mを担保にすれば、獣の牙も爪も届かない。


 喧嘩すらまともにした事もない俺は、始めて戦闘らしい戦闘に萎えそうになる心を叱咤する。手に伝わる衝撃は、そこにいる敵を実感させた。怯んだら負ける。

 胸元を押されて勢いを殺された獣が、少し後退した所へ押し出す様に突きを放つ。頭部の右目付近に当たったと思う。相手が少し仰け反り、顔を反らしたので、左手を軸に右手を動かす事で棒先を振って叩きつける。


 バットのスイングの様に強い打撃ではない。確実に当てるための攻撃。それでも鉄パイプによる一撃だ、中型犬サイズの体は1mほど動いた。いや、自ら飛んだのか。動いた先から移動の向きを変え、こちらへと飛びかかってくる。

 胸元を目掛けた動きに対して、俺は棒を戻して下から逆袈裟の様に跳ね上げて対応すた。相手の爪が届く前に、胸から腹辺りを掬うようにして打ち払い、壁際へと遠ざける。

 距離を保てれば有利。

 そう言い聞かせながら対応する。

 結果、まとめサイトにあったような5、6発では倒せず10手ほどかかったが、危なげなく対応することができた。


「ふぅ」


 さっきまで打ち据えると手応えのあった体が薄れていき消えていく。それは結構不思議な感覚だったが、仕留めたという実感はあった。

 鉄パイプの様子を確認したが、大きなへこみなどは見当たらない。ただ幾つかの傷はできていて、実際に殴った証が残されていた。


「これを繰り返すのか」


 一戦だけで強張った体は、それなりの疲労感を与えてきていた。ダンジョン攻略がどれくらいの距離かは分からないが、やはり素人には荷が重いのか。本職である警察官や自衛隊に任せるべきかもしれない。

 そう思うのと同時に、俺でも倒せたという実感もある。本職に任せるとしても、俺は俺のペースで攻略しても良いかとも思えた。


「思っている以上に興奮しているのかもな」


 ゲームの中に入る。ゲーム好きなら一度ならず妄想する事だ。それができるという喜びを確かに感じていた。

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