まとめサイトの情報
日中の作業を進めつつも、意識はダンジョンへと向かう。昼間は動画配信者も入りにくいのか、日本でのアップペースは落ちている。代わりに海外での探索は進んでいるようだ。
そんな中でまとめサイトも立ち上がり、今わかってる情報もまとめられている。
大きいのはダンジョン内では電波が通らないらしい。厳密に言えば、ダンジョンの中と外とでは通信ができない。ワイヤレスイヤホンとスマホとか、ダンジョン内同士での通信は生きているようだ。
ダンジョンの逆側から出入口を使用しても、普通に外に出るだけらしい。地下に降りようとして出入口に入ると、ダンジョンの中へと移動する。地下街から階段を登っていってもダンジョンには入らない。
ダンジョン内の構造は地下街からまるっきり変わっているが、他の出入口との距離感は変わってなさそうという話。元の地下街の1番出口と7番出口がダンジョンへと繋がった場合、一番から入って7番出口のある方向を目指して進んでいけば、外に出る階段があるという感じ。
1番と7番から入った者がダンジョン内で出会う事もある。つまり、ダンジョンは共通の空間という事だ。
他の駅の入口と繋がっているかはまだ不明。ダンジョン内で正確な方向を確認しながら一駅分移動した猛者の証言が上がってきてないからだ。
ダンジョン内の地図については、破滅アプリの機能としてオートマッピングがあるらしい。自分で歩いたマスが記録され、現在地も分かる。この辺もゲームっぽいな。
ただスマホというデバイスなので、そちらに目をやり過ぎてると、不浄の獣に襲われかねないので、ながらスマホの危険性が訴えられていた。
地下1階の不浄の獣は、中型犬くらいのサイズで強さもそんなものという話。現実で犬を殴り殺す経験をした者じゃないと比較はできないだろうが、そこまでの正確な検証はされていないし、求められてもいない。
金属製の棒、バットなどで5、6発殴れば消えるらしい。刃物を使っても血液のようなものは出てこないが、繰り返し斬りつければ弱っていって倒せる。
マジックアローの強さもバットと同等くらいで、5、6発で倒せる。マジックアローを何度も使っていると、精神的な疲労感があるらしい。長時間集中して作業した後の脱力感とか、そういった症状が出てくるようだ。
不浄の獣を倒していってもレベルアップの様な現象はない。ただ破滅アプリの各能力値が徐々に上がっていくようだ。筋力(STR)が10から15ほどまで上がると、5、6発必要だった殴打が4発ほどに減ったらしい。
体を動かす感覚で強くなったと思えるほどの変化はないようだが、本人だと実感しにくいだけかもしれない。
握力計を持ってダンジョンに入って成長するごとに計るなんてマメな人はいなかったようだ。
金属バットの方も殴ってるうちにへこんだり曲がったりするので、不浄の獣の体が物体であろうとはされているが、倒すと消えるのでよく分からない。
ガスとなって霧散するとなると、体内に吸い込んでる危険とかありそうだな。
そういえば空港なんかで海外からの持ち込みには検疫が入るが、ダンジョンの出入りではどうなんだ?
中でやばいウィルスに掛かって、外に持ち出してるとかあったら感染症とかでそうだが。
ダンジョンが世界を破滅させるために作られたなら、そういう可能性は十分に考えられる。ダンジョンに入るのは時期尚早なのか。ダンジョンに入った者は隔離とかになる可能性はある。
「その手の結果が出るにはかなりの時間が掛かりそうだよな」
「何の話っすか?」
「いや、ダンジョンにやばいウィルスとかいたら入った人が外に持ち出すとかありえるなって」
「なんすか、ゾンビになるとか!?」
パンデミックで思い出されるのはその手のバイオウェポン的なウィルスだよな。ダンジョンに入った者は凶暴になるとか。
「まあ既にこんだけ動画が上がってるって事は手遅れかも知れんがな」
どれだけ隔離しようとしても感染は広がるというのは世界も体験済み。しかも一箇所が起源ではなく、世界の主要都市で同時多発的にダンジョンはできたので、どこを閉鎖するんだって話だ。
「逆にダンジョンに入ってレベルアップしたら耐性がつくとかありそうっす」
「レベルアップはないって話だが、生命(VIT)を上げると防げそうだな」
金属バットで敵を倒すと筋力(STR)が上がるなら、生命(VIT)はダメージを受けたらとか?
某有名RPGみたいに味方で殴り合うとかシュールな光景が思い浮かぶ。
「いやーダンジョンが気になって仕事になんないっす」
「それをいっちゃあおしまいだろうが」
「気持ちは分からんでもないが、納期は迫ってるからな。ちゃんと仕事しろ」
主任から注意が飛んできた。俺達は慌てて作業へと戻る。
それでもやはりちょくちょくとまとめサイトなんかを見ながらの作業で、1時間ほど残業する羽目になったが。
まだ地下鉄は動いていないので徒歩での帰宅だ。その途中でハンズに寄って買い物をすることに。法に触れないサイズの鞘付き包丁や、金属製のパイプなどを購入。
防具になるものも見繕って見たが、胴を守る防具などはない。キャッチャーのプロテクターとかなら防具としても使えるのだろうが、町中で着るわけにもいかないし、持ち運ぶにはかさばるので断念した。
レンタルサイクルを探したがオフィス街の自転車置き場には残っていなかった。仕方なく1時間かけて帰るしかない。2mほどの鉄パイプが割と重い。ダンジョンでも持ち運ぶ事を考えたら慣れるしかないと受け入れる。
スマホで最寄り駅の入口を確認すると、その横を通って現状を確認してみた。商店街に出る出口ではなく、住宅街側なので人通りはほとんどない。
地下への階段は特に変わった様子をみせてはいない。普通に降りれそうな雰囲気だ。工事現場などで見かける足を開いて立てるバリケードがあるだけで、簡単に跨いで通れそうだ。
「ま、もっと準備してからだな」
21時の段階では入る所を見られる危険はある。もし入る所を見られた上で、ダンジョンに入った者を隔離するとかになると身動き取れなくなるからな。
それに少しは仮眠しておきたい。昨日はダンジョンの情報に夢中であまり寝てなかった。アラフォーの体は肉体労働であろう不浄の獣との戦闘に耐えられるかも不明。少しでも不利な条件は消しておきたかった。
自宅に帰るとアラームをセットして寝る。午前2時あたりを狙って入り、2時間ほどで出る予定だ。準備時間を含めて1時起きだなと決めた。
アラーム音というか聞き慣れないメロディーが聞こえて目を覚ます。3時間ほどの仮眠だが思ったよりもすっきりとしている。まだまだ若いな。
10月も終わろうかという頃なので、午前1時ともなるとかなり冷え込んでいた。普段遣いのジーパンに厚手のシャツ、上からGジャンを羽織り、体を動かしてみる。そこまで動きを阻害される気はしない。
リュックの紐は極力短めにして体と密着する様に設定、ドロップ品や宝箱からの回収用だ。鞘付きの包丁をどうするか少し悩んだが、Gジャンの内側ポケットに入れる。メインウェポンになる鉄パイプは握ると冷たかった事もあり、バットなどで使うグリップ用テープを巻き付けておいた。
「ま、装備はこんなもんだな。あとは……」
スマホを取り出し破滅アプリを起動。今更セキュリティとかは気にしない。キャラ画面を出してジョブから斥候を選んで決定。魔術師と違っていきなりスキルはもらえないらしい。その辺はまとめサイトにも書かれていた。
ただダンジョン内で行動するうちにスキルが増えている事があるようだ。行動に即したスキルが生えるようなので、内部的な熟練度が管理されてるという予測だ。
「じゃ、行ってみますか」




