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世界破滅アプリ〜おっさんが現代にできたダンジョンに挑む  作者: 結城明日嘩


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【Other】動画配信者わたり3

 ダンジョンでの探索を終えて出ていくと警備員がいないはずの時間であったが、待ち受ける人影があった。

 先日のダンジョン攻略を続ける宣言で動画配信者として知名度が上がり、応援してくれる視聴者も増えていた。

 いよいよ出待ちをするファンでも出てきたかと人影に近づいていく。待っていたのはファンらしくはないスーツ姿の男達だった。ピシッとした着こなしは今までに会ったことのない人種に思える。


「お待ちしておりました。配信者のわたりさんですね」


 尋ねてはいるが確信している雰囲気だ。


「は、はぁ……」

わたくしはこういう者でして」


 そう言いながら差し出された名刺には、『内閣府ダンジョン対策室 つつみ哲人てつと』と書かれていた。


「だ、ダンジョン、対策室……?」

「ええ、仮部署ではありますが、この案件は長引きそうだという事で、専門家チームを編成しているところです」


 災害対策室の様に緊急事態に対応するために作られた内閣府の対応部署。つまりは政府の機関。


「た、逮捕される!?」

「いえいえ、私どもは警察ではないので逮捕はできません。身体能力的にもダンジョンで活躍されているわたりさんには敵いませんよ」


 そう言いながらも余裕を見せる堤。そこの角には警官やら自衛官が待機してるとかじゃないか?


「まあ立ち話も何ですし、あちらの待機室でゆっくりと話しましょうか、綿部わたべ理央りおさん」


 本名までしっかりと掴まれてた。もう自宅住所なんかもバレてそう。逃げ場はないか。



 警備員の待機所へ連れて行かれた俺は、堤から色々と話を聞かされた。何か言質を取られないための持って回った言い回しだったが、要約するとダンジョン攻略は今まで通り続けても構わないという事と有識者会議とやらへの参加要請だった。


「ゆ、有識者といっても、全然専門家でもありませんし……」

「ダンジョンについて専門家というのはそもそもいないんです。一応、考察要員としてSF作家などの参加も予定していますが、憶測よりも実際に体感された方の意見が欲しいのです」

「で、でも、自衛官とか警察とかも調査しているのでは?」

「もちろん、それらの代表者にも参加頂きますが、全くの素人だった方が活躍できている方面の意見も重要と言いますか……」


 先程から微妙に濁している部分に触れるのだろう。現状では人手が足りず予算もないので、民間人にも手を貸して欲しいが、政府としては民間人に怪我のリスクを強いる事はできない。自主参加で自己責任という形で民間人を利用したいという話だ。


「それは免許ライセンスのような?」

「いえ、何を試験するかなども未知数な免許は意味をなさないので、必要な心構えなどをレクチャーすると申しますか」


 免許としてしまうと、免許を持っているのに事故があったとなると、政府としても一定の責任が発生し、事故原因の調査などが必要となってくる。

 しかし、ダンジョン内で起こる事を管理するなど現時点では不可能。人員不足なのに随行員を派遣する訳にもいかず、カメラでの録画を義務付けたところで、帰ってこなかった場合は録画を見ることもできない。

 通信できればリアルタイムに通信などの手も取れるが、今の所それを実現できる技術がなかった。

 なので政府側としては自己責任とするしかない。


「それらレクチャーに必要な知識は、今後も増えていくと思いますし、1人ではやはり無理が出てくるのでグループ単位で行動してもらった方が良いかなど、検討課題は多数あるので、現場を知る民間人の知恵を拝借したいと考えております」


 何か今後の民間への開放に向けた責任を背負わされる様で怖いんだが。


「あくまで意見を伺うだけです。今後もアップデートを繰り返していきますし、あくまで最初のたたき台として最低限のラインを決められればと」


 尻込みする俺の様子を見て取ったのだろう堤は、責任はないと言ってくる。参加者の名前は伏せますとも付け加えられた。

 そして堤は異住まいを正してから続ける。


「これは私個人の意見なのですが、ダンジョンという物はかつてないほどの危険を孕んでいると考えています」


 堤はダンジョンというものにかなりの危機感を抱いているようだった。そもそもが現実ではない空間を出現させるという状況だけでも異常だ。そこから人を襲う獣が出てくる。まだ対処可能な獣だが、ダンジョンの階層が進むにつれて強力な獣が居ることも分かっている。

 それらがいつ地上に溢れ出すかも分からない。

 ダンジョンを攻略しなければ世界が破滅するというのはまだ実感はわかないが、もたらされる技術は未知のもの。その解明に遅れる事は、世界から取り残され兼ねない。逆に停滞した30年を取り戻すきっかけにできるのかもしれない。


「私としましては他国を押し除けて日本がトップを走る体制を築きたいんです」

「え、えっとぉ」


 いきなり話のスケールが大きくなってついていけてない。


「すいません、先走りました。私達が求めるのは民間人を広くダンジョン攻略に参加して頂ける環境作りです。その為にわたりさんが困っている事などを教えて頂ければと、そういう訳です」

「な、なるほど?」


 この堤という人が何を目指しているかは何となく分かった。俺のような民間人がダンジョンに入り易くしてくれるというなら否はない。その先に日本がどうのと言われると俺には分からないが、ダンジョン攻略を手助けしたいと言ってくれるなら俺も協力したい。




 週が明けての月曜日。ネットミーティングの形で有識者会議が開催される事となった。自宅からの参加もできると言われたが、色々と心もとなかったので近所の役所の会議室から参加する形にしてもらった。

 接続設定周りは役所の事務員がやってくれるので、俺は時間に合わせて向かうだけだ。

 改めて会議と言われると気後れする部分もあったが、多くの参加者の中の1人として気になった点があれば……というレベルで良いとの言葉を信じている。

 謝礼金に目がくらんだとかではない。


 会議の進行は堤が行っていた。ダンジョン対策室は規模として小さく人員不足らしい。死者は出ておらず、負傷者もそれほど多くない。建物の被害などもないため、政府としては対応が急務と認識していないとの事だった。

 前例がなく、どう動いたら良いかも分からない。海外の対応を見ながら、良い所を真似すればいい。そんな考え方が主流ということだ。


「本日はお忙しい中、お集まりいただきありがとうございます。未知のダンジョンという存在について、どう扱っていくべきか、忌憚のない意見をいただけますと幸いです」


 いよいよ会議が始まる。ネット会議の画面はそれぞれの顔が映し出されており、参加者は20人ほどとなっている。

 それぞれに役職というか立場が付記されていた。

 堤はまず自衛官へとダンジョン内の様子について説明を求める。階層を降りるごとに敵が強くなり、銃火器の効果が薄れていくという話は、俺では検証できない内容だった。

 5階を過ぎると獣は一回り以上大きくなりはじめ、脅威度が増すらしい。戦闘訓練を受けた自衛官でも負傷者が出始めるのだとか。


「それらを踏まえますと民間人による探索は危険と言わざるをえないです」


 自衛官は説明をそう締めくくった。それに対して警察の代表者が発現許可を求めるアイコンを出す。なるほど、質問者はあれを出してマイクをオンにしてもらうのか。俺が使うことはなさそうだけど。


「我々が危惧するのはダンジョンで修得できるスキルの悪用です。既に判明している中でも犯罪に利用されると困るものが幾つもあり……」


 例としてセンサー類を誤魔化せる【隠密】や逃走しやすくなる【持久走】や【登攀とうはん】などをあげていた。


「今後、【偽装】や【偽造】といった犯行を隠したり、身分を偽る様なスキルが出てこないとも限りません」


 それに対して小説家という肩書の者が発現許可を求めた。


「えー、それは、国内だけを考えれば、そうかもしれませんが、周辺国の状況を見ると、そうは言ってられないかと」


 あまり話し慣れていない様子で推論を述べていく。要は国内を取り締まった所で、海外からスキル持ちの犯罪者が流入するのを止められるのかと。

 スキルの使用する犯罪者が出てくることを前提に対抗策を練る方が建設的ではないか……その様な提案がなされる。


「やべぇ、こんな会議に俺必要か?」


 国防の話をされてもちんぷんかんぷんだ。傍聴者に徹して聞き流すしかないかなぁ。

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― 新着の感想 ―
こういうのは興味や知識ないとそのレベルの会話はついていけないだろうねぇ この人元々食っていくためにやってるだけの人やったしなー今後この人も色々勉強する羽目になって変わっていくのだろうか?w 堤が結構…
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