2階に戻って
3階のエレベーターをアクティベートしたので、2階に戻ることにした。足元がゴツゴツしていて不安定なので、靴の準備から始めないといけないようだったからだ。
しかしダンジョン探索を始めてから色々と出費がかさんでいる。ここいらで本格的に金策をしようかと考えた。
つまりは暗号資産目当てで狩る。
ダンジョン内の獣はある程度ポップする場所が決まっている。そこから決められたルートで巡回を行うのだ。
リポップの間隔も決まっているようだが、見ている目の前でポップするのは確認していないので、人の視線があるとポップしないとかの条件もあるかもしれない。
何はともあれ一定のエリアをグルグル回れば、自然とポップした敵と遭遇できる。後は狩る効率を高めていけば稼げるはずだ。
そう思いながらダンジョンを駆ける。アラフォーの体力はすぐに音を上げるかと思っていたが、知らぬ間に鍛えられた部分があるようだ。思ったよりも疲労感が薄かった。ステータス的には敏捷が上がった事で体幹が鍛えられ、身体の負担が減っていると思われる。その他、少し生命が上がっていた。これはダメージを受けて耐えた結果だろうか。
一気に30匹を倒したところで一息入れる。もう少しやれそうな気もするが、まだやれるはもうダメだとか何かで聞いた気がする。続けられるか体力を気にしている時点で、限界が近いとかそんな解釈かな。
「お、新しいスキルが増えてる。【持久走】って、軽く走りながら狩ってたからか」
継戦能力に補正が入るなら悪いことはないだろう。走るだけしか効かないと微妙だが、それでも逃げる時に役立つか。
「今のところ、スキル数に上限とかも無さそうだし、増えて損したということにはならないと信じたい」
本日は合計37匹を倒して、10300UBCの稼ぎだった。休日の稼ぎとしては悪くないが、体を使った危険な仕事としてはまだまだ安い。日に3万以上稼げたら本業になるだろうか……それでも体張ってる割には安いか。
現状だと確定申告はいらないと思うが、政府がダンジョン管理するようになったら暗号資産で稼いだ分も税金が掛かるのだろうか。稼げるうちに稼ぐべき?
などと益体もないことを考えながらダンジョンの入口へ。本日できていた更衣室を早速利用して、鉄パイプをロッカーに入れておく。警棒も入れるか悩む所だが、嵩張るほどでもないので身につけておくことにした。シールドグローブも外ではシールドを作れないので持って歩く意味はないのだが、ロッカーに預けるには貴重品な気がしてやめておいた。
閉めたら自動で鍵が掛かり、破滅アプリが入ったスマホで解錠できる。今後、厚手のブーツや防具類もしまえるようになるので、便利になっていくだろう。
ダンジョンを出て家に帰る。明日からまた仕事なので、しばらくお預けになるだろう。戦闘の勘が鈍る事はなかったが、攻略ペースが中々上げられない。
仕事の後に行けたら毎日少しずつ進める事もできそうだが、警備員が立ってると入れない。根本的な制度改革を早よと思うがまだ1ヶ月も経ってないし期待はできなかった。
「動画配信は再開した人が増えたな」
政府としては入らないように警告はしているが、明確に止めてはいないようだ。あえて昼間の警戒を緩めて入りやすくしているフシがある。
前回ダンジョンから獣が溢れた際に、一部の出入口では警備員で止めきれず、配信者が手助けしたらしい。
そこから配信者も強気に出ているようだ。開き直った配信が目立つ。自らを正義として人々を守る為に政府の方針を無視すると。
「好き勝手やりたいだけだろうけどね」
獣を狩ることで暗号資産を稼ぐ本音がある偽善的な行為かもしれないが、それで外に出る獣が減るなら積極的に止める必要もない。
ただ非公認の状態だと参加する人数は限られるだろう。政府としてコントロールできる体制ができなければ公認はしないはず。ダンジョン内で死人が出た時に責任を取らされるだろうしな。日和見主義な政治家ではとても容認する方向にはならない。
「ま、お上の考える事など気にしても仕方ない」
自分でできる事をやるだけだ。まずは登山用のブーツをポチる。テレワークの利点は宅配が利用しやすいところだな。夜しか帰れないと置き配とか盗まれそうで怖いし。
暗号資産は換金せずに貯める方針だ。ダンジョン内で利用できる様なのでそちらに回す方が賢明だろう。自販機を見つけて毒消しとか買っておかないとな。
「攻略人数が少なくてマップを自分で埋めないといけないのがな……」
配信者のまとめサイトには探索マップがあがっているが、俺の潜っているダンジョンとは形が違っている。2階以降もそれぞれ別空間となっているらしい。
最終的に何人がダンジョンに挑むか分からないが、人口の1%が探索するとしたら100万人。500ほどのダンジョンに振り分けても2000人ずつになる。今は自由に狩れているが、ワンフロアに50人もいたら獣は枯渇、湧き待ち状態になりそうだ。
「実際はもっと少ないとは思うけど……学生が小遣い稼ぎに浅い層を狩る時代がくるかもな」
2階までの獣人なら高校生でも余裕を持って倒せる。放課後で10匹、3000円稼げたら俺が学生でも毎日通いそうだ。
「そうなったら経済も回りそうだな」
純粋に収入が増えたら使う額も増やせる。自分の作業量に比例して収入も増えるのが分かりやすいので、モチベーションも保ちやすいだろう。安定感はないし、能力次第なのでやれる人は限られるけど。
俺としてはもっと開放されて参加者が増える方がこそこそしなくて済むので望ましいが、そうなるとダンジョン内が混む可能性もでてくるので悩ましい。
いやまあ俺ができることはないんだが。普及を促すことも妨害する事もできない。動画配信者にでもなれば、多少は世の中を動かせるのか?
そう思いながら動画配信再開のきっかけを作った配信者わたりとやらの動画を見る。どうやら3階を攻略中みたいだ。俺にとっては予習になるのでありがたい。
ダンジョンのマップは違っているが、フロアの構成物については共通している。自然洞窟の中で武器を持った獣人と戦っていた。
足場のデコボコに足を取られながらも必殺剣【ソニックエッジ】を駆使して戦っている。スキルとして習得される必殺技は、リキャストタイムがあるらしく一定の間隔を空けないと使えないらしい。魔法はMPの概念があるので、連発はできるが使用回数に制限が出てくる。
クリエイトシールドも魔法と同じ仕様だが、今のところMP切れになるほどの消費はない。1回使用したら180秒継続するからそれまでに戦闘が終わるし、次の敵を見つけないと使わないからそれなりのインターバルがある。
MP自体はステータスの精神をベースに数値があるみたいだが、徐々に回復するようなのでクリエイトシールドで枯渇する事はなさそうだ。
魔法の場合は1回の戦闘中に連発する事もあるし、大技を使うと消費も激しいらしく、考えずに使っていると頭痛を伴う疲労感に襲われるらしい。
そう考えると戦士系の必殺技は負担が軽めで長く戦える仕様と言えた。
最終的にはパーティを組んで集団で攻略する流れになるとは思うが、現状はソロ活動が多いようだ。
わたりも1人で探索しており、カメラは背負っているらしく、細かい調整がされておらずブレもあるので長時間の視聴には向かない編集だな。
その分、一緒に冒険している感じでもある。
「武器で迎撃されると面倒そうだな」
獣人の持つ武器は棍棒だろうか、片手で持てる鈍器だ。わたりの金属バットを受け止めたり、払ったりして攻撃を防いでいる。
2階の獣人だと腕で防御してきたが、受け止めきれずによろめいたりしていたが、3階は上手くいなしてくるらしい。
なのでわたりは攻防で時間を稼ぎながら、ソニックエッジで攻撃して倒すのが戦法となっていた。
「これは俺にできない戦い方だなぁ」
そう思いながらも参考にしようと動画を見ていった。
名前:鈴木蒼太
筋力:13
敏捷:18
器用:16
知力:14
生命:12
精神:12
スキル:【空間把握】【隠密】【棒術】【持久走】




