2階の探索
獣人を倒したので、暗号資産を確認。300UBCだった。1階の3倍貰えるとは。強さ的にはそこまで強くないんだが……とはいえ、10匹狩っても3000円。諸々の経費に比べると微々たるものだ。
「というか服を裂かれたんだよなぁ」
腹の辺りから左肩に向けて大きく裂かれた服は、もう着れないだろう。ダンジョン内はひんやりとはしているものの風はないので凍えるほどではないのが救いか。
「ここで引き返していたら探索が進まない」
俺はジャージとシャツを丸めてリュックへと仕舞い、上半身裸で探索を続ける。他に人がいなくてなによりだ。
床に腹ばいになると流石に冷たいので急いで元の部屋へと戻り立ち上がる。周囲に獣人の気配はない。
「そういえば獣人の鑑定をやってないな」
戦闘に突入すると鑑定している暇がない。パーティでも組んでいれば、後衛に任せる事もできるのだが1人だしな。通路で歩いているのを見つけて鑑定するしかない。
ダスティコボルト:立ち上がった獣
ドロップ:不明
UBC:300
新しい情報はなかった。
通路で獣人を探して彷徨うこと数分、目標を見つけて鑑定したが名前が分かった程度だ。ドロップ情報とか自分で拾わないと分からないのか、同じダンジョンに潜る人がいれば共有されるのかも不明だ。
ただ他のダンジョン、特に海外ではもっと狩られているはずなので、ドロップ品があれば情報共有はされているだろう。
「まだ敵が何か落としたって情報はなかったよな」
ダンジョン内では外部と通信できないのがもどかしい。現代人は気になったらスマホで検索が当たり前だから、情報が遮断される状況というのに慣れてない。
ほんの20年前に携帯電話が普及しだして、ネット検索が当たり前になってからはもっと短い期間のはずなんだが、今はもうネットなしには戻れない現実。
通路で相対した獣人は、不意打ちされなければ1階の獣よりも弱いくらい。盾で動きを止めて、警棒で叩けばあっさりと倒せる。
地下1階と違って2階は鍾乳洞。道もまっすぐではなく、幅も3mほどと少し狭くなっていた。天井から下がる鍾乳石や地面から生えたような石筍が通路の両サイドにあって、実質1人分の通路となっている。
足元の水たまりは足を取られるほどではなく、ナゼか滑る事もないのだがそれでも気にはなった。
ピチョン、ピチョンと水が滴る音が定期的に聞こえ、獣人の足音はパシャパシャといった感じ。ただ洞窟なので音が反響し、方向が掴みにくい。
「不意打ちで痛い目をみたし、移動は慎重にならざるをえないな」
そうして通路や小部屋を探索しながら、獣人とも何度か戦闘をこなし、3時間ほど歩いていると3階へと降りる階段を見つけた。
「2階へ降りる階段からまっすぐ来たら1時間も掛からないか」
より下層に降りていくとなると、階段間の移動が面倒になりそうだ。この辺もゲームっぽくショートカットルートや転移門みたいなものが見つからないだろうか。
「何にせよ、まだ降りるのは早いな。もう少し2階を探索しよう」
最初の隠し部屋以降、石棺も見つけてないしな。石棺にあるアイテムが人の欲求に応えてくれるなら、欲しいのは胴体を守る防具か。服を破られるのは嫌だ。というか、ダンジョンからの帰りを人に見られたら困るよな。ずっと【隠密】を使って帰るしかないな。
「という事でダンジョンさん、防具となりつつ服にもなるような装備をお願いします」
そんな事を考えながら通路を歩いていった。
一周回ってみると500m四方といった広さか。破滅アプリのオートマッピング機能で、それなりの範囲がカバーできた。幾つかの枝道は入ってないので埋まりきってはいない。
そしてこれみよがしに中央部分が未踏破となっている。まだ探索してない枝道のいずれかから入っていけるのだろう。
「1階の大部屋同様に豪華なアイテムが期待できそう」
シールドグローブは今後も重宝しそうなアイテムだ。同じ様なアイテムが2階にあってもおかしくはない。
問題は何が待ち受けているか。1階は3匹同時だったが今回も同様なのか、それともボスっぽい何かが出るのか。
ゲームを踏襲してるっぽいダンジョンの仕様は、この辺でボスかユニークモンスターを配する方がありえそうだ。
「シールドに警棒、鉄パイプ。防具はなしで、武器も打撃のみとなると心許ないか」
一度3階を攻略してから2階ボスなんてパターンもありかもしれんし、ネットに情報があるかもしれない。今日の所は保留にして、残り時間で獣人を倒していこう。
朝8時から潜って5時間が経過。昼を回ってるし、携帯食料で昼ご飯。リュックで潰れないスティック状のカロリー補給バーをペットボトルの水で食べる。腹を満たす感じではないが、腹一杯にすると動きに影響あるし、少し空腹くらいが丁度いい……と思おう。
それから日没前、警備員が来ないうちに16時でダンジョンを脱出。ダスティコボルトを14匹倒して、4200UBCをゲット。
さらにはドロップ品として、コボルトの爪が手に入った。10cmほどの鋭い爪はかなり堅い。つや消しの黒で軽さから金属ではないな。見たことないけど熊の爪みたいな感じか。
柄を付けたら槍として使えそうだ。
裂かれたシャツとジャージを着直して、ウィンドブレーカー羽織る。11月に入って一気に冷え込み始めたから上着を持ってきていて良かった。ダンジョンの中は暑くも寒くもない気温、多分20度を切るくらいだろう。1年変わらない気温だと、避暑にいいかもな。
【隠密】でセンサーを誤魔化しながら人目を避けて夕食を買いに行く。5000円ほどの臨時収入があったと考えると良いもん食べようかなとか思うよな。体も動かしたしタンパク質……うなぎにしておこう。
ちょっとした贅沢にほくほくしながら家へと到着。といってまだ日没直後、17時ってところだから夕食には早い。
ネットの情報を確認しておこう。フロアごとの大部屋とか情報ないかね。AI翻訳が普及して海外のサイトもそこまで違和感なく読める様になったのはありがたい。
やはり欧米の方がダンジョン攻略は早いからな。
「ん、転送サービス?」
やはりあったかテレポーター。入口近くから踏破した階へと転送してくれるサービスが見つかったらしい。2階から3階の階段まで、不意打ちを警戒しながらだと小一時間かかる所を、直接3階に行けるのは大きい。
「利用料が掛かるのか。そこでUBCを使うと」
それぞれの国家の通貨にもトレードできる暗号資産だが、メインの用途はダンジョン側で用意されているらしい。
転送サービスもそうだが、ショップなどもあるようだ。サイトに載っているのは3階で見つけたらしい。3階も自然洞窟風なのだが、小部屋に自販機が置いてあったらしい。
破滅アプリの入った端末でピッとやったら決済できる。売られていたのは携帯食、レーション的な何かやペットボトルに入った水。それに毒消しポーション。
「毒があるのか……」
4階の武器持ち獣人の中に短剣使いがいて、刀身に毒が塗られているようだ。怖い。
切り傷が化膿しやすく、熱が出る事もあるようだ。4階に降りる前に毒消しは必須と書いてある。
「4階に降りる前に防具を整えないとな」
簡単に傷つくようだと毒を受ける危険がある。長袖、長ズボンは当然として、プロテクター何かも真剣に考えていくべきか。
「ダンジョンの入口にロッカーを設置して欲しいものだ」




