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世界破滅アプリ〜おっさんが現代にできたダンジョンに挑む  作者: 結城明日嘩


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【Other】動画配信者わたり2

 ダンジョンから獣が溢れるとなると警察も入口を放置できないとなって、入口を封鎖しようとしたが謎の現象で正面に配置した壁は消された。

 消された壁がどこに行ったかは不明だが、ダンジョンの入口は閉じることができないとの認識となる。そこへ警察官や警備員を配置して監視する様になってしまった。


 見張りがいるのは獣が出た夜の間だけだったが、昼間もセンサーで管理されていて近づくとアラームが鳴って、すぐに警備員がやってきた。

 そこでダンジョンに入ってはいけないと注意されてしまう。


 どれくらい閉鎖されるかはわからないが、ダンジョンから獣が出るならちゃんと攻略を進めなければならないはずだ。そのような事を諭してみたが、政府からの発表を待ってほしいの一点張りだった。

 流石に警察の制止を振り切って突入するわけにもいかず家に帰った。


 ダンジョンに入れなかった旨を伝える動画を撮影し、早期にダンジョンを開放するように働きかけていくと決意表明した。もちろん、何をすれば良いのかといった知識はないので、動画で意見を募集した。

 上がってきたのは国会前でのデモとかだが、正直電車賃を出すのも辛い。ダンジョン動画の収益が出るには何ヶ月もかかるはずだ。

 獣を倒した際に暗号資産を貰えるようになったと破滅アプリに通知が来ていたが、その獣が狩れない状況なのだ。今は定期のバイトもなく、体力を活かして食べ物のデリバリーをやるくらいで、そちらも安定した収入ではないので、遠出をするのは難しかった。


 遠出は難しいと返答したら、政府に問い合わせるのはどうかという意見も出た。

 内閣のHPからメールを送る事ができるらしい。早速、ダンジョンを入れるようにして欲しいと投書したが、「貴重なご意見をありがとうございます。今後の政権運営に活かして参りたいと思います」という定型文が送られてきただけだった。

 首相官邸にはダンジョン対策室というのができているはずだが、そこへの連絡手段もない。


 ならばマスコミかと思って地元のテレビ局にも投書してみたが、こちらも定型文がらしき返信があっただけだった。

 それらの報告を動画配信してみたが、当然のように再生数はガタ落ちになっていった。




 仕方なくダンジョンの入り口を伺う日々なる。獣が出るのは日没後ということで、昼間には人が居ない。入り口に仕掛けられたセンサーも外付けのモノで、上手く跳べばすり抜けられそうな気がする。ただ監視カメラもあるので侵入した証拠は残りそうだった。


 結局のところ、俺がダンジョンに潜りたいのは金のためでしかない。そこが強く出られない部分なのだ。

 世界を救えるとは思っていないどころか、ダンジョンが世界を破滅させるというのも半信半疑。ダンジョン自体が既存の科学から逸脱したモノで、必殺技なんかが撃てるのも不思議で凄いとは思っている。だけどそれが世界にどうなれば破滅に繋がるかは分かっていない。

 だから世界を救うにはダンジョンの攻略が必要だ、と声高に叫ぶのに躊躇いがあった。

 それでも俺だって生きていくには稼がなければならない。それを政府に止められるのは納得できないのだ。


「何とかダンジョンに入れるようにならないとな」


 警察官になれば入れるだろうか。いや国家公務員になるのは色々ハードルが高いよな。民間委託されやすい警備会社に入れないかな。募集要項でも確認してみるかな。




 結局、大きな動きを取れないままに一週間が過ぎてしまい、動画のアクセスも減っている。フードデリバリーで食い繋いでる状況だ。スマホでニュースを見てても日本のダンジョン情勢に変化はない。海外では積極的にダンジョン攻略を進めようという機運が高まっているのにな。

 前回のダンジョンからの獣出現から一週間、アメリカで再度の獣溢れが確認された。ニュースでは日本でもま獣が出てくる可能性が高いとして改めての外出自粛が呼びかけられた。


「来たな。乗るしかない、このビッグウェーブに!」


 俺は撮影機材とバットを手にダンジョへと向かった。



 ダンジョン入り口には警備会社の人が集まっていた。Sec○mだろうか。長い犯罪者を取り押さえる時の棒などを準備しているようだ。人数は5人、ダンジョンの方を指差しながら話し合っていた。そろそろ日没、夕焼けから青が濃くなり夜の帳が下りてくる。

 ダンジョン入り口には照明が置かれていてかなり明るい。入り口に構えているのは3人で残り2人は近くの小屋へと入っていった。一晩の見守りなので交代するのだろう。


 辺りが真っ暗になると早々に一匹の獣が飛び出してきた。まだ一階の獣のようだ。中型犬サイズで迫力はさほどない。しかし、警備員達はダンジョンの下調べもやってなかったのか、出てきた獣を包囲する形で何とか取り押さえようと動いていた。


「さっさと倒せばいいのに……じゃないと」


 獣はターゲットを決めかねているのか、周囲を威嚇するように姿勢を低く唸る様な姿を見せる。囲む警備員の1人が手にした長いU字型の棒で首を押さえにかかった。

 しかし、獣はさっと飛び退いて先端を避けると、棒を持った警備員へと飛びかかる。


「うわぁっ」

「落ち着けっ」


 隣の警備員が声を上げた警備員を庇うように前に出て、出にした棒で防御する。獣はそれに噛みついて押し込もうとした。


「くっ、は、早く、押さえて」

「あ、ああっ」


 襲われそうになった警備員はまだ腰が引けた感じで棒を伸ばして獣を押さえようとするが、棒の先が揺れて上手く狙えていない。見ていてもどかしい。

 もう1人の警備員も見かねたのか獣の体を押さえ込もうと掴み掛かった。肩の辺りを両手で掴み叫ぶ。


「早く、ここだっ」

「は、はいっ」


 ようやく首の辺りをU字の棒が押さえ込む。


「よし、しっかり押さえてろよ」


 獣を手で押さえ込んだ警備員は、手首にストラップで下げていた警棒を掴み直すと獣へと構えた。


「そんな悠長な事をやってたら……」


 俺はダンジョンの階段に2匹目の姿を認めて走り出した。



 俺の接近に気づいた警備員が声を上げる。


「何だ君はっ」

「後ろだっ」


 獣を押さえ込んだ際にダンジョンに背を向ける格好になっていた警棒を持った男は、背後のダンジョンから出ようとしている獣に気づいてなかった。

 慌てて振り返って硬直する警備員の横を走り抜けて俺はダンジョンの中へと踏み込む。ダンジョンに入った事で【身体強化】が発動し、体を軽く感じる。階段という足元が不安定な場所だが、体の軸は安定していてバットは振れる。

 しかし、中型犬サイズの獣を階段の上から狙うのはかなりやりにくい。


「ソニックエッジ!」


 俺は迷わずにスキルを発動。金属バットを振った先から三日月状の剣閃が放たれ、獣を捉えて弾き飛ばす。しばらくダンジョンに入れなかったが、イメージトレーニングはしていたのでブランクは感じない。

 階段下まで吹き飛んだ獣を追いかけて、金属バットを頭へと振り下ろすと、2撃で獣を屠れた。落下ダメージもあったようだ。階段下を見渡して、まだ近くに獣はいないことを確認してから、ダンジョンを出た。

 正直、このままダンジョン内で獣を減らしたいと思ったが、出口を固める警備員があのざまだと街へと獣を逃がしてしまう可能性もある。

 ここは経験者として、獣に対する心構えを説いていかないとな。

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