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世界破滅アプリ〜おっさんが現代にできたダンジョンに挑む  作者: 結城明日嘩


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【Other】動画配信者わたり

 世界に現れたダンジョンは、動画配信で伸び悩んでいた俺にとって大きな転機ではあった。

 体操で培ったアクション系のアクロバットを見せる動画を上げていたが、どうしてもインパクトに欠けていた。

 伸身宙返りとかの視点を見てもらおうと、小型カメラを頭などに付けて跳んでみたりとかを何パターンか上げても、画面がブレてよく分からずアクセスは増えなかった。

 町中を障害物とみなしてアクロバティックに移動するパルクールなどは多少のアクセスを稼げたが、モラルパトロールが【迷惑行為】のレッテルを貼っていって運営から警告がきたりする。

 体を使って稼ぐというのは難しい。


 そんな行き詰まりを感じていた時、世界にダンジョンが現れた。近所の地下鉄の駅にも入口ができており、コレだと飛びついた。

 モラルパトロールは【不法侵入】のレッテルを貼っていくだろうが、世界が求めているのは未知の物の解明だ。

 いち早く飛びつくことで稼げる、そう思った。


 小型カメラを背中に背負い、ダンジョンを探索する臨場感を届ける。編集に凝るよりも配信ペースを大事に、生の探索を届ける事を狙った。

 行きがけに買った金属バットを手に、探索を行う。破滅アプリでの職業選択は戦士一択。幼少の頃から体操教室に通っていて身体能力には自信がある。まあ度重なる怪我で結果が出ずに高校で引退する羽目になったが。

 そこから大学を何となくで過ごし、それが影響したのか就職活動で失敗。バイトで食いつなぐ日々を送っている。

 少しでも足しになればと思って始めた動画配信も未だ収益ラインには達していない。ダンジョンで一山当てる、それが今の目標だ。


「ダンジョンの中は思ったより明るいですね、普通の地下街みたいです」


 解説を入れながらダンジョンとなった地下一階を歩いていく。そこは普通の地下街だ。いつも地下鉄に乗る際に利用する駅と大差ない。強いていうなら壁にポスター類がないくらいか。


「扉がありますね、開けてみましょう」


 通路にはスチール製らしき扉があった。銀色のノブを回すと奥へと開いていく。そこは休憩室のようなテーブルと椅子がある空間。しかし、部屋には異質の物体があった。黒いゴワゴワしてそうな毛並みが丸まって存在している。侵入者に気づいたのか、黒い塊が頭を上げてこちらを見た。


「こ、これが、不浄の獣……でしょうか」


 破滅アプリのメッセージによるとダンジョンからは不浄の獣が溢れるそうだ。ダンジョン内で相対するのもその獣なのだろう。

 動き出した獣は、思ったよりも大きくはない。柴犬くらいのサイズだろうか。ただ顔つきはドーベルマンを思わせる鼻先が前に突き出した感じで、口が大きく見える。そこには鋭い犬歯が見えており、噛まれると酷いことになりそうだ。


「相手は犬の様に見えますが、鋭い牙が見えますね」


 金属バットを両手で握りながら相手との間合いを測る。中型犬サイズ、体高は股下くらいで体長が尻尾を入れて1mくらいか。

 俺は体操をやっていた影響もあり、身長はやや低めだが、筋力量は人より多い。野球経験というか、ソフトボールくらいなら高校までの授業などでもあったので、バットの振り方程度は分かっているつもりだ。


 ただ喧嘩などはしたことはないし、動物を殴る様な経験もない。改めて目の前の獣を見ると、輪郭がブレていて存在感はあるのに、生き物っぽさはあまり感じない。時折向こうが透けて見えるためか、映像の様な印象もあった。


「む、向かってきますっ」


 チャチャっと爪を鳴らして駆け出した獣は、目の前で跳び、胸の辺りを目掛けて突っ込んできた。前方に伸ばされた前足からは鋭い爪が垣間見える。

 空中で回転中も姿勢を把握するために動体視力は悪くない。距離感なども比較的掴めているだろう。それでも俺は殴るよりも避ける方を選んでしまった。


 運動用の青いジャージに軽く爪がかすったらしい。それだけで一筋の切れ込みが入っていた。あれを生身で受けたらと思うと、背筋に冷たい汗が流れる。

 後手に回っているとジリ貧、やられる前に殴らなければ。俺はバットを握る手に力を入れ直し構えた。


「うおおぉぉぉぉっ」


 気合とともに声を出しながらバットを振るう。上段からの振り下ろしは、さっと横に避けられて地面を叩く。


「つっ」


 縦振りはダメだと横に振るう。獣は更に避けようとしたが、少し遅くて左肩の辺りに当たった。しっかり当たった手応えはあったが、獣は着地するとこちらへと向かってきた。バットを左へ振った後の右上腕へと飛び上がり、噛みつこうとしてくる。

 バットは遠心力で左に振られた状態で、右半身が獣に向いていいた。バットはもちろん、手で振り払うのも間に合いそうにない。


 俺は咄嗟の判断で自ら獣へと一歩踏み出し、肩口から獣に当たる。牙がかすった気はするが噛みつかれれまでには至らず、獣の体が吹き飛んだ。体重はかなり軽い。

 相手が着地して体勢を立て直そうとしている所へ、左に振っていたバットを右へと振り抜き首筋を捉える。これまた相手を吹き飛ばし、どさっと胴体から地面に着地。頭を振りながら立ち上がろうとしているが、少し足が震えて見えた。


「今だっ」


 俺は距離を詰めてバットを振るう。右上から縦より横振りを意識して振り下ろし、獣の左肩を打ち据える。体勢を崩した所を更に詰めて殴る、殴る、殴る。


「はぁ、はぁ、はぁ」


 何度か殴っているうちに、獣の身体をバットが通り過ぎ、えっと思った時には獣の姿は薄れて消えた。


「え、えっと、た、倒した、でしょうか……?」


 途中から我武者羅になって殴っていたので、息がかなり上がってしまった。目を離したつもりはないが、獣の姿はふっと消えるようになくなっている。

 さほど大きくはない部屋を見渡し、獣の姿がないことを確認し、ふぅと大きく息を吐いた。


「はっ、ははっ、やりました。獣を撃破、です」


 俺はダンジョンで獣を倒せた。その実感が湧いてくる。動物相手に暴力を振るうのに多少の躊躇はあったが、攻撃されれば反撃をしなければならない。倒した後に死体も残らなかったので、罪悪感はわかなかった。

 俺は水筒を取り出して一口飲む。思った以上の緊張で口が乾いていたので、続けてゴクゴクと飲んでしまった。


「は、はい。獣の撃破に成功です。えーっと、部屋の中は……普通の部屋っぽいですね。壁はコンクリートの打ちっぱなしの様で……」


 俺は周囲の状況を説明しつつ、ダンジョン配信者としての一歩を踏み出せたと思った。




 初日に上げた動画は今までにないアクセス数を叩き出した。下手な編集をせずにアップしたのも、生々しさをストレートに伝えられたらしくコメントも好意的なものが多かった。

 中には獣への暴行だとか、入るなという警告を無視しているなど批判的なコメントもあったが、実態を伝えてくれて良かったという意見が多く、支持されていると感じられた。


 その後も連日、ダンジョンへと入り、徐々に行動範囲を広げていって、2階、3階へも進み、【ソニックエッジ】という必殺技スキルを手に入れた。それを発表した時のアクセス数は更に伸びた。

 海外では4階まで進んでいるものもあったが、3階で獣人が武器を持ち始めると、俺の進みは遅くなってしまった。


 木を削り出しただけの棍棒だったが、こちらのバットを受け止められたり、逸らされたりして相手に当てるのが難しくなっていた。

 獣人はこちらの胸くらいの高さ、多分120cmほどで棍棒を含めてもリーチでは俺が勝っているので、相手の攻撃を食らう様な事もないのだが、こちらの攻撃を上手く防がれて、どうしても手数が必要になって倒すのに時間が掛かる。

 何とかして早く倒せるようにならないと、先へは進めないなと感じていた頃、ダンジョンから獣が溢れ出すという事態に発展した。

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