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世界破滅アプリ〜おっさんが現代にできたダンジョンに挑む  作者: 結城明日嘩


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22/27

2度目の溢れ(16日目)

 ダンジョンから獣が溢れる現象が再び起こった翌日。初回とは違ってアメリカからの情報でスタンバイしていたマスコミは撮影準備が万端だった。

 おかげで朝からのニュースでは獣の姿が克明に映し出されている。

 初回時はスマホで撮影された手ブレの酷い絵面が多かったので凶悪そうに見えた獣も、刺股で押さえられて警棒で叩かれる姿はモザイクごしでも弱く見えた。


『ダンジョンのために地下鉄が封鎖されていますが、こんな獣ならそこまで脅威ではないのでは?』

『アメリカは既に運行を再開していますし、封鎖が解かれるのも時間の問題だと思います』

『しかし、また獣が現れたのも事実。今後の獣が地下一階のモノで終わる保証もないんです。地下2階、3階の獣が出てきたら……』

『地下鉄が停まっている事での経済損失は……』


 相変わらず結論の出ない議論を続ける情報番組を消し、ネットの情報へと移る。

 ダンジョンからの溢れは1週間おきか?

 アメリカの展開に期待。

 それより中国の方がヤバいのでは?

 日本もダンジョンを解放すべき!

 などといったトピックが溢れている。日本政府が動くのはもう少し先だろうな。少なくとも1ヶ月、下手すりゃ半年は様子見しそう。それこそ選挙を挟まないと動かないまである。


「おおう、もうこんな展開も企画されているのか」


 大統領選に協力したのに追い出された資産家が、ダンジョンの権利を落札し、ダンジョンツアーを計画しているという。ダンジョンが利益を生むと判断したのか、最初だけと思ってのスタートダッシュなのか。

 宇宙旅行と同様に民間人を巻き込む計画なのだろう。


「日本だと死者どころか負傷者が出る危険だけでもリスク回避するんだろうけどな」


 やはり出回る情報や展開はアメリカが早い。訴訟大国とか言われる割には、チャレンジングスピリットも持ち合わせている。

 ただ人口の暴力で攻略を進めそうな中国やインドなんかも実際にどう動いているか不明瞭な分、早さもありそうだ。


「日本だと自衛隊や警察なんかは攻略してると思うけど、閉鎖された空間だけにマスコミにも情報は流れないんだろうな」


 ダンジョンの入口までは追跡できてもマスコミが法を犯して中まで入る事はないはず。いや、法というより獣に襲われる危険性に。

 となると突破口は動画配信者か。

 とある配信者が新たな宣言をしたようだ。先駆者としてダンジョン攻略をしていたが、警備員が立つ様になって攻略を控えていたところ、昨夜に獣が溢れてしまったと。

 ダンジョン攻略を続けていれば獣が溢れる事はなかったのだと、ダンジョン攻略を強行するとの宣言だ。

 名古屋のどこかの駅らしいが、多分地元の人間は動画を見れば分かるだろう。これに対して警戒を強めるのか、自己責任として放置するか、対応が問われるはずだ。


「個人的にはやりたいヤツには任せてもいいんじゃないかと思うけどね。法に触れない範囲なら」


 ダンジョン内は監視の目が届かないから誘拐とかに使われたら、流石にアウトだろうけど。本人が潜る分には獣が溢れなくなるというメリットはあるんだし、お目こぼしがあっても良いと思う。

 まあ、俺が勝手に入ってる事を正当化したいだけだけども。不法侵入と言われたらその通りとしか返せないしな。


「警察官や警備員がダンジョン攻略を進めると【隠密】を見破れるスキル持ちが増えるかも知れないしねぇ」


 早い所、堂々とダンジョン攻略をできる環境が整って欲しいものだ。




 テレワークで仕事を開始。イベントの告知が来週火曜日で、木曜日に開始か。1週間とは言われたが、実質は10日ほどになるか。それでもアップデートで致命的なバグが見つかって施す、修正パッチ並のペースだ。

 獣のデザインデータも上がってきており、先方からのOKも出て、実装作業中。こちらは難易度調整が落ち着けば、通常業務をこなしていく。

 主にオークションを監視してチートなどが発生していないかの確認とか、ユーザーアクセス状況の確認とかだな。


 相変わらずRMT、リアルマネートレードらしいアカウントが活発だが、それ以外の新規も増えている。昨日のダンジョン溢れで外出自粛が効いていそうだ。

 これをしっかりと固定客にできるかが大事なポイントな訳だが、ミニイベントで後追い勢の成長促進が上手くいくかにかかっている。


「ストーリー更新はペースが決まってるし、他ゲーとのコラボもしばらくなしっと……」


 ダンジョンによる外出自粛特需で少し持ち直してはいるものの、それまではアクセス数が右肩下がりで、配信元からのテコ入れ策も減ってきている。

 運営の話し合いについては下っ端の俺達に知らされる事はないが、じわじわとサービス終了の足音は聞こえてきていた。


「既存のツールによるテコ入れ案でも練ってくか」


 ハック&スラッシュは、敵を倒した時に落とす総備品などでキャラを強くしていくのがメインなゲーム。そこにキャラ自身のスキル習得などで攻撃の幅が出たり、逆に特化したりでDPS、DamagePerSecondを上げていくのが成長と言える。

 職業ごとに武器や魔法といった攻撃方法が変わるので、範囲攻撃が得意なのか、全体攻撃が得意なのか、近距離、遠距離などのレンジも合わせて最適解を見つけるのが遊びと言える。


「計測用ステージを更新していくか」


 DPSを測りやすいステージ、敵がわんさか出てきたり、HPが高くて倒しづらい敵が出てくる様なステージは、キャラの強さを把握するのに向いている。

 新装備をゲットして、どれだけ強くなったかを確認できる場所というのは、キャラの成長度合いによっても適正レベルが変わってくるので、前回のアップデートで追加された装備のランダムアビリティで最適解を見つけたプレイヤーに合わせた高難易度ステージを用意する必要はあるだろう。


「ネトゲの醍醐味は他者との比較……と思ってる層を満足させられるかが大事だよな」


 ガチャ課金ではなく、プレイの快適性を上げるための月極課金要素をメイン収益にしている今のタイトルは、継続プレイヤーをどれだけ繋ぎ止められるかが大事だ。

 そこには定期的な更新、やりごたえのある要素、他者との繋がりなんかが鍵となる。


「既存キャラのサイズ違いでレイドボス追加……とか」


 とは言え開発に使えるリソースというのは限られている。特に新規敵のデザインなんかはコストが高い。

 今回のミニイベントの様に既存キャラの表面テクスチャを貼り替えただけの変更でも、それなりのコストは必要だ。

 敵追加の最安はサイズ違いの敵、これならプランナー側でリサイズするだけでもそれっぽくなる。テクスチャが伸びすぎて粗が見えると、デザイナーの手入れが必要になりコストが発生するが。


 プランナーと言いつつ、本当に企画と呼べる作業はあまり多くない。既存のパーツを組み合わせて幅を作る作業が大半を占めるのだ。

 それでプレイヤーを引き止める。地道な努力が報われるといいが、その辺も時の運。こっちが大型アップデートをしようとしたタイミングで、大作がリリースされたりしてな……。


 なので細かな部分でかゆい所に手が届くという脚光は浴びないけど、「遊びやすい」所を伸ばしていくのが長く続くコンテンツというものだ。

 ついでにオークションのマネーロンダリングを対策できたりするといいんだが、使いやすい=悪用もしやすいが成立するから難しい。

 どこから手をつけるのが良いのやら……。

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