ダンジョンの管理
ダンジョンから不浄の獣が出現すると言う事で出入口に警備が付くことになった。最初は完全に塞ぐように壁を置いたのだが、気づくとダンジョン出入口の正面は開けた状態になっていた。
腰の高さのバリケードが精々で、それ以上の板など人の出入りを制限する高さになるとダンジョンの入口に入る人の様に消えてしまうのだ。
人が入ることも、獣が出てくることも防げない。
それがダンジョンの出入口という事だった。
結果として、股下くらいにロープを張るか、工事現場などに置くバリケードが設置され、その手前に警備員が立つ事となる。
日本政府は民間の警備会社や駐車禁止を取り締まる監視員などを動員し、全ての出入口を管理する体制を整えた。
そうして迎えた金曜日の夜。
人間の準備を嘲笑うようにダンジョンから獣が出てくる事はなかった。
「まあ、ラノベのスタンピード何かも一定周期で起こるからなぁ」
毎日がスタンピードだったら、そこに人は住めないとなるだろう。ダンジョンが人類の破滅を望んでいるならそうなってもおかしくはないのか。
ダンジョンを生んだ悪魔ってのもよく分からないからな。破滅アプリとその制作者もだが。
「アプリなんだから解析はやってるんだろうけど」
表の数字類をどうやって導き出しているのか、使用者の情報をどうやって得ているのか。謎技術は多い。それを利用すればいちいち顧客情報を入力させる手間が省ける……まあ、個人情報の保護の観点からしたら実際にやったら法に触れるんだろうが。
アプリが通信を行っているのも確実で、どこかのサーバーに接続されているはずだが、IPアドレスなどからそれを辿るのは難しいだろう。
ダンジョン内でもマッピング機能が使えたり、カメラで撮影する事で簡易鑑定ができるので、WifiかBlueToothなどの通信を行って独自のネットに接続している可能性がある。
それらを分析して制作者を探したり、制作の意図を聞き出したりできれば、ダンジョンの攻略も進むのではないかと普通なら考えるだろう。
まだ明確にダンジョンによる利益が出せていないが、先行投資が盛んなアメリカなどはスキルなどの解析に力を注いでいたとしてもおかしくない。
俺が持ってる【空間把握】や【隠密】なんかは、諜報活動する様な人々には垂涎の能力だしな。逆に対抗するスキルも探されているか、見つかっている可能性はある。
それらスキルの取得条件とか、どんなスキルが存在するかといった情報は、各国政府が血眼になって探そうとするだろう。そこで先行できれば世界の覇権を取れるかもしれないからな。
人体実験まがいの事をやってても不思議はない……とか考えると、初動が遅そうな日本でよかったか?
そう考えるとあの動画は怖いな。どこの映像かはすぐに分かるだろうし、そこで戦っていたのが誰かが分かる可能性もある。
あの場で身元が分かる情報を出さなかったのは僥倖だったかもしれない。元動画で顔が判明するかとか危惧はあるが、どうしようもない。
「対処できない問題で不安になっても仕方ない」
どっちかというと、今日どうするかだな。
ダンジョンを監視する警備員が配置されているとダンジョンに入る事自体が難しくなる。警備員には【隠密】が効くかもしれないが、監視カメラを誤魔化せないだろう。
「誤魔化せないかな……?」
破滅アプリを見ても現代技術を上回る何かが組み込まれている。ダンジョンで取得できるスキルが電子機器を上回る可能性はあるか。
身近でテストしてみる事にした。
スマホのカメラで録画を行い、その前を【隠密】を使いながら通ってみる。その後、録画された映像を確認。
「映ってるな」
電子機器は誤魔化せないか……いや、人間でも認識が作用していた。録画しようとした俺が俺を認識しているからスキルが発動しないのかもしれない。
俺を認識してないカメラに映さないと判断できないな。かといって監視カメラに映ってるか確認してくれとか不審者だな。
何か方法はないものか。
近くのコンビニに来てみた。
【隠密】を使った状態で自動ドアを目指す。まずはセンサーを誤魔化せるかの確認だ。
最近の防犯カメラはまず動体センサーとかで物体を捉えたら実際の撮影を開始する物が多いからな。動画の容量削減の為に。
センサーに引っかからなかったら、カメラも誤魔化せるのではないかという検証。結果は自動ドアは開かない。
ドア上部にあるセンサーに対して手を振ったりしてみても反応はなかった。自動ドアに無視されやすい人もいるらしいがこんな感じだろうか。
ふと思い出して家電量販店へと行ってみた。
よくカメラの展示で映像をテレビに映しているのがあったなと思い出したからだ。
カメラの前を通るとやはり映ってはいた。しかし、人の認識を示す四角い枠が表示されない。表情を判断してシャッターを切る機能とかも反応しなかった。
「映るけど認識されない……?」
これまた判断に迷う結果だ。
映像として残るなら解析されるとバレるとか、【隠密】に対抗できる察知系スキルを持ってる人には分かるとかだろうか。
ダンジョンの今後がどうなっていくか次第だが、攻略が民間に解放されるにはもう少し時間がかかるだろう。
それまでもバレないなら探索を進めたい。閉鎖された敷地に入るのは法に触れそうだよな。バレなければいいとか考えてる時点で駄目なんだろうが……先日の戦闘で思った以上に戦えた。その感触を鈍らせたくない。
「俺にバトルジャンキーの素質があったのか?」
ダンジョンに入る方法を探ってる時点で、止める理由を求めてはいない。入れそうなら入る。そう決意していた。
家電量販店の防犯グッズ売り場で警棒を買ってみた。こんなのも普通に売ってるんだな。3段界に伸びて50cmほどになる。折りたたみ傘よりはちゃんと武器だ。
180cmの鉄パイプに比べたら心許ないが、折りたたみ傘でもやれた事を考えたら、地下一階くらいはこれでいけそうだ。
そろそろ部屋を探索してみたいし、部屋の中を考えると長柄の武器よりこのサイズの方が取り回ししやすいだろう。
【棒術】スキルが対応するかは不明だが、素振りした感触は悪くない。
帰り道で地元のダンジョンの様子を伺ってみる。地下鉄の入口には工事現場の様な仕切りの壁が立てられ、出入口が2mの幅に狭められていた。
ダンジョンから出てきた獣の進路を限るための措置だろうか。確かにこうしておけば一匹ずつ相手にできそうだ。
これ以上狭めると封鎖と見做されて壁が消えるのだろう。
今は午後3時だが警備員の姿はなかった。獣が出るのは日没後と見ているのか、センサーに反応があれば出てくるつもりなのか。何にせよ入りやすい状況なのは良かった。
日没までの3時間ほど中に入ってみよう。
【隠密】スキルを使いながら壁の隙間へと入り込む。本当の入口までは3mほどで、そのまますんなりと入れた。
約1週間ぶりのダンジョンだが、変化はなさそうだ。外に溢れるほど中が獣で埋まっているといった事もない。
ひとまず【隠密】を取得する際に使用した獣のスポーンポイントへと移動。定期巡回している獣を見つけた。
「そういえば鑑定してなかったな」
俺はスマホを取り出して破滅アプリのカメラ機能を起動する。見つからないように後ろから撮影してみた。
ダーティドッグ:最弱の獣
ドロップ:不明
UBC:100
といった情報が表示された。ドロップもあるかもなのか。これは俺が見つけないと分からないパターンかな。
UBCは暗号資産だな。100ってのがどれくらいなのか分からないが、倒すと貰えるのだろう。
「じゃあ、さっさと倒してみますか」
名前:鈴木蒼太
筋力:11
敏捷:15
器用:16
知力:13
生命:10
精神:11
スキル:【空間把握】【隠密】【棒術】




