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第15話 お背中を……流しにきました……!



「マジで本当に、すみませんでしたッ!」


 あれから、俺は部屋の中でクロエに土下座していた。


「い、いえ……勝手に膝の上に寝かせてしまった私が悪かったんですよ……本当に、気にしてませんから!」


 クロエは頬を赤らめたまま、必死に首を横に振る。


 うぅ……本当に申し訳ない。


 俺が飛び起きた時に、クロエが俺の顔を覗くために前屈みになっており……俺は、彼女の胸に顔をうずめてしまったのだ。

 現代日本であれば、普通にセクハラ案件である。


「それよりも、ヴェインさんが無事で良かったです……本当に」


 クロエは安堵したように、微笑む。


「クロエがサポートしてくれたお陰だよ……あの聖剣召喚がなかったら、確実に負けてたな」


 聖剣召喚……あれは、物語終盤でフェルトがピンチの時にクロエが覚醒して身につける魔法である。


 もしかして、大切な人がピンチに陥った時と習得できる、という条件だったのだろうか。


 すると、クロエが複雑な表情をしていることに気づいた。


「どうかしたのか……?」


「……実は、あの時に使った〈聖剣召喚〉ですが……今、なぜか使用できないんですよ」


「っ……?!」


 どういうことだ?

 使用できるタイミングにも制限があるのか……?!


 むぅ……今まで使っていた剣が壊れたことだし、これからは聖剣を愛剣にして行こうと思っていたのだが……。


「じゃあ、新しい剣を買うしかないか……」


「……! な、なら、ヴェインさん……一緒に買いに行きませんか?」


「いいのか? ……そこまで、面白いものじゃないと思うけど……」


「ヴェインさんと一緒なら、なんでも楽しいですよ……! でも、帰りに一緒にパンケーキ屋さんに寄りたいというか……」


 クロエはもじもじと体をよじらせながら言う。


「パンケーキ……! いいな、俺も甘いものは好きだし……! 是非、行こう!」


「本当ですかっ! やった……! 実は、おすすめのパンケーキ屋さんがあるんですよ!」


「へえ! そりゃあ楽しみだな……じゃあ、行くとしたら……明日とかか?」


 明日は、何かの記念日で学園が休みなのだ。


「はい! 楽しみにしてます!」


 クロエは、嬉しそうに満面の笑みを浮かべるのであった。


「……それはそうと、ヴェインさん! 昨日の約束……覚えてますよね?」


「約束……? ……ああ! 同棲って話だっけ……」


 オルニクスのことで頭がいっぱいで、忘れかけていた。


 そういえば、今日からクロエと俺は同棲するんだっけ……。

 なんだか、考えるだけで少し緊張してくるな……。


「本当なら、家事は分担……なのですが、今日は戦いで疲れていると思うので、全部私に任せてくださいっ!」


「へ? ……そ、それは悪いよ。流石に疲れているからといっても、家事くらいやれるって」


「さっきまで、意識を失っていた人が言っても説得力ないですよ?」


「うぐっ……」


「とにかく! 今日はご飯から食器洗い、お風呂まで全部私に任せてくださいっ!」


「わかったよ……」


 ……あれ?

 しれっと言われたから気づかなかったけど、お風呂って何?

 ……お風呂掃除のことだよな? 

 きっと……そうだよな?!


「ささ、ヴェインさんはベッドに横になっていてください!」


「お、おう……」


 結局、俺はクロエによって寝室に押し込められたのだった。



 ――――――――――――――



「……ヴェインさん! ご飯の用意ができましたよ!」


「本当か?! ありがとう!」


 それから1時間弱が経過した時、俺はクロエに呼ばれた。


 あれ……? クロエはどうして、俺がお風呂よりも先に飯を食べる派だって事を、知っているのだろうか。


 ……まあいいや。偶然だろう。


 俺はリビングに足を運ぶと――


「おおっ……これは凄いな」


 俺は並べられた数々のお皿を見ながら、呟く。


 まず、目に入ったのは大きな羊肉のステーキだ。とても美味しそうに焼けており、見ているだけで涎が出てきそうだ。

 その隣にはロールキャベツやスープ、冬野菜のテリーヌなどが並んでいる。


 凄いな……。まるで、貴族だった頃の晩御飯。

 いや……それよりも凄いかもしれない。


「これ、全部クロエが1人で?」


「はい! 初日なので、ちょっと張り切っちゃいました!」


 クロエは気恥ずかしそうに、そう言うと「さっ、冷めないうちに早く食べましょう?」と、俺を席に促してきた。


「じゃあ、まずはロールキャベツからいただこうかな」


 俺は、ナイフとフォークで切り分けると、口に運んだ。


 すると、キャベツに染み込んだソースや肉汁が溢れ出してくる。


「美味いッ……!!!」


 意図せず、俺の口からその言葉が飛び出る。


 なんだこれ……! めちゃくちゃ美味しい……!


「お口に合ったのなら、良かったです!」


 俺は次にハンバーグも食べていくが……これもとても美味だった。


 凄いな……正直、貴族だった頃に食べた食事よりも美味しいぞ?


 すると、クロエが俺の食べているところをじっと見つめていることに気づいた。


「どうしたんだ……? クロエは食べないのか?」


「……へ? そ、そうですね! すみません……ヴェインさんが、作った料理をあまりにも美味しそうに食べてくれるものですから」


「まあ、実際にめちゃくちゃ美味しいからなぁ」


 結局、俺はクロエが用意してくれた料理を全て平らげた。


 マジで美味でした……。


「……ふぅ、腹一杯食ったな……」


 俺はお腹をさすりながら、そう呟く。


「お気に召してもらえたようで良かったです!」


「……よし、じゃあ食器洗いは俺がしようかな」


 俺は、食器をシンクに運ぼうとするが――


「ヴェインさんは休んでてください!」


 クロエに止められた。


「そうは言われても……このまま、何もかもしてもらうのは流石に申し訳ないよ」


「むぅ……そうですか……なら、私はその間にお風呂の準備をしておきますね!」


 クロエは何か、思いついたような表情をすると、お風呂場へ向かった。


 代わりにお風呂の準備もしてくれるなんて……クロエは本当に、優しいなぁ……。





「――お風呂の準備ができたので、ヴェインさん、お先にどうぞ! ……私は準備がありますので!」


 俺が、食器を洗い終えた時……クロエがそう言ってきた。


「いいのか? ……なら、お言葉に甘えて、先に入らせてもらおうかな」


 正直、オルニクスとの戦いでかなり汗をかいたからなぁ……。


 俺は服を脱ぎ、近くに畳んで置いておくと、シャワーを浴びていく。


 ちなみに、この部屋にはお風呂も付いている。

 元々、俺は貴族であったため、その時の名残で部屋がかなり豪華に作られているのだ。


 よし、じゃあ、次は体を洗おうかな――


 ――ガララ


 その時、扉が開くような音がした。


 振り返ると、そこには――


「お背中を……流しにきました……!」


 一糸纏わぬ姿のクロエがいた。


 ……へ?


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