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最強の悪役貴族ですが、破滅エンドの回避には失敗しました  作者: わいん。


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第13話 VS歴史上最強の人物

 

「〈聖英障壁セイント・プロテクション〉ッ!」


 俺が目を開けると、俺を覆うように現れた半透明のバリアによって青白い光線は阻まれていた。


「ヴェインさん……! 大丈夫ですか……?」


 すると、そんな可憐な声と共に、駆け寄ってくる少女。

 ――クロエだ。


 ど、どうしてここに……?!


「く、クロエ?! 危ないから、逃げろっ!」


 俺は慌てて、クロエを止める。

 これ以上はダメだ。


「クロエ! 頼むから逃げてくれッ! こいつは化け物だッ! 俺でも守りきれない可能性だってあるんだぞ?!」


「嫌です、私は絶対に逃げません……!」


「っ……ど、どうして……!」


 俺は少し怒気がこもった声で訊くと――


「――大好きな人が死ぬかもしれないのを、黙って見過ごせるわけないじゃないですか……!」


 クロエは目を見開き、そう言い放った。


「大丈夫です、私は決してやられません……私にも手伝わせてください」


「お、おい!? クロエ?!」


 クロエは男性の竜人族(ドラゴニア)の方へ向くと、何かを詠唱し始めた。


 どうやら、本当に戦うつもりのようだ。


 サポートは嬉しいが……クロエはあくまで後衛。

 どうにかして、奴にクロエを狙われないようにしないと……!


「ほう……1人、増えたか」


 男は面白そうに呟く。


 チッ……余裕そうにしやがって……ッ!


 この際、細かいことは気にしていられないな。

 ()()を使うか……。


「支援魔法――〈極限強化(アルテマブースト)〉」


 次の瞬間、全身にさっきと段違いほどの力がみなぎってきた。


 〈極限強化(アルテマブースト)〉は超級の支援魔法。全ての能力を100%上昇させるというチート魔法だ。

 つまり、〈唯我独尊(オール・フォア・ミー)〉の効果も相まって、俺の能力は全て6倍になっていた。


 ……しかし、それには当然、デメリットもある。


 効果時間は5分しかなく、それが終わると、使用者は気絶してしまうのだ。


 だからこそ――速攻でこいつは倒すッ!


 俺はクレーターが出来るほどに地面を蹴り、一瞬で竜人族(ドラゴニア)との距離を詰める。


「とっとと……倒れろッ」


 そして、その勢いを殺さぬ間に角めがけて一閃。


「ふんっ……」


 しかし、角に触れるギリギリのところで俺の剣は受け止められた。


 まだまだァ!!!


 俺はそのまま体をグルンと回転させ……


「終わりだッ!」


 回転斬りの要領で、剣を横薙ぎに振り、竜人族(ドラゴニア)が持っている剣ごと切り裂いた。


 よし、これで俺の勝ち――


「――だから、甘いと言っているだろう?」


 竜人族(ドラゴニア)はもう片方の手で俺の剣を掴んでいた。


 は……?

 素手で、強化された俺の一撃を受け止めた……?


 そこで、俺はようやく一つの違和感に気づいた。


 こいつ……さっきと纏うオーラが全然違う……ッ!


 まるで……歴戦の戦士。

 剣聖さえも凌駕する程のオーラを感じた。


 もしかして……さっきこいつが使っていた〈解放(リリース)〉という技の効果か?!


 でも、まだだ! 〈纏風テンペスト〉による追撃がある!


 爆風が俺の剣を受け止めている竜人族(ドラゴニア)を襲う。


「……え?」


 しかし、竜人族(ドラゴニア)はびくりともせずに立っていた。


「そよ風程度でオレを吹き飛ばせるわけないだろうが」


「ッ?!」


 あれが……そよ風?


 どうなってるんだ……?

 さっきは効果があったのに……。


 これが、こいつの本気なのか……?!


「な、何者なんだよ、お前……」


 俺は一旦、彼から距離を取ると、そう訊いた。


「オレか……? ……そうだな、冥土の土産に教えてやるか」


 彼はコホンと咳払いすると――


「龍帝オルニクス……かつて、最強と謳われた竜人族(ドラゴニア)だ」


「は……?」


 龍帝オルニクス……俺はその名前を知っている。

 歴史上最強の人物、 竜人族(ドラゴニア)の王……原作では、そう説明されていたはず。


 そして、その実力は恐らく、ラスボスである邪神にも匹敵するだろう。


 でも、それよりも俺が驚いたのは――


「お前は……死んでるはずだろ……?」


 作中で、オルニクスは既に100年前に死んでいると説明されているのだ。


「ほう……それも知ってたか……そうだ、俺は100年前、死んださ」


「ッ?! ……じゃ、じゃあどうしてここに……」


「それを教える義理など、オレにはない……ッ!」


 オルニクスは、そう言い放つと、背中に背負ったもう一本の剣を取り出した。


 まさか……二剣流?!


 オルニクスは俺に驚く時間すら与えずに、一気に俺との距離を詰めてきた。

 どうやら、一瞬で決着をつけようとしているらしい。


「っ!?」


 首めがけて振り下ろされるオルニクスの剣。

 俺は、それをなんとか剣で受け止めると――


「ぐっ……」


 剣を伝って、とんでもない衝撃が腕に伝わる。

 くそっ……なんていう力だ。


 腕が少しジンジンと痛む。


 すると、左からもう一本の剣が襲いかかってきた。


「まずっ……!」


 剣が俺の肩を切り裂くギリギリのところで、俺は身をよじらせ、剣を避ける。


 〈極限強化(アルテマブースト)〉で強化してるのに、回避するのでやっとだなんて……。


「くそっ……」


 それから、俺は防戦一方だった。


 オルニクスは二つの剣を上手く操り、さらに俺に怒涛の攻撃を仕掛けてきた。

 そのため、攻撃するタイミングがなかったのだ。


 受け止めて、避けて、受け流して、避けて……

 その繰り返し。


 剣技では、技術では俺の方が圧倒的に勝っている。

 しかし……歴史上最強と謳われたオルニクスと俺では、〈極限強化(アルテマブースト)〉を使っても埋められないほどに、筋力の差があった。


「くっ……」


 もうすぐ、〈極限強化(アルテマブースト)〉を使用してから3分が経過しようとしていた。


 クソっ……そろそろ攻めなければ……!


 そう思っていたその時、パキンという情けない音が鼓膜を揺らした。


「え……?」


 音の方向に視線を移すと、そこには真ん中からポッキリと折れた俺の剣があった。


 そ、そんな……オルニクスの馬鹿力に耐えられなかったのか……?!


「勝負アリ、だな」


 すると、真上から鋭い一撃が繰り出される。


 折れた剣では、これを受け止められる気がしない。

 クソっ……ここで俺は死ぬのか……?!


「――〈雷華ライトニング・ブルーム〉ッ!!!」


 刹那、横から雷の光線がオルニクスに襲いかかった。


 まさか――!?


「ヴェイン! 助けに来たぞッ!」


 そこには、大きな杖を構えたフェルトの姿があった。


 あいつ……逃げたと思ったら、杖を取りに行っていたのか。


「ふんっ……邪魔者が増えたな」


 フェルトの攻撃が直撃したオルニクスは、一瞬だけ怯む。


 その間に、俺はオルニクスから距離を取り、辺りに剣の代わりになりそうな物がないか探すと――


「〈聖剣召喚〉ッ! ヴェインさん、これをっ!」


 クロエが長い詠唱を終えると、一本の剣を投げてきた。


「せ、聖剣召喚?!」


 俺はその魔法に聞き覚えがあった。


 だって……それって、原作の終盤でフェルトがピンチに陥った時に、クロエが習得する魔法じゃ……?


「ま、まあいいや! クロエ、助かった!」


 俺は受け取った聖剣を鞘から抜く。


 刹那、全身から、かつて無いほどの力が溢れ出してくる。


 聖剣には、所持者の全ステータスをバフするという能力がある。

 もしかして……〈唯我独尊(オール・フォア・ミー)〉によって、聖剣によるバフ量も5倍になっているのか?!


「これなら……勝てるッ!」


 俺は弾丸のような速さでオルニクスとの距離を詰める。


 そして、まずは袈裟斬りッ!


「速いッ……!?」


 オルニクスの顔が苦悶に染まる。


 そう、聖剣の効果によって、俺の攻撃速度はさっきとは比べ物にならないほどになっていた。


 今度は、オルニクスが防戦を強いられていた。


 袈裟斬り、一文字斬り、逆袈裟斬り……様々な方向からオルニクスを斬りつけていくと――


「っ……?!」


 一瞬、俺の攻撃に耐えきれず、オルニクスが体勢を崩した。


「――〈聖鎖(セイントチェーン)〉ッ!」


 その隙を狙って、地面から金色に輝く鎖が現れた。

 鎖はオルニクスの全身に巻きついていく。


 ――クロエだ。

 タイミングを見計らって、援護してくれたのだろう。


 俺は、一気に距離を詰め、〈聖鎖(セイントチェーン)〉によって動けないでいるオルニクスの首めがけて――


「俺たちの……勝ちだッ!」


 一閃。


 オルニクスは避けることもできずに首を切られ、地面に彼の頭が転がった。


「倒せた……のか?」


 あの歴史上最強と謳われたオルニクスを……邪神に匹敵する程の強さであろうオルニクスを……倒せた?


「やったな!」


 すると、杖を構えたフェルトがこちらに駆け寄ってきて、こちらに飛びついてくる。


「――やりましたね!」


「――ぐへっ」


 しかし、俺に飛びつこうとしたフェルトは空中でクロエに突き飛ばされて、遠くへ吹き飛んでいった。


 だ、大丈夫? 結構鈍い音したけど……。


 すると、クロエが駆け寄ってきて背後から俺の首に抱きついてきた。


 俺は、クロエを受け止めると抱き寄せる。


「クロエ……聖剣、本当に助かったよ……」


「いえいえ! ……昔に、〈聖剣召喚〉を習得しておいた甲斐がありました……!」


 昔に……習得?

 あ、あれぇ? このスキルってそんな簡単に習得できるようなものじゃないんだけどな……?


「――ふっはっは!!!」


 刹那、どこからか、高らかな笑い声が聞こえてきた。


 まさか――


「見事な連携ッ! 天晴れだッ! だが……これで、勝ったと思うな?」


 すると、頭だけになったオルニクスが――喋り出した。


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