9話 : 「馬鹿って言う方が馬鹿」
「"馬鹿"なんていないのよ。ものの考え方…つまり、価値観が全く違うだけ。馬鹿はいないわ」
晴れた日、本日も百合の眼鏡が太陽の光に当たり光っている。
「1+1がわからない人はどうするっ!?」
「運動させれば良いわ」
「前回のを活かすわけね」
3回生3人が仲良く今日も今日とて話をしている。
「幸せになるには、体を良い状態にしてないといけないものね。心も良い状態にしておかないと。心は厄介よねー、うっかりトラウマになるような事とか、トラウマを思い出させたりするような事言われたら最低でも2、3日ダメージ喰らうものね」
「百合は誰に馬鹿と言われた!!」
「私に馬鹿と言う奴は居ないわ。もし居たら本当に馬鹿よ」
「「さっき、馬鹿はいないって言ったじゃん」」
「『この間の講義のノート貸したお礼が"お茶"?!普通は"水"だろうが?!馬鹿なんじゃないの?!』と言う口論です。
『お茶の何処がおかしいんじゃ?!』と方言出ちゃうほど相手もびっくり」
「はぁ?」
「どっちでも良くね?」
自分の綺麗にデコレーションされたネイルを見ていた菜の花は呆れ、桃は目が点になっている。
「でしょ?」
「そもそも普通ってなんじゃーーい!!」
「つまりそれって、ただの価値観の違いなだけで、どちらも正解…って言うと聞こえが良くないわね…。どちらの意見も良いと思うし、誰が悪いわけでもないの。でも不思議なのが、自信満々に言ってる方に人は付いて行く訳。
初めてあんな気持ちが納得しない気持ち悪い場面見たわ」
「お茶美味いだろう!麦茶とルイボスティーがアタシの中のTOP OF TEA!!」
「私は紅茶よ〜ロイヤルミルクティーが1番よ」
「私も緑茶とか、麦茶は御礼として渡しても問題ないと思う。麦茶はカフェインもないからなおのこと良い。まぁ、麦アレルギーだったら申し訳ないが」
「言われた子、自分の意見を変えないでそのままでいて欲しいな?」
「本当そう。育った場所が違うだけで、国が違うくらいに、全然違う生き方してる場合だってあるわけよ。良くもまぁ頭ごなしに言ったもんよ。自分が東京育ちだから、"言葉も生活も標準"だと思い込んでる証拠よね。でも、それが当たり前だと思って生きてきてる事を、『そうじゃないよ?』って誰かが優しく言ってあげてれば、あんなことは無かったと思うけどね」
「そうよ〜思い込みは怖いのよ〜!思い込みが強いほどそれは自信になって、更にそれを引き寄せるのだから!」
「菜の花の地雷踏んだぞ」
「地雷じゃないわよ!得意分野って言って!!」
「人は、自信に満ち溢れてる人について行きたくなるのはわかるわ。でも、クッソ程どうでも良いことで、分裂する必要もない意見に、第三者共が味方につくとか気持ち悪い光景を実際に見て良い勉強になったわ」
「そう言う些細な事で、自分の事を疑い初めてか悩んじゃうキッカケに、なる事って少なくないのよねぇ〜自分のメンタルは保たないと!」
「つまり!他の人の生まれてきてからの背景を全部インプットして考慮しろとまでは言ってないけど、
"あぁ、この人はコレがお礼の品なんだな"くらいに思っておけば良いのに、それを考えないで、自分の意にそぐわないものだったからって『馬鹿じゃないの?!』って言ったわけ。早計も早計よ。逆にそうやってすぐに他人に言う方こそが…!!!ってヤツね」
「【百合、良い勉強になった!】と!」
「書くのはそれじゃないっての」