5話:立ち姿勢
「百合先輩大丈夫でしょうか?」
百合が小学生に自転車でぶつかった翌日、椿がサークル部屋で心配をしている。
「問題ない!百合はピンピンしてる!なんか、小学生の親御さんとの方が面倒みたいだぞ!」
「事故って、相手とのやり取りの方が面倒よね。多分明日には来ると思うけど。自転車にぶつかって検査してもなんともないんだもん。三日も休む必要は無いわ」
「・・・そうですね」
「椿っち!そう言う時こそ体を動かすんだ!ストレッチやヨガはいいぞ!」
今日も今日とてストレッチマットの上で桃が言う。
「そういえば、桃、最近はいいネタとかあった?」
「そうだなー!考えることはいいことだけど、考えすぎも良くないからな!あ!でも、深く考えたわけじゃ無いけど、最近思ったことならあるぞ!」
「なにー?」
「立ち方だ!!!」
「立ち方がどうかしたんですか?」
「立ち方一つとっても、非常に体やメンタルに影響するということ!」
「それもすごく気になります!!」
「さぁ、桃、お話なさい」
桃以外の二人がノートを開けてボールペンを構えた。
「菜の花は知ってるけど、椿っちは知らないだろうから、まずアタシの話しからな!アタシは、小学生の時からすっごい猫背だったわけ!でね、高校の途中までずっと体が弱くてねー、弱いって言っても、何か悪いところがあったり、造りがとかじゃなくて!何かあるとすぐに体調が悪くなる!胃が痛くなったり、憂鬱になったり!イライラしたり!」
「え?!今の桃先輩から想像できません!」
「あれよね、更年期障害みたいな」
「そう!!まさにそれ!!!!!若年生更年期障害だ!!」
桃が自分の事を自分で分析した結果を報告した。
「えええ!!病院で言われたんですか?!」
「言われてない!そう言う人いますよ?結構います。って一蹴された!腹立ったから自分でたくさん調べた!」
「で?立ち方とはどのような関係が?」
「そう!まず、アタシが自分の症状を調べたら!なんと若年性更年期障害とほとんど一致!でもさ!まだ10代だったわけ〜。流石にって思ってね。言われたのは、「自律神経失調症」気味かもねーって流された!
でも、自律神経失調症と、若年性更年期障害ってほぼイコールだと思った!だって、若年性更年期障害って若いのに更年期と同じ症状でしょ?!なんでそんなのが出るの?って考えたらやっぱり自律神経の問題だわさ!って思ったの!全部じゃ無いにしても、すごく近い!ニアイコールだ!!」
「で、立ち方は?」
「あんね、アタシも猫背ゆえにひどく立ち姿勢が悪かったのさ。お腹は丸まり、でも、お腹の丸まりを隠すために胸は張る、でも、肩は内巻きで猫背・・・そう、どこかの筋肉のバランスが悪いことを隠そうとして、他の筋肉を必要以上に使って真っ直ぐに姿勢を正そうとしていた。そうやって、どんどん、真っ直ぐに見せようと頑張ったのに結果すごく歪になってたんだ!嘘の上塗りのように!!」
「ふむふむ!!なるほど!それで続きは・・・!」
「あんな・・・このご時世。なんともすごいことに、アプリで『お友達かも?』って出てくることないか?」
「え?あ、はい。ありますけど」
「そこにな、成績優秀で運動部だった、小中学校の同級生がいたんだ。そして、そこからプロフィールを見たんだ。そしたら、彼女、進学して会わなくなってから、なんか数年置きに体調が悪くなるらしいんだ・・・」
「それって彼女も若年性ってこと?」
「結論を先に行ってしまうとな・・・・そして!そして!そんな成績優秀で運動部だった彼女!!全てがパーフェクトに思えたがしかし!!」
「立ち方が悪かったんですね!!」
「オチを言うんじゃない!でもそうだ!しかも!今になって思えばだが!猫背じゃないんだ!猫背じゃなくて!もう『腰が反れてひん曲がった立ち方』をしていたのだよ!特徴的な立ち方で!顔が見えなくても誰かわかるくらいの立ち方!でも!それが!体調不良の原因の一つだったんだって!アタシは気付いてしまったぁぁああ!!」
「教えてあげればいいじゃない」
「他にも独特すぎる癖があったらそれもだけど、そんなこと言えない」
「あれですね!決して本人には言えませんが、『人の振り見て我が振り直す』ですよね!」
「椿っち!ザッツラーーーい!その通りだよ!あとな!それ!昔からの言葉ってめちゃくちゃ大事なんだ!特に!体の名前が入った熟語?慣用句?よくわかんないけど!それめっちゃ大事だから!」
「例えばなんですか?!」
もう椿が興奮して桃の話に食いつく。
「”頭が硬い”とか!”物腰が柔らかい!”とか!」
「頑固な人の事を頭が硬いっていうアレですよね?!」
「そうなんだけど!あれは本当に頭の筋肉が硬いんだって!筋肉の柔軟性は、思考や態度の柔軟性に直結してるから!ほら!筋肉痛とかの時ってめっちゃイライラしたりするって話したろ?!」
「待って待って、まずは【”立ち姿勢”の重要さ】ね。ちょっとあんた達話の移り変わりが早いのよ」