18話 : 顎の使い方
「かった?!堅い?!歯折れちゃうわ!」
「おう?!この煎餅、流石のアタシでもちょい厳しい!!」
サークルの部屋で女子学生四名がお菓子を食べながら本日も談義である。
「でも、この硬さも昔は一般的だったんでしょう?」
「コレが我ら現代人の顎の弱さよ…」
「…そんなに何か問題とか影響あります?」
自身も苦戦しながら、一回生の椿が素直に疑問を述べた。
「あるわ」
「あるわね」
「あるにきまっとりゃー!だからこうして顎の鍛錬としてたまにこのアホみたいに硬いお菓子ばりばり食ってんのさ!」
「最近はなんでもかんでも柔らかい方が良いとされてるからねー」
訓練とは知らずに、ただただ美味しく頂いていた椿は驚いた。
「これ!顎の訓練だったんですか?!でも、硬いのずっと食べてたら顎発達してなんか可愛くない輪郭になっちゃったら・・・」
「チッチッチ・・・椿っち・・・それは、顎は顎でも顎の同じ筋肉ばかり使っているからなのさ!」
「???」
「桃は、輪郭が変わるほど、エラ近くの筋肉ばかり使わないで、前歯側の顎を使ったり、頭全体の筋肉を使って噛めばいいって言ってるのよ。でも気をつけないと力み過ぎて歯が欠けるかも知れないから要注意ね!」
菜の花も顎の訓練として、言いながらまず自身がやってみせた。
「ちゃんと顎はただただ食べ物を食べるためにむやみやたらに動かすんじゃなくて!ちゃんとどういう風に顎が動いているか!たまにでいいから自分で気にすることが大事だ!!」
「食べ物が食べられればいいと思いますけど・・・」
一般的には椿の意見が多いだろう。しかし、このサークルの人たちはそれでは終わらない。
「あまーーーーーーいっ!!!!!」
「百合先輩?!?!」
桃かと思うテンションで異議を唱えたのはなんと百合だった。
「あ。スイッチ入ったわね。長いわよ」
「椿っちスイッチ押しちった。こりゃ長い」
「え・・・」
「あのね、顎って大事なの!顎の骨自体がしゃくれるようになってたんだったら仕方ないけど、そうではなくて『あれ?私なんかちょっと顎がしゃくれてる?!』って思ったらまず顎の使い方を見直すべきなの!!顎の使い方!まぁ細かい事いうと、猫背とか姿勢も関係してくるけど、顎の使い方でしゃくれが改善する事だってあるわけ!しかもなんなら、顎のズレからくる体の不調だってあるんだから、体調不良だって改善する可能性があるんだ!!
なんならしゃくれてる顎だけじゃない・・・、顎と繋がってる筋肉にも影響する訳だから、顔全体にもかなり影響するわけ!『年をとって頬骨が出てきちゃった・・・』『シミが増えてきた・・・』だって、顎の筋肉の老化やズレが原因で引き起こされている可能性だってあるわけ!!
特に顎は首と距離が近いんだから首にもかなり影響がある!!首なんて言ったら、頭からの神経とか全部そこを通ってるんだから大事以外の何者でもない!!
エラだけ動かすのも足りない!!逆に前歯側だけ軽くカチカチ動かして小動物のように食べるのだって足りない!!大きく柔軟に動く、前歯も奥歯も満遍なく使うことが出来る顎が健康な証拠!!最近は”柔らかいもの”が良いみたいな風潮で硬いものは”悪、昔くさい”みたいな感じに思ってる人が多い!!でも違う!!
柔らかいものは水分量が多いものが多数、昔の保存技術からしても、水分量が多いものはすぐに腐るわけ!水分量が少ない硬いものは保存が効くでしょ?!干物とか!たくあんとか良い例!保存に適したのが水分が抜けた硬いものでそれをずっと食べてきたから、最近の柔らかいものは確かに目を引くし確かに美味しい・・!!でもね!!そういうのばっかり食べててちゃんと顎をつかえてないからこそ!!顎からくる全身の筋肉の」
「醤油煎餅うめー」
「あ、こっちの海苔しお極堅煎餅も美味しいわよ」
「聞かなくて良いんですか・・・?」
「「私達、(アタシら)一年の時から聞いてるからもう覚えた」」