17話 : 顔より中身
「この言葉、納得いかない」
「どした?!」
「そうですか?私は納得しますが・・・」
「何故?顔より中身が良ければ良いじゃないってこと?違うわ、あぁ違う!!」
「百合は顔より中身が大事だって言いそうなタイプに見えるけどな。ま、話を聞いてやろうじゃないか!」
「あのね、いくら中身が素晴らしくても、『好みの顔』じゃないと無理なのよ!!」
「好みの『顔』ですか?」
「椿さんの好みの顔は」
百合に突然聞かれて、椿は焦った。
「えっと・・うーん・・・。あっ!キリッとした怖い顔より、垂れ目とかで優しい顔つきがいいです!」
「一見イカツイ風に見えるけど、つぶらな瞳で熊さんみたいな男性は?」
「あぁ、私そういう人すごくダメです」
「でしょ?!だからダメなんでしょ?!どれっっっだけ!!性格良くて、油田も持ってても、ダメなものはダメなのよ!!ちなみに私は筋肉量が多くて色黒で毛深い、いかにも『漢』って人が好き」
「あぁ!なるほどね!顔より中身を重視しなさいっていうのは、好みの顔の系統なら、自分の望む理想から少し離れてても中身を優先した方が良いってこと?」
「まぁ、そういう事ね。だって、好みも年齢と共に変わってくるだろうけど、絶対に受け付けない見た目ってそれぞれあるじゃない?良いのよ!それはそれで!それを本人に直接包み隠さずに言うとか失礼な事さえしなければ!
なのに、『大事にしてくれるから・・・良いかも』って!!そこに!!まるで好みと正反対の外見なのに中身が良いってみんなが言うからっていう他人の意見を混ぜこぜにして考えちゃうからいけないのよ!!」
「つまり!アイドル系の見た目が好きなら、その系統からは流石に大きく外れない方がいいってことですか?!」
「そうね!あとは直感ね!外見が好みの系統から外れていても、別にどころか全然気にならないなら良いと思う!けど、やっぱりちょっと見た目が・・・って思うなら!!どれだけ中身が良くても無理なの!!無理だったの!!!」
「あ、こりゃ人から後押しされて付き合ったけど結局受け入れられなかった自分の体験談だわ」
「もちろん、好みと正反対でも、『気にならない』と思って付き合ってうまくいくことだってあると思うわ。父親の友人も言ってたの『奥さんは別に、世界で一番美人って訳じゃないけど、ずっと大事にし続けるから愛着が湧くんだって!愛着が湧くから可愛く、綺麗に、美人に見えるんだって!」
「それでいくと、大事にしてないと可愛くも美人にも見えなくなってしまうって事か・・?!」
「それもあるわね」
「わわわわわ!話題が大人過ぎてついていけないです・・・!」
「でもっ!!」
バンッーーー!!
百合が両手で机を叩いた。ヒートアップしている。
「おい、あれ絶対後で手痛い事に疑問を持つタイプだぞ」
「桃先輩!まず聞きましょうっ!」
「その『大事にしているからこそ』論だって!本当に”好みの顔の系統”でないと受け入れられないと思うの!可能性がない訳じゃないけど多分低くなるわ!
あのね!みんな勘違いしてるけど、【一、個人の好みじゃない=世の中のみんながブサイクだと思ってる】じゃないのよ!確かに!確かに!身だしなみに気を使わな過ぎ、自分に無頓着で、大勢が近寄り難いと思う見た目の方だっているわ?!それは別よ!それは顔の話じゃなくて衛生的か不衛生かの話!!
顔は、イケメンとかブサイクっていうのは、【私が感じた、私の中の基準】な訳よ!!」
「まぁ、そうじゃないと、いろんな顔の系統のアイドルグループ成り立たないよな」
「桃の思う超絶イケメンが、私にとっての最悪のブサイクかもしれない!」
「そんなことが・・・!?」
椿がショックを受ける。
「椿さん、例えばの話しよ。でも、さっきの話しでそうじゃない?貴方の好みじゃない顔や見た目、私は結構好きなのよ」
「・・・いかつめつぶらな瞳系?!」
「そう。でも、それで世の中がうまくバランス取れて成り立ってると思わない?テレビのトップアイドルだけがモテる世の中ならもう絶滅してるのよ!でも、実際そうじゃない訳!
そもそもね、イケメンという概念が存在するためには、ブサイクという概念も必要なの!みんなイケメンならイケメンという概念が生まれないわけ!そして、どの顔をイケメンと思うか?!どの顔をブサイクと思うか?!それは人それぞれなのよ!それでいいの!だから、自分が毛ほども受け付けない顔を友達が『超格好良い!』って言っても全然その子はおかしくないわけ。むしろ世界の均衡を保つ重要な人、つまり世界のキーマンだわ!」
「おおおおお!!そういうことなのですね!」
「で?最初に話しを戻すと、顔と中身の関係は?」
「”好み”の系統じゃない顔の人とは付き合わない方が良い。『顔より中身』の受け取り方をもっとちゃんと考えたほうが良いって事」
「【顔より中身】は、中身だけで判断するべきでは無い・・・全く好みの顔は選ばなくても良い。っと」