14話 : 個人差
とても気持ちのよい日差しが降り注ぐ今日。
葉の花は大学まで日傘を差してやってきた。講義も終わり、サークルの部屋へと向かう。日焼け止めを塗ってると言っても、傘を差しても日差しが気になるものらしい。なるべく日光に当たらないルートを研究して、その道を小走りで向かう。
「あーん!もう暑いし日差しが強くてお肌が心配ー」
「毎日あんなにケアしててか?」
「菜の花先輩、こんにちは!」
部屋にたどり着くなり菜の花は愚痴を零した。すでにヨガを始めていた桃は優しく、愚痴を拾ってやる。
「一応、日焼け止めに日傘、生の果物も食べてビタミン摂ってるわ。でも、それでも心配だから、高級美容液買ったのよ!!見てこれ!!お肌のトーンアップに最適!・・・但し、個人差があります」
「でましたね!『個人差!』」
「まぁ、仕方ないわよね。こればっかりは」
「でも、ある一定以上は効果が出てほしいですよね?!」
菜の花と桃は二人して椿を見た。
「あれ・・・?私、変なこと言っちゃいました・・・?」
「そんなことないわ。そうやって、みんなにある程度効くものがあればそれはそれでいいわよね」
「んだ、んだ、そだ、そだ、そうなればいいよな。夢はでっかく、希望は捨てずにだ!」
「「ただねー」」
やっぱり何か自分は思い込みで言ってしまったのかと椿は焦った。
「こればっかりは仕方ないのよ。さっきも言ったけど、個人差って、企業側からしたら『万が一商品の効果が出なかった時の逃げ道』みたいに考えてる!って思いがちだけど」
(まさに私が今思ってた事・・・!)
椿はドキっ!とした。
「な。その成分が効くかどうかは、自分の内臓とか筋肉とかの"状態次第"ってところがあるからな!そして、その"次第"っていうのが!日頃、自分にどれだけ意識を向けられているかって事なのさ!!」
「えぇー!どういうことですか?!」
「ま、アタシの意見だけどね。例えば、お顔の肌の色が青白い不健康そうに見える人がいました!
ソバカスも凄くあります!目の下のクマも凄いベアー!
その人にビタミンたっぷりの高級化粧水をあげました!毎日使ってます!全然変化ありませーん!!ってなったら?」
「嘘じゃないかって、思っちゃいます…」
「商品が悪かったって思いたいわよねー。これ、食べ物で例えるとわかりやすいかもしれないんだけど、
便秘にゴボウが効く!って言われるじゃない?」
「はい!」
「本当にすぐに効果がある人もいれば、全然効果ない人もいるのよ。それって、体の構造的にはみんなほぼ同じでしょ?胃は一つだし、胃から腸に繋がってるのも一緒。じゃあ違うものってなに?」
「…!"状態"?ですか?」
「そうダヨ!ゴボウを食べると便秘解消すると言われている、その陰の役者である、『食物繊維くん』の働きによるもの!その働きが、効く"状態"、効かない"状態"。そう!状態なのである!」
「臓器の働きがイマイチで、数値に現れるとよく言われる『運動してください、歩いてください』。つまり?」
「…筋肉?!?!」
「「で、ある可能性が"高い"」」
「結局筋肉!!」
「つまり、体つきなんて同じに見えてみんな違うの。個人差、個体差なのよ。お腹出てる人の原因だって、ただの食べ過ぎだったり、お腹の筋肉が硬くて脂肪燃焼出来ないとかね」
「では、効く、効かないは製品の問題ではなく…」
「もちろん製品の効き目自体が薄い場合もあると思うわ!だって、そう言うのって1番効き目が強く現れる人に合わせると思わない?影響が強く出過ぎてしまう人が大丈夫なように調節したら、全然効かない人も出てくるでしょう?効き目の強さより、安全性を取るわよね」
「そう言う事ですか!!」
「筋肉硬いとさ、血行不良起こしたりすると、大事な栄養素がそこまで運ばれないじゃん?どんだけ良いもん食べたって、塗ったって、通行止めになってりゃその後も変わらんよ」
「目から鱗です!確かに!言われてみればそうですね?!」
「「こじつけだけど」」