12話 : 癖
久々の曇りの日である。あまりメガネが光らない百合が言った。
「癖の話しをしようじゃないか」
「あ!昨日の話しの続きですか!」
「癖は、病だれ・・・ふふふふふ」
「昨日は”癖”の話しだったの?」
「一部だけね」
本日は3回生の3人と一回生の椿の四人が揃っている。
今更だが、4回生の眉目秀麗の先輩・・・【水無月 葵】は就活中でなかなかサークルに顔を出さない。他の4回生も同様だ。
「変な『癖』は、体の不調を招く!!」
「でも、足組む癖が良くないとか言われるけど、足組めないのも問題よね?」
「そう!!だから!!”変な”!!癖がいけない!!」
「癖って大体が無意識だからね。意識して、ちょっと足を組む体制を取る。とはまた違うってことじゃない?」
「百合ナイス意見〜!」
3回生達が話している横で、椿がノートを取り出して、黙々と書き始めた。
「『長時間』、『無意識』に、がポイントかなー。だから、家に椅子がない部屋でずっとあぐらで座ってる。他には、お姉さん座りと言われる、横座り!長時間はよくないわけだ!」
「特に、片側に寄せて座る横座りは、捻れる原因となるって言われるわよねぇ。でも、正座も大変だもの」
「正座!正座は正座でずっとあの姿勢は危険だと思うぞ!あれで平気で座れる人は、体重をかけてる場所がなんか違うとかなんとか昔にテレビで説明してたなぁ!」
結果論だけでなくて、(今日はそれまでの話し合いの議事録も書こう!)と考えた椿は、ひたすらにペンを走らせた。ボールペンの上についているキャラクターのチャームが本体に何度もぶつかる音がする。
「椿ぴょん、凄い書いてるわね・・・」
「はい!この間、自分の記録を読み返したら、結論だけで『なんでそう思ったのか』がないので、かなり困ったんです!」
「確かに結論だけ書かれてもな」
「経緯とか書かれてたらわかるけど、例えば、”目玉焼きに醤油は掛けちゃいけない!”だけ書かれてたら、忘れて読み返した時に『なんで?!?!』って思うわな!!うんうん!大事!大事!」
「そんな感じです!!」
「まず、”癖”って言うのは、『無意識』がポイントだとして話しを進めよう」
「無意識に、取ってしまう姿勢や体の動きって事ね!」
「不調につながる癖を考えて、それを取らない、または活用するようにする!」
「女性は、内股気味だから、ヨガで『ガニ股、あぐらの型で座って、股関節を動かして可動域を広げましょうとか言うんでしょ?」
「そう!そう!よくあるやつね!!」
「でも、それは、普段から足を組んでいたり、開かない姿勢を取っている女性に有効ってことよね?」
「そうなんだよー!だから男の人で椅子で足広げてたり、あぐらで何時間も座ってると、”その角度”で癖がつくんだ!だから開くストレッチをしても効果ないんだよ!」
「その場合は、逆に内股側への運動の方が良い訳ね」
桃が、わかりやすい様にヨガマットの上でガニ股になり、そのままの足の形で立ち上がる。
カキカキカキ・・・
「ほら!あぐらとかガニ股で癖が着くとこうだ!歩き方までガニ股のおじさんいるでしょ?!」
「確かにー!いるいるー!その歩き方の人見るわ!」
「毎日の積み重ねで、筋肉が形状記憶をするのね。それが”癖”の影響だわ」
「こんなガニ股歩きが標準になってるのって、バランス悪いと思わんか?!なっ?!椿っち?!」
「へっ?!あ、はい!確かに、バランス悪くて非常に偏りが出そうですね!なんか、腰なんて全く動いてないですし!」
ガリガリガリーーー!
「座っているっていうだけで、これほどにも癖が出るから、他に、講義中のノート取る時の姿勢、体の向きとかも気をつけないとだよね」
「そうそう!特に集中してノートずっと書く時とか、綺麗に書きたい時は全身に気合い入れてるから、ちょっと傾いてる時ある!」
「ッハ!もしや!字を書くときの指の力の入れ方も影響するのではなかろうか?!」
「あぁ!もしかして文字が綺麗に書けないとかは体の癖とか指の筋肉の癖とか未発達で起こってるって事かしら?!」
「指の筋肉の癖・・・癖のある字・・・癖字って言うのがそれか?!」
「記録が追いつかない・・・!!!」