10話 : 遺伝
「本当かぁ?」
桃が疑う声を出した。
「体型、性格…遺伝すると書かれてる」
新聞の小さな欄を百合が読み上げた。
「うーん、親と友達が一緒に歩いてて、笑っちゃうほどそっくりで、"親子だー!!"って思うこともあれば、"あれ?全然似てない?!"って思うこともありますよね?!」
一回生の椿が自分の思う『遺伝』の意見を言った。
「コレの怖いとこはね、この間の菜の花じゃないけど"遺伝だから似る!同じになる!"っていう強い思い込みの方が怖いわけよ」
「思いが力になる!力がそれを引き寄せる!!なんか少年漫画のクライマックスみたいだな!」
「あと、好きな人に似るとか言うじゃない。他にも、ずっと一緒に居ると当然その人の情報量は多くなる。知らぬ間に影響されてるとかあるだろうし」
「あぁ!仲のいい友達同士の感性が似てくる事はあるよな!」
「確かに遺伝子的なもので絶対的なものもあるかもしれない。でも、”親”の遺伝子をそこまで受けるってこと少ないんじゃない?」
「うちの親戚、みんな太っちょなんですけど、ウチの兄弟だけみんな細身なんです!」
「ほら、そういうこともあるわよ」
「むしろ生活習慣の方が影響大きいと思うぞ!」
「私もそう思う」
桃の、『生活習慣の方が影響が大きい』という意見を取り入れて、椿が考えた。
「つまり、普段の先輩たちの会話の流れからして、これは遺伝子だけの問題ではなく、生活習慣、そして、”メンタル”両方が作用・・・というか、影響するって言うことでしょうか!」
「そう、わかってきたわね」
「そうだよーーん!!多分それも関わってる!」
3回生の二人が1回生の成長を感じた瞬間だった。
「親が二人とも、同じ病気に罹ったとするじゃない?そうすると、周りの人間や、兄弟、本人も含めて『両方の親が同じ病気にかかってるんだから、自分も同じ病気にかかるかもしれない!』って思っちゃうのよ。気持ちはわからなくもないけど」
「本当!周りが『親が二人ともだから将来は絶対だよ!』とか嬉しくもねぇ呪いみたいな思い込みの確定事項ぶつけてくるの本当腹立つよな!」
「本当それよ。自分の両親が同じ病気でも、祖父母の代は誰一人としてその病気に罹ってないかもしれないでしょ?そしたら、『遺伝』じゃなくて、『夫婦の生活習慣』である可能性が高いわけ。大体、人世代の間には食べるものとか世の中の状況は変わるわ。特に今みたいに油の多い食事で、日常生活の移動は車。もう年だしと言って運動習慣もなく、重いものは腰に悪いからと普段から物を持たない。配達してもらって解決。それじゃどんな病気だってかかる可能性は高くなるわ」
「そーだ!そーだー!」
「確かに・・・言われてみれば、便利で快適で過ごしやすいけど、でも、だからと言ってそれが健康に繋がるかと言ったら・・・」
「繋がるものと繋がらないものがあるわけよ」
「メンタルだけでも幸せならなんとかなるかもしれない事も、みんなSNSを自分から見て自分から気分落としに行ってるからな!そしたら、体もダメー!心もダメー!っつったら人間落ちるのは早いぞう?!」
「さらに例えで言うと、糖尿病の祖母がいました。祖母の甘い味付けの料理を親が食べてました。その味を受け継いだ親と同じ料理を食べてます。なる確率高くなるでしょ?」
「あぁぁあああ!ウチのおばあちゃんと叔母さんの味付けがすごく似てて、煮物がめちゃくちゃ甘いんですー!!」
「だから椿っちの親戚はみんな太っちょなんじゃないか?ふるさとの味っちゃ味だけど、味が濃いのに慣れて、それが”濃い”って気付けないと危ないよなー!」
「【遺伝は、絶対ではない。生活習慣や他の要因、またはメンタルも影響がある】っと、帰ったらお母さんに話してみよう・・・!!」