町の期待 町の喜び
●町の期待
我が町は、現在の日本の多くの自治体と同じように人口減少と高齢化で悩んでいる。
近くの商店街は半分以上がシャッターが下りたままだ。
そんなある日、空き地になっている場所を見つめる若い普段着姿の女性を目にした。
彼女の表情は期待に満ちあふれているといったものだった。
そこへ同じ歳くらいの男性もやってきて、二人は微笑み合った。
そうした明るい場面をこの町で見るのは珍しく、私は思わず二人に話しかけた。
「そこにあなた方の新居でもできるんですか?」
「ああ、私たちは夫婦ではなく仕事仲間で、新しくできるのは……」
「自動販売機です」
じ、自販機っすかー。
●町の喜び
我が町は——以下、同文。
近くの商店街は——以下、同文。
そんなある日、空き地になっている場所を見つめる年配の男性を目にした。
彼の表情は喜びに満ちあふれているといったものだった。
そこへ同じ歳くらいの女性もやってきて、二人はハグをした。
期待外れだった前のことがあったから迷ったが、私はやっぱり二人に話しかけた。
「何かおめでたいことでもあったんですか?」
「ああ、はい」
「手に余っていた空き家がようやく片づいたんです」
私、都会に移り住もっかなー。




